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TR-1058「ICTソリューションハンドブック」の改定(BSG専門委員会)

  TTC BSG専門委員会は、2024年12月20日に技術レポート「ICTソリューションハンドブック」第7版(TR-1058v7)を制定しました。

制定の背景

  TTCは2007年にBSG専門委員会の前身である普及推進委員会を設置し、アジア・太平洋電気通信共同体(Asia-Pacific Telecommunity(APT))の標準化活動プログラムであるアジア・太平洋電気通信標準化機関(APT Standardization Program(ASTAP))に設置された標準格差解消エキスパートグループ(EG BSG)での討議に参加するとともに、アジアのルーラルエリアにおけるICTニーズや有用性を把握するため、APTパイロットプロジェクトに参画し、4カ国(インドネシア、マレーシア、ミャンマ、フィリピン)・5分野でICTソリューション実証実験を実施してきました。

  これらの討議・ケーススタディを積み重ねていく中で、ICTソリューションをアジアのルーラルエリアに広く普及させるためには、他地域にも展開可能となるようルーラルエリア共通の要求条件や導入ガイドライン等を「ソリューション利用標準」として標準化し普及させる必要性があることを強く認識しました。本技術レポートは、これらの活動を通じて得られた知見をもとにして作成されたものです。

レポートの概要

  今回、新たなケーススタディ “Promoting Data-Driven Farming Management Practices Using Smart Data Analytics Platform For Improving Agriculture Profitability In West Java Province, Indonesia” を追加しました。

<プロジェクトの背景>

人口が多く国土が広いインドネシアは、農業部門に大きく依存しており、同部門は国内GDPに大きく貢献しています。しかし、この部門は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響や、若年層の間で農業を生業とすることへの関心が低下しているなど、多面的な課題に直面しています。

  これらの課題の中、デジタル介入と戦略的パートナーシップを通じて農業の近代化と活性化を図る取り組みが進められています。今回のプロジェクトは、農村地域のデジタル化を目指しており、技術ツールとプラットフォームで農家に力を与え、生産性と市場へのアクセスを向上させています。さらに、国際機関とのパートナーシップにより、インドネシアの農家に最先端の農業ソリューションと専門知識が提供され、農村コミュニティの向上と貧困の緩和が期待されています。

  市場の動向と適応型農業慣行の必要性に応えて、官民パートナーシップ(PPP)イニシアチブのパイロットプロジェクトでは、革新的な栽培技術を実験しています。栽培カレンダーを市場の需要に合わせて調整し、データに基づく洞察を活用することで、これらのプロジェクトは、より回復力があり、市場に対応する農業セクターを垣間見ることができます。インドネシアは、デジタルイノベーション、戦略的パートナーシップ、市場志向のアプローチを組み合わせることで、現在の課題を克服し、農業経済の可能性を最大限に引き出すことを目指しています。

<プロジェクトの目的と範囲>

  このプロジェクトは、COVID-19パンデミックによってもたらされた課題の中で、農業の回復力とイノベーションのさまざまな側面に取り組むことを目的としています。

  まず、インドネシアと日本の農業ビジネス機関がパンデミックの影響を乗り越えるために展開した戦略を精査し、適応策と先駆的なアプローチを明らかにすることを目指しています。次に、この提案では、パンデミックの中で農業活動を強化するための情報通信技術(ICT)の変革の可能性を掘り下げ、特に継続性の確保、効率性の向上、回復力の促進に重点を置いています。さらに、村営企業(BUMDes)の機能と結果的な影響に焦点を当てて調査し、農村経済発展への村営企業の多大な貢献を強調しています。最後に、このプロジェクトでは、デジタル技術の戦略的活用を通じて村の経済発展を促進することを目的とした農業デジタルエコシステムのパイロットプロジェクトの青写真を描きます。

  パイロットプロジェクトは以前のイニシアチブの継続であり、農業の発展のためのICTソリューションを試行することを目的としています。このプロジェクトは、農業の生産性を最大化するために対象を絞った栽培データを収集し、さまざまなデータソースを統合するデータ分析プラットフォームを開発することを目指しています。このプロジェクトでは、このシステムを試験的な農場に実装および統合するとともに、インドネシア通信情報省(KOMINFO)や新興企業などの関係者と協力し、ICTベースの農業の能力構築にも重点的に取り組みます。これらの取り組みを通じて、このプロジェクトは農業におけるICTの有効性を評価し、この分野の持続可能な成長と回復力を促進するためのスケーラブルなソリューションへの道を開くことを目指しています。

  なお、本レポートの内容は、2024年5月に開催されたASTAP-36で "Handbook to Introduce ICT Solutions for the Community in Rural Areas” に追加することが提案・承認され、(APT/ASTAP/REPT-13(Rev.6))として制定されました。
APTホームページより参照可能です。(https://www.apt.int/astap