TR-1089 「災害時の車両を用いた情報通信システムの要求条件」の制定 (コネクテッド・カー専門委員会)
コネクテッド・カー専門委員会は、2021年4月22日に技術レポート「災害時の車両を用いた情報通信システムの要求条件」第1版(TR-1089)を制定しました。
本技術レポートは、下記APTレポートを日本語化したものです。
“APT REPORT on REQUIREMENTS OF INFORMATION AND COMMUNICATION SYSTEM USING VEHICLE DURING DISASTER” (No. APT/ASTAP/REPT-21)
制定の背景
TTCスマートコミュニケーション・アドバイザリーグループのスマートカー・ワーキングパーティは、2014年6月に「災害時ITS応用サブワーキングパーティ(SWP)」を設置し、「災害時に車車間および路車間通信を用いて通信網を構築するために必要な通信方式の標準化」に向けた作業を開始しました。2015年4月の専門委員会再編により、作業はマルティメディア応用専門委員会スマートカー・サブワーキンググループ(SWG)に継承されました。
この標準化作業は;
・火山噴火・地震・津波・台風・洪水など大きな自然災害リスクを共有する東南アジアでのレジリエントな
社会システムの構築と運用を東南アジア諸国で実現すること
・アジア発の標準化を目指すこと
とし、アジア・太平洋電気通信共同体(Asia-Pacific Telecommunity(APT))の標準化活動プログラムである
アジア・太平洋電気通信標準化機関(APT Standardization Program (ASTAP))を通じて進めることとしました。
ASTAPでは;
2014年8月に開催された第24回会合(ASTAP-24)にて、新しい課題として承認、
2015年3月に開催された第25回会合(ASTAP-25)にて、各国で考え得るユースケース募集を経て、
2015年9月に開催された第26回会合(ASTAP-26)にて「災害時の自動車を用いた情報通信システムの要求条件」(REQUIREMENTS OF INFORMATION AND COMMUNICATION SYSTEM USING VEHICLE DURING DISASTER)が承認されました。
更にこの作業はコネクテッド・カー専門委員会アドホックV-HUBチームに継続され、ASTAPにて検討・審議を経て
まとめ上げた勧告草案 “Standard Specification of Information and Communication System using Vehicle during Disaster”(略称:V-HUB)は、2018年10月に勧告化承認されました。
今回は、同勧告を基に災害時にコネクテッド・カー技術を用いた車両による防災情報通信システムの利活用方法を
検討し、V-HUBを自治体等を通じて社会実装するための指針を策定するための糧とするため表記レポートの日本語化に取り組みました。
レポートの概要
災害管理プロセスは4つの密接に統合されたステージ;緩和(Mitigation)、準備(Preparedness)、対応(Response)、回復(Recovery)によって定義され、各ステージでとられた措置を特定することは、情報通信技術の適用を選択し、展開するのに役立ちます。
しかし、災害管理における情報や連携に利用できるICTツールは膨大な種類があるにもかかわらず、ICTツールや
発電機が災害発生後の特定の地域や一定期間において停電により稼働できない可能性があります。生きるか死ぬかの問題において、コミュニケーションは文字通り不可欠であることは明白です。その一方、自動車にはガソリン、
ダイナモ(発電機)、バッテリーが搭載されています。
このレポートは、災害管理サイクルの対応ステージにおいて、被災地の通信能力が不完全な状況下に暫定的な通信ネットワークを構築する必要性についてまとめたものです。