TS-1024 「遠隔手話通訳サービス・システム仕様書」の制定 (マルチメディア応用専門委員会)
マルチメディア応用専門委員会では、2020年6月5日にTTC仕様書「遠隔手話通訳サービス・システム仕様書」(TS-1024)の第1版を制定しました。
これは、ろう者等が、聞こえる人と会話する際に 、 手話通訳者が通信手段を利用して遠隔から通訳するシステムの仕様です。
手話通訳者がろう者等と同行し、対面で手話通訳を行うことはろう者等にとってコミュニケーションの観点からも福祉の観点からも基本であり重要なことです。
しかし、新型コロナウイルスの発生により、ろう者等が行政機関や学校、保健所への相談や病院への受診等に際して、手話通訳者が同行すると感染の恐れがあることや、感染予防のためのにマスクを着用すると、口話が困難になってしまうなどの理由で、手話通訳者が同行するのが困難になってきました。
また政府は、 令和2年4月7日に「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の閣議決定を発表し、その中で、強靱な経済構造の構築のための実施項目として「リモート化等によるデジタル・トランスフォーメーションの加速」を表明しました。その中には、遠隔教育や遠隔医療など、ろう者等の生活にとって極めて重要な項目が含まれており、リモート化等によるデジタル・トランスフォーメーションの中でろう者等が取り残されることがないよう、意思疎通支援強化のために、遠隔手話通訳派遣のシステム・サービスを標準的な形で提供できることが求められています。
このような背景から、当事者団体、有識者等が協議会を結成し協議を重ね、関係団体とも調整した上で、TTC仕様としたのが本仕様書です。
本仕様書は、新型コロナウイルス対策や災害時にも活用できるよう、意思疎通支援事業を強化し、遠隔手話通訳事業を実施することにより感染予防を進め、地域においてろう者等が安心して相談等できる体制の整備に供するよう制定されました。
概要
仕様書は以下の様な目的を持っています:
- 手話通訳訳者の負担の軽減と安全の確保:
- 意思疎通支援事葉における手話通訳派遣のセキュアな管理
- ろう者等にわかりやすい遠隔手話通訳
- 関係者にとって可能な限り運用しやすく使用しやすい枠組み
- 現行の手話通訳派遣制度のワークフローにそったシステム
これらの目的のために、ろう者等、手話通訳者、手話通訳派遣管理者、システム提供者のそれぞれに対する要求事項を規定しています。
また、ろう者等の使用の簡便性と安全性、将来性等を勘案して、WebRTCの技術を使って利用者をブラウザーを通じて、ウェブサイトに接続し、このウェブサイトを通して遠隔手話通訳サービスの実現する方法を規定しています。
さらに、遠隔手話通訳と電話リレーサービスとの関係、遠隔医療との連携、救急・消防などの緊急時対応との連携、遠隔授業との整合性についても記述しています。
本仕様書は、引き続き関係団体と協議しつつ、さらに良い仕様とすることが期待されています。