ASTAP-32会合速報:新副議長に岩田氏選出
私が議長を務めるASTAP(Asia-Pacific Telecommunity Standardization Program) の第32回会合は、本年5月にバンコクで開催の予定でしたが、新型コロナウィルス感染の影響で延期され、さらに物理的集合形式での開催を断念し、11月10日~11日に、オンライン形式で開催されました。
今会合は、ASTAPの議長と副議長の任期満了のタイミングであり、新議長・副議長の選任が行われるとともに、新体制での作業グループ(WG:Working Group)会合と技術分野別の専門家グループ(EG:Expert Group)会合の作業計画の確認を行うことを主目的に開催されました。
通常は5日間の日程で、初日には、標準化ホットトピックに関するワークショップが企画され標準化議論については、3つのWG会合とWGの配下の11のEG会合が開催されますが、今会合はEG会合を開催しないで、ASTAPの新体制を確認することを目的に、プレナリーとWG会合のみの二日間の短縮会合となりました。
今回のASTAP会合には、APT加盟国38ヶ国の内18か国の主管庁代表者を含め、139名が参加登録しました。オンラインでは常時80名前後の参加者がありました。日本からは、総務省から3名、企業・団体などから12名で対応しました。写真1はオンライン参加者のスクリーンショットの一部です。
本ブログでは、ASTAP-32会合の主要概要について速報します。
1. ASTAP議長・副議長の選任
- ASTAPの作業規則(Working Method)では、議長と副議長の役職任期は1期3年間で最大2期までとなっており、ASTAPのプレナリーでの承認に基づき選任されます。私にとっては6年間のASTAP議長としての最後の会合となりました。
- 今回の役職者候補者としては、新議長に、韓国から今まで副議長を務めたHyoung Jun Kim氏(ETRI)が立候補し、副議長には、中国からXiaoyu YOU氏(CAICT)と日本から岩田秀行氏(TTC)の立候補があり、全員の選任承認が得られました。岩田さん、おめでとうございます。
- ASTAPの歴史では、ASTAPは1997年に創設され、初代議長はBob Horton氏(オーストラリア)が務め、2010年に第二代議長としてSeyed Mostafa Safavi氏(イラン)が務めました。私は第三代議長として2014年のASTAP-24会合において選任されました。
2. ASTAP作業方法(Working Method)
- ASTAPの組織構成、審議方法、審議手順及び関連規則などを規定する作業方法に関して、COVID-19感染対策を考慮し、今まで会議形態として物理的に集合する会議形態のみを前提していた規定に対して、オンラインまたはハイブリッド形態による会議開催をルールとして適用できるようにするため、既存の作業方法の規定に追加修正を合意しました。
- 議長と副議長の任期を明確化するとともに、議長が不在の場合の代理を務める副議長の役割を明確化しました。
- 作業方法の追加修正案は本年の12月開催予定の第44回MC(Management Committee)会合 に提案され承認される予定です。
3. ASTAP組織構成
- ASTAPの検討体制は、議長・副議長のもと、政策・戦略、ネットワーク技術、サービスの3つのWGとその配下に技術分野毎に11のEGで構成されます。
- ASTAPの運営を推進する役職者には、多くの日本の専門家の方々が参画しています。今会合で議長と副議長が新任され、また、WGとEGそれぞれの議長と副議長については継続の確認と承認が行われました。新しいASTAP組織構成を表1に示します。
4. ASTAP作業計画(Work Plan)
- それぞれのEGにおける勧告草案作成や調査報告書作成などの具体的な検討課題は作業計画として整理され、ASTAP会合毎に進捗を管理しています。今会合の時点では、30件の作業計画があり、課題内容の確認と検討のタイムプランの確認修正が行われました。
5. ICT標準化に関するアンケート分析
- 前回会合で日本からの提案により実施された「APT会員に対するICT標準化活動への要望に関するアンケート調査」の結果が事務局から報告されました。アンケートではAPT加盟各国におけるICT標準化に対する関心課題や活動内容への要望が調査され、2019年6月から12月の期間で13カ国からの回答がありました。
- 標準化トピックとしては、5G、IoT、スマートシティ、サイバーセキュリティなどの関心課題が挙げられるとともに、WGとEGでの検討課題への反映の必要性が認識されました。また、標準化活動としては、トレーニングコースやワークショップの実施などの要望が確認されました。これらの要望を分析し、今後の作業計画や検討体制の見直しに役立てていく予定です。
6. APTとETSIとのMOU(覚書)
- 契約更新が必要となっているAPTと欧州ETSIとのMOUに関して、MOU締結の必要性を再確認し、MOUの定期的な更新手続きを進めることを合意しました。MOUの付録に記載するAPT作業プログラムとETSIの技術グループとの相互に関連のある技術分野を明確にするマッピングテーブルを更新しました。
- ETSIとのMOUに関して、APTではASTAPの他、AWG(APTワイヤレスグループ)もMOUの更新に賛成しています。今後はMOU締結における法制度の観点からの検討を行うためにWGMC(The Working Group of Management Committee on APT Legal Instruments)においてETSIとのMOU締結のための交渉が行われる予定です。
7. 退任議長・副議長への感謝状贈呈
- クロージングプレナリーの最後に、6年間の任期を終えたASTAP議長と副議長に対して、APT事務局長より表彰状の贈呈が行われました。写真2は私への感謝状です。
8. 今後の予定
- 次回ASTAP-33会合の日程は2021年の第2四半期を予定しています。COVID-19の感染状況により、物理的な集合形態かオンライン形態かは状況に応じて判断することになります。
- 次回ASTAP会合に向け、標準化要望アンケートに対するアクションを検討するために、副議長(岩田氏とYOU氏)をリーダーとする検討チームを立ち上げ、Industrial Workshopを開催するための企画検討を行うこととなりました。日本にとって、国際連携における情報発信の機会としてASTAPが活用されることが期待されます。
- APT事務局長(Areewan Haorangsi氏)と事務局次長(近藤勝則氏)のお二人も3年間2期の任期満了を迎えられ、Areewan事務局長にとっても最後のASTAP会合となりました。事務局長選挙は、本年12月3日から5日に開催予定の第15回APT総会(General Assembly)で実施され、事務局長職には、日本から近藤勝則氏が立候補されています。
ASTAPの成果の詳細内容に関心のある方は、TTC事務局にお尋ねください。また、総務省およびTTCのASTAP関連委員会での報告を参考にしてください。
表1.ASTAP組織構成 (役職者名の敬称略)
WG(作業グループ)/EG(専門家グルーブ)
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議長・副議長
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ASTAP議長
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Dr. Hyoung Jun Kim(韓国)
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ASTAP副議長
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岩田秀行(日本・TTC)
Mr. Xiaoya You(中国)
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WG PSC (Policy and Strategic Co-ordination)
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Mrs. Nguyen Thi Khanh Thuan(ベトナム)
副議長:岩田秀行(日本・TTC)
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EG BSG (Bridging the Standardization Gap)
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Mrs. Nguyen Thi Khanh Thuan(ベトナム)
副議長:Ki-Hun Kim(韓国)
副議長:岩田秀行(日本・TTC)
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EG GICT&EMF (Green ICT and EMF Exposure)
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Dr. Sam Young Chung(韓国)
副議長:Dr. Artprecha Rugsachart(タイ)
副議長:Mr. Min Prasad Aryal(ネパール)
副議長:Mr. Nur Akbar Said(インドネシア)
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EG ITU-T (ITU-T Issues)
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釼吉薫(日本・NICT)
副議長:Mr. Nguyen Van Khoa(ベトナム)
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EG PRS (Politics, Regulatory and Strategies)
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Ms. Nadia Hazwani Yaakob(マレーシア)
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WG NS (Network and System)
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Dr. Joon-Won Lee(韓国)
副議長:小川 博世(日本・NICT)
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EG FN&NGN (Future Network and Next Generation Networks)
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Dr. Joon-Won Lee(韓国)
副議長:谷川和法(日本・NEC)
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EG SACS (Seamless Access Communication Systems)
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小川博世(日本・NICT)
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EG DRMRS (Disaster Risk Management and Relief Systems)
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議長代理:荒木則幸(日本・NTT)
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WG SA (Service and Application)
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永沼美保(日本・NEC)
副議長:Dr. Jee-In Kim(韓国)
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EG IOT (Internet of Things)
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山田徹(日本・NEC)
副議長:Dr. Seung-yun Lee(韓国)
副議長:Li Haihua(中国)
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EG IS (Security)
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永沼美保(日本・NEC)
副議長:Dr. Heuisu Ryu(韓国)
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EG MA (Multimedia Application)
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山本秀樹(日本・OKI)
副議長:Dr. Dong il Seo(韓国)
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EG AU (Accessibility and Usability)
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Dr. Jee-In Kim(韓国)
副議長:Ms. Wantanee Phantachat(タイ)
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