新年度を迎えるにあたって
2019年04月01日
都内では桜が満開を迎え、華やかさを増しておりますが、平成最後の月となる平成31年4月1日、政府は5月1日から始まる新元号を発表しました。1985年の設立から34年間のTTCの歴史は、ほぼ平成の時代とともに歩んできました。情報通信分野の標準化の世界は大きく変わり、来月からは新元号「令和(れいわ)」とともに、新時代の新たな一歩を踏み出していきたいと思います。本ブログでは、新年度のはじめに当たり、今年度の事業計画を基に、TTCの標準化活動方針を述べます。
【標準化活動の背景変化】
TTCは発足以降、通信自由化によるマルチキャリア相互接続の実現、インターネット・モバイルの飛躍的発展の支援、通信のグローバル化の促進などの領域において、情報通信ネットワークの発展に寄与してきました。
現在は、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、AI(人工知能)などの活用による「デジタルトランスフォーメーション」が本格化しています。これに伴い、情報通信技術の役割が「業務改善のツール」から「価値創造のツール」へと変化し、新しいビジネスモデルの創造や社会全体のスマート化に貢献することが期待されています。
また、技術革新によって新しいサービス提供者が市場に登場するとともに、既存のサービス提供者は、時間をかけて社内で開発を行う自前主義から脱却し、迅速に新サービスを打ち出す方策である「オープンイノベーション」の導入が求められています。
【新たな標準化動向】
このような状況の中で、新しいビジネスを創出し、そのグローバル展開を加速させる手段として、国際標準の活用は、ますます重要性を増しています。事実、ITU-TにおいてもAI、分散型台帳技術、量子通信などを活用した新しいビジネスにつながる情報通信サービスの議論が進展しています。
また、標準化活動の範囲は、従来の標準文書を作成するだけでなく、「オープンイノベーション」を技術面・ビジネス面から支えるあらゆる活動に広がっています。そして、関わるプレーヤーについても、従来のICT関連のインフラ技術面だけでなく、アプリケーション関連技術とビジネスの両面から価値創造・事業戦略を企画する方々へと広がっています。
【今後のTTCの役割】
TTCは、情報通信分野において日本標準を策定する標準化機関として、また、ITU-Tへのアップストリーム活動における日本国内での対処審議の場としてその活動の一層の活性化を図るとともに、他のデジュールやフォーラム、デファクトの標準化組織との一層の連携強化、各種利用分野との交流強化など「オープンイノベーション」を推進する活動の中で、タイムリーな標準策定に努めて参ります。
情報通信を取り巻く環境が変化しても、情報通信ネットワークにおける相互接続運用の実現、サービスの安定運用、品質や安全確保の重要性は変わりません。また、グローバルビジネスを考える場合、新興国で採用される傾向が高いデジュール標準は重要であり、ITU-Tと結びつきが強いTTCの活動をこの目的のために活用することも考えられます。
さらに、国連が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けて、国内外問わず企業が果たす役割はますます高まっており、TTCでも、社会課題の解決に向けて時代の流れを先取りする議論を行ない、的確な標準化テーマを設定し、国際標準化を推進するとともに、情報通信技術を活用した事例の創出・展開等その普及活動の推進に貢献したいと考えています。
【量子通信に関するセミナーのご案内】
新たな標準化動向として取り組むべき「量子通信」に関しては、量子コンピュータ・量子通信を巡る動きが国内外で活発化してきており、国内外で巨額の研究開発予算が投じられ、Google、IBM、Intel、Microsoftに加えて、スタートアップ企業も参入してきています。日本においても、今後ますます研究開発が加速することが期待されています。
TTCでは、IPSJ(情報処理学会)とタッグを組み、量子関連技術において、情報処理・コンピュータ分野と情報通信分野それぞれでご活躍されている講師の方をお招きし、研究開発の現状と展望をお話いただくIPSJ/TTC共催セミナーを4月11日に開催します。量子関連技術の実用化を目指し、関連分野に携わる多くの企業・大学の関係者の方々からコメントをいただき、より良いイベントにしていきたいと考えております。皆様のご参加と活発な議論を期待しています。
【TTCへの参加のお誘い】
最後に、より多くの皆様にTTCの活動にご参加いただき、皆様の知力と感性を磨いていただく中で、新しい価値や戦略、ビジネスモデルを見出すことを支援していきます。また、見出した戦略に基づくビジネス展開のうち協調・共創が必要なものについては、これを積極的に支援していきます。そして、標準化の推進と普及活動を通じ、情報通信ネットワークの発展に少しでも貢献できればと考えております。これからのTTCに対して、皆様のご指導とご支援を賜りますようお願い申し上げます。