グローバル標準化連携会合:GSC-22に参加して
3月25日から27日まで、スイスのモントルーのグランドホテルで、IEC(The International Electrotechnical Commission)とISO(The International Organization for Standardization)の共同ホストで開催された第22回GSC(Global Standards Collaboration:GSC-22)会合に出席しました。会合の結果概要について速報します。
モントルーはスイスの「リヴィエラ」と呼ばれるレマン湖の東側湖畔にある景勝地で、チャーリー・チャップリンの晩年の住処として知られるヴヴェイと共に人気の観光地ですが、今はシーズンオフのせいか、ホテルでの混雑もなく、会議にはふさわしい場所でした。
GSCとは
GSC:Global Standards Collaboration(グローバル標準化連携)会合は世界の主要な標準化機関 (SDOs : Standards Development Organizations)の代表が一堂に会し、ICTs (Information and Communication Technologies) に関する標準化活動についての情報交換を行い、グローバルな標準化連携に資することを目的とした集まりです。
GSCのメンバーは表1の12団体で構成されますが、GSC-19会合でインドのTSDSIとIEEE-SAが加盟し、GSC-20会合でISOとIECが加盟しました。今会合のGSC-22には、各SDOの代表を含め約70名が参加しました。
TTCからは、HoD(Head of Delegation)としての前田の他、国際連携アドバイザリーグループリーダーの岩田 秀行 様(NTT)、AI関連のセッションで講演を行っていただいたセキュリティ専門委員会委員長の三宅 優 様(KDDI)、また事務局から山田 満 担当部長の総計4名が参加しました。
GSCの運用ルール
GSCの主な活動ルールとしては、
- SDO代表者が定期的に直接会して、標準化活動の最新状況、特に優先課題、戦略的取組み等について情報交換を図る場として活用
- GSCのハイレベルな方針についてはHoD会合で決定
- GSC会合では、各SDOの標準化活動の最新動向を報告するとともに、GSC会合毎に重点テーマ(2点ほど)を選択し、共通の戦略的標準化課題について意見交換
- 会合の合意内容についてはコミュニケとして発行
- 会合招聘の負担を考慮し、参加者は各SDOからの代表とし、会合規模を100名以下とするように配慮
- およそ1年~1年半に1回の周期で、SDOが順番に交代でホスト担当
各SDOの活動報告
12の各SDO代表から、最新の活動状況、特に標準化の優先課題、戦略的取組み等について報告が行われました。
共通の戦略的主要課題としては、スマートシティ、IoT、AI、セキュリティ、5Gなどであり、IoTアプリケーションの拡大と市場動向にタイムリーに対応した標準化活動の重要性と、共通課題における各SDO間の検討の重複を最小限にするための連携協調が必要であることが共通に認識されました。
GSC‐22会合への参加を通じて、世界各国の標準化機関が我々と同様な方向感で取り組んでいることを再認識するとともに、これらの標準化における課題はより業界横断的な取り組みが重要であり、GSCメンバーとして今後もグローバルな標準化活動での連携を強化していくことが必要であると考えています。
GSC-22の主要テーマ
今会合では、主要テーマとして、AIとSmart Sustainable Citiesの2課題を取り上げ、テーマごとに各SDOの代表によるプレゼンテーションとパネルディスカッションによるセッションで構成されました。プログラム構成を表2に示します。
今会合の詳細な結果報告は、国際連携アドバイザリーグループで行う予定です。
テーマ1:持続可能なスマートシティ
スマートシティの実現要件としては、都市間を跨ってデータを交換する共通的な仕組みの実現ができていない潜在的な課題を有しています。 GSCの各SDOは、シームレスなデータ交換、相互運用性などを可能にするためのガイドラインと標準の開発に関する継続的な議論の必要性を共有しました。
テーマ2:AIと機械学習
AIに関しては、さまざまな地域のニーズを認識しながら、5G、ヘルスケア、工業製造などの分野でのAIおよび機械学習とその応用に関する継続的な活動について情報を共有しました。 AIの技術的な側面だけではなく、セキュリティ、プライバシー、信頼性、倫理、社会的懸念、および規制に関連する潜在的な問題について検討が行われ、ICTシステム、サービスおよび技術の倫理的および社会的側面に取り組むためにGSCメンバー間での協力が必要であるという認識ができました。
今後の予定
次回のGSC-23 会合は、TIA(米国)のホストにより2020年に開催する予定です。その後は、2022年頃にCCSA(中国)、2023-2024年頃にARIB/TTC(日本)による開催が予定されています。
GSC関連資料
GSC会合での講演資料については、表2のプログラムの全ての講演資料について、過去の会合資料を含め、URL:http://www.itu.int/en/ITU-T/gscで後日アクセス可能となります。
表1:GSC構成組織
国名 |
組織名
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URL |
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日本
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ARIB
(Association of Radio Industries and Businesses) |
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米国
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ATIS
(Alliance for Telecommunications Industry Solutions) |
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中国
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CCSA
(The China Communications Standards Association) |
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欧州
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ETSI
(European Telecommunications Standards Institute) |
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IEEE-SA
(The IEEE Standards Association) |
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ITU
(International Telecommunication Union) |
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ISO
(International Standard Organization) |
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IEC
(International Electrotechnical Commission) |
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米国
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TIA
(Telecommunications Industry Association) |
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インド
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TSDSI
(Telecommunications Standards Development Society, India) |
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韓国
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TTA
(Telecommunications Technology Association) |
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日本
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TTC
(The Telecommunications Technology Committee) |
表2:GSC-22のプログラム構成
March 26, 2019
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13:30-17:35
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Smart Sustainable City Session
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13:30-13:40
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Theme 1 : Delivering Data – Chairman : Rudi Schubert (IEEE-SA)
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13:40-13:55
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Sustainability Frameworks for Smart Buildings (TIA)
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13:55-14:10
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ETSI Standards for Smart & Sustainable Cities and Communities (ETSI)
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14:10-14:25
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ITU-T Interoperability Frameworks for E2E Data Delivery: Systems, Devices, and Platforms (ITU)
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14:25-14:40
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Smart Cities Data Exchange – Cities and Industry Partnering for the Future (ATIS)
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14:40-15:10
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Panel discussion
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15:40-15:50
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Theme 2 : Managing and Using Data – Chairman : Lindsay Frost (ETSI)
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15:50-16:05
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Urban Data Management and Modeling in Korea Smart City (TTA)
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16:05-16:20
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ITU-T Data Processing and Management Framework (ITU)
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16:20-16:35
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Indian Smart Cities – Approach to address Data Management, Enrichment and Security Challenges (TSDSI)
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16:35-16:50
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oneM2M Smart Data Usage in Smart Cities (ATIS (oneM2M)
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16:50-17:05
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Smart Cities – Big Data : IEEE Initiatives Enabling Smart and Secure Data Management (IEEE)
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17:05-17:35
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Panel discussion
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March 27, 2019
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09:00-11:05
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Artificial Intelligence Session
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09:00-09:05
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Opening and overview (ISO)
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09:05-09:25
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Overview of the AI program in ISO/IEC JTC 1/SC 42, AI (ISO)
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09:25-09:45
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Overview of ITU Work Program on AI (ITU)
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09:45-10:05
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Role of AI and its standards in 5G for emerging markets (TSDSI)
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10:05-10:25
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Standards for Safe AI: Foundations for Risk Reduction and Safety (TIA)
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10:25-10:45
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IEEE Initiatives in Autonomous and Intelligent Systems (IEEE)
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10:45-11:05
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Transparent and trustworthy AI/Machine Learning (TTC)
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11:20-13:05
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AI Applications, Use Cases and Related Technologies
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11:20-11:40
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Network Enabled Applications of AI (ATIS)
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11:40-12:00
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Network Service Automation with AI (ETSI)
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12:00-12:15
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Intelligent Phone – AI Enabled (CCSA)
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12:15-13:00
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Panel on next steps and future exchange - Moderator : Wael Diab (ISO)
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14:30-16:00
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HoD report, communique approval, next meeting and closing
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