V-HUBに関するAPTワークショップ開催
マニラから南に車で3時間半、バタンガス州のバタヤン湾に面したEagle Point Resortで開催されたAPT Workshop on “International Collaborative Research of Disaster Response Model using Vehicle Communicatio” に参加するため、7月11日から15日まで、フィリピンに出張してきました。日本では35℃を超える猛暑が続いていたようですが、海に面した立地と突然訪れるスコールのお陰か、20~30℃の気温で、今の日本よりは爽やかかもしれないと思いました。
今回のワークショップは「Vehicle(クルマ)を活用した災害対応システム」(通称V-HUBシステム)に関する国際協力活動の一つで、TTCのコネクテッド・カー専門委員会がAPT(Asia-Pacific Telecommunity)に提案し採択された "International Collaborative Research of Disaster Response Model using Vehicle Communication" に関するAPTプロジェクトの活動の一環で開催されました。ワークショップはTTCが企画支援し、アテネオ・デ・マニラ大学のアテネオ・イノベーションセンター主催で、フィリピン政府の情報通信技術省DICT (Department of Information Communications Technology) の承認の下に実施され、5か国から30名以上が参加しました。
V-HUBシステムとは、地震、津波、台風などの災害で既存の通信インフラが使えなくなった時に、通信機能を搭載し発電機能を持ったバッテリーを有するクルマ(Vehicle)が、非常時のデータ系通信中継のためのHub機能を提供するシステムであることからネーミングしています。
ASTAP (APT Standardization Program Forum) では、各国の災害対応の様々なユースケースについて情報収集を図るとともに、“Information and Communication System using Vehicle during Disaster” に関する標準化文書の作成検討を日本メンバー(大西亮吉氏:トヨタIT開発センター)がエディターとなって推進しています。既に各国から提案されたユースケースについては、“REQUIREMENTS OF INFORMATION AND COMMUNICATION SYSTEM USING VEHICLE DURING DISASTER” (APT/ASTAP/REPT-21) と題するレポートが2015年9月開催のASTAP-26で完成しています。
今回のワークショップでは、上記レポート作成に参加していただいたフィリピン、マレーシア、タイ、パプアニューギニアなどの各国研究者・開発者を招聘し、災害対応の各国の様々な試みについて、デモ紹介を含め情報交換をするとともに、本年8月に開催されるASTAP-29に提出する勧告草案 ”Standard Specification of Information and Communication System using Vehicle during Disaster” について、草案改訂の集中審議を行いました。
ワークショップのプログラムを表1に示します。講演者としては、日本からのトヨタIT開発センター、ホンダ、スカパーJSATの他、フィリピンからDICT、NTCとアテネオ・イノベーションセンター、マレーシアからはマレーシア・プトラ大学、タイからはCATテレコムとアジア工科大学から、12件の講演とデモ紹介が行われました。講演では、ネットワークとしてはWLAN、衛星、ホワイトスペース(TV等の周波数割当空白帯域)、セルラーなど様々な通信手段を活用し、クルマだけでなく、ドローン、UAV(無人飛行機)が収集したデータやメッセージ、画像情報等を転送することで、災害時緊急通信、掲示板、探索・救助通信などの災害対応ユースケースを実現することを目指しており、各国での試みと検討の中で明らかとなった課題などが紹介されました。講演内容に関心のある方はTTC事務局までお問い合わせください。
勧告草案 ”Standard Specification of Information and Communication System using Vehicle during Disaster” については、各国からのコメント解決を行い、草案改訂版を合意しました。
日本からの提案検討はTTCのコネクテッド・カー専門委員会委員長の千村保文氏(沖電気工業)のリーダーシップの下で推進しています。今回のワークショップで収集した各国からのコメントや要件の分析をはじめ、ASTAP-29会合に向けた最終的な寄書提案については、TTCのコネクッテド・カー専門委員会で審議を行う予定ですので、内容に関心のある方は専門委員会への参加をお願いいたします。
表1: ワークショッププログラム
日程
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内容
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7月12日
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10:00-12:00
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Session-1: Opening Session
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Moderator: Arlene Romasanta, DICT, Philippines
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1. Welcome address:
Eliseo Rio, Undersecretary, DICT, Philippines
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2. Message:
Nathaniel J.C. Libatique, Ateneo Innovation Center, Ateneo de Manila University, Philippines
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3. Message:
Yoichi Maeda, ASTAP Chair, The Telecommunication Technology Committee, Japan
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14:00-17:00
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Session-2: VHUB Seminar
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Moderator: Yasubumi Chimura, TTC, Japan
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1. V-HUB: Vehicles as Information Hubs during Disaster
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Kevin Sato,
Toyota ITC, Japan |
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2. Restoration Support by Satellite Communications
-- Tohoku-Pacific Ocean Earthquake -- |
Tomoki Isaac Saso,
SKY Perfect JSAT, Japan |
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3. Approach for disaster prevention and reduction using Honda telematics
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Yasuo Oishi,
HONDA, Japan |
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4. Resilient Post-Disaster Information Systems Using Delay Tolerant Networks and UAVs as Data Ferries
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Nathaniel Joseph Libatique,
Ateneo Innovation Center, Ateneo de Manila University, Philippines
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7月13日
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10:00-12:00
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Session-3: Review of draft of VHUB Specification
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Moderator: Ryokichi Onishi, Toyota ITC, Japan
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1. Presentation of VHUB Specification Draft
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Ryokichi Onishi,
Toyota ITC, Japan |
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2. Discussion
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14:00-17:00
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Session-4: Use-case Presentation and Demonstration
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Moderator: Yasubumi Chimura, TTC, Japan
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1. SKY Perfect JSAT (Demo)
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2. Ateneo de Manila University (Demo)
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3. WiFi on Vehicle cells: Inter-operation of Satellite, Drone and Vehicle cells
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Arunsak Nit-in,
CAT Telecom, Thailand |
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4. Research on Disaster Response
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Aduwati Sali, Universiti Putra Malaysia, Malaysia
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5. The Design and Operational Guidelines for DUMBONET Emergency Networks
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Nisarat Tansakul,
Asian Institute of Technology, Thailand |
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6. ICT Strategy for DRRM (The Philippine Setting)
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Alan Silor, Assistant Sec. DICT, Philippines
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7. V2X Applications by using VHUB
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Yoshiharu Doi
Toyota ITC, Japan |
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8. Use Case Suggestion
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Gibson Kemoi
NICTA, Papua New Guinea |
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7月14日
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9:00-12:00
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Session-5: Closing Session
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Moderator: Yasubumi Chimura, TTC, Japan
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- Agreement on VHUB Specification or its way forward which will be contribute to ASTAP-29
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18:00-20:00
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Farewell Session
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