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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

ITU-T レビュー委員会 最終会合報告

  厳しい暑さの中、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 日本では蒸し暑い日々が続いているようですが、私は、7月13日から7月23日まで、ジュネーブのITU本部に出張しております。今回は、レビュー委員会(Review Committee)の議長としての対応と、TSAGTelecommunication Standardization Advisory Group)におけるWTSA-16総会(世界電気通信標準化総会:World Telecommunication Standardization Assembly)に向けたAPT(アジア・太平洋電気通信共同体)の代表としての対応のための出張です。今回のブログでは、7月15日に開催された第7回レビュー委員会の会合結果を速報します。  

 ジュネーブの気温は今週から30度を超え、日差しは強いですが、湿度は50%未満と過ごしやすいです。快晴の日々が続いており、写真はITU本部の最上階のレストランからのジュネーブ市内の眺めで、レマン湖の大噴水とモンブランの山頂を望むことができました。週末はTSAGのマネジメント会合のためにITU本部に出かけましたが、ITU本部の向かいにある国連欧州本部前の広場では噴水による散水が行われ、子供たちが水遊びに興じていました。

 今回のレビュー委員会の主目的は、WTSA-16総会に向けた報告書案の承認です。レビュー委員会の動向については、2012年末の設立以来、3年半にわたり私のブログで何度か報告させていただきましたが、今回のレビュー委員会は、ITU-Tの2013年~2016年研究会期での最終会合で、活動成果のまとめと提言の作成が目的です。

 レビュー委員会はWTSA-12の決議82により新設され、この4年間の活動結果は2016年10月25日~11月3日にチュニジアで開催予定のWTSA-16にて報告し、その活動を終了することになります。レビュー委員会の役割は、「ITU-Tの標準化体制に関する戦略的かつ組織的な検証と他の標準化機関との協調連携の枠組みの検討」であり、レビュー委員会の検討を通じて、以下の9項目を活動成果としてまとめました。

1)  ITU-Tの標準化体制と協調活動に関するアンケート調査: ITU-Tの現状の問題点を明らかにするため、ITU-Tメンバーに対するアンケート調査を行い、検討課題の整理を行いました。回答を分析し、他の標準化機関との協調連携の実現方法や既存の様々な検討体制の見直しによる標準化活動の効率化の必要性が認識されました。

2)  SG活動モニタリング評価の実施: ITU-Tの各研究委員会の活動の検証のためには客観的な活動評価データが必要であり、勧告草案などの成果物の数、寄書文書などの入力数、他機関とのリエゾン文書の交換数、実働作業項目数など、標準化活動に関する統計データを自動で集計できるシステムを構築しました。これらのデータを基に各研究委員会の活動検証を実施しました。

3)  ITU-Tの協調連携機構の検証: ITU-Tには他の標準化機関との協調連携のためのメカニズムとして、Focus Group (FG)、Global Standards Initiatives (GSI)、Joint Coordination Activities (JCA)、Inter-sector Rapporteur Group (IRG) などの様々な検討グループの形態があり、あまりに多くのグループが存在したことから、それらの必要性を含めた運用管理と活動検証を行うこととなりました。検討の結果、Focus Groupの活用の有効性を確認するとともに、TSAGによる様々なグループの運用管理とその活動検証の継続が必要との認識に至りました。

4)  Technology Watchレポートの更なる有効活用: ITU-T事務局で実施してきた標準化のための技術革新に関する調査(Technology Watchレポート)の有効性が評価され、より広い活用を図るためにTechnology Watch運営委員会を構成することとし、運用はメーリングリストにより行うこととしました。

5)  CTO会議の活用: 市場要望や革新的な話題に沿った標準化を推進するために、各企業のCTO(最高技術責任者)の意見を収集し、標準化戦略に活用することとしました。レビュー委員会ではCTO会議の結果を踏まえ、以下の8つの課題を今後のITU-Tの標準化戦略課題として取り上げています。

  • Internet of things (IoT)
  • Video
  • Software defined networking and network function virtualization
  • Intelligent transportation systems
  • 5G systems
  • Service interoperability in fixed-mobile hybrid environments including IoT
  • Trusted information infrastructure
  • Open-source solutions 

6)  ITU-T研究委員会の再編検討: SG再編におけるハイレベル原則の7項目(Optimized structure, Clear mandates, Enhanced coordination and cooperation, Cost-effectiveness and attractiveness, Efficient and productive working methods, Timely identification of standardization needs, Support for bridging the standardization gap)を提案し、TSAGで採用されるとともに、研究委員会の詳細再編案を検討するためのラポータグループをTSAGの中に構成し、検討を加速することとなりました。

7)  フォーカスグループ(FG)のためのガイドライン: フォーカスグループ成果文書のその親グループへの効率的な移管のためのガイドラインとして、勧告A.7の付録Iの作成を提案し、勧告改訂のTSAGでの合意が得られました。

8)  標準化戦略策定機能の実現: 産業界や政府にとっての標準化戦略的に重要な新規課題の発掘のために、TSAGの中に標準化戦略策定機能を実現することを提案し、新たなラポータグループを構成することとなりました。

9)  「垂直型」研究委員会の設立: ITS、IoT、次世代5Gモバイルなどの課題を扱うには「垂直型」研究委員会の構成が適しているとの提案をもとに、昨年6月に、研究会期途中でのIoTに関する新しい研究委員会SG20を設立することとなりました。

 上記の9項目をレビュー委員会の成果として確認するとともに、今後のWTSA-16において、以下の4つの項目の具体化を検討することを提案しています。

1)  TSAGによるSG活動モニタリングの継続

2)  SG再編のハイレベル原則を基にしたWTSA-16におけるSG構成の実現

3)  CTO会議及びTechnology Watchレポート成果活用の継続

4)  TSAGによる現状の協調連携機構と各種グループの検証の継続

  以上により、レビュー委員会は決議82で示された当初の目的を達成したと評価され、レビュー委員会の活動は終了することが合意されました。今後はレビュー委員会の機能は、TSAGにおける「標準化戦略」、「連携強化」、「作業方法」などの検討ラポータグループの活動により継続していくことが合意されました。

 レビュー委員会の終わりに当たり、レビュー委員会のマネジメントメンバーに対して感謝状を贈呈しました。その贈呈式の終了後、集合写真を撮りました。

 レビュー委員会で合意した報告書案について、18日から開催のTSAG会合で報告を行い、無事終了し、レビュー委員会議長としての役目を何とか果たすことができました。