第2回 CJK CTO会合に参加して
二十四節気の「春分」も過ぎ、振替休日となる3月21日午後、ITU-TのTSB局長(Chaesub Lee氏)が招聘し、中国、日本、韓国(CJK: China, Japan and Korea)の3ヶ国におけるICT業界を代表する民間企業の技術責任者(CTO: Chief Technology Officers)が参加するCJK-CTO Consultation会合(以下、CTO会合)が、KT(Korea Telecom)のホストにより、韓国ソウルのKT R&Dセンタにおいて開催されました。
私は、ITU-Tのレビュー委員会(Review Committee)の議長として、ITU-T改革検討にCTOメンバーの意見を反映するため、Lee局長より招待を受け、CTO会合に参加しました。今回のブログでは、CTO会合で意見交換されたICT産業界が高い関心を寄せる今後の標準化課題について概要を紹介します。
CTO会合は、2008年のWTSA-08(ヨハネスブルク)総会の決議68によりTSB局長に課せられたアクションの一つで、産業界の声を聞くことにより、標準化の優先課題を議論し、今後の国際標準化活動の効率化を図るためのものです。CTO会合は2008年以降、毎年のイベントとなっており、アジア地域に限定せず、今までに7回開催されています。第7回会合については2015年10月19日号のマエダブログで報告しております。
CJKの3ヶ国に限定したCTO会合はLee局長が新局長になって始められたもので、昨年4月に続く2回目の開催となります。韓国出身のLee局長ならではのアジアを基盤とした標準化連携強化を図るための企画と位置付けられます。CTOメンバーにとっても、ITU-Tの役職者数や寄書数等CJKで過半数を占める3ヶ国の関係者が、標準化課題についての意識合わせを図り、友好を深める機会が得られることは、標準化戦略を練るうえでも有益な機会と考えられます。今回は表1の16組織の代表者と、ITU-T事務局からLee局長とBilel Jamoussi SG部門長が参加しました。
表1 第2回CJK-CTO会合参加リスト
企業・団体名 | 国名 |
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1. Alibaba Group
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中国
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2. ETRI(Electronics and Telecommunications Research Institute)
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韓国
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3. FiberHome Technologies Group
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中国
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4. Fujitsu Ltd.
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日本
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5. Huawei Technologies Co. Ltd.
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中国
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6. KDDI Corporation
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日本
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7. KT Corporation
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韓国
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8. LG U Plus Corporation
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韓国
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9. NEC Corporation
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日本
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10. NICT
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日本
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11. NTT
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日本
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12. NTT DOCOMO
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日本
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13. Samsung Electronics Co., Ltd.
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韓国
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14. SK Telecom Co., Ltd.
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韓国
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15. ZTE Corporation
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中国
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16. ITU-T Review Committee
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日本
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今会合の主要なトピックとしては、1)5G、2)IoT(Internet of Things)、3)ビデオ、4)WTSA-16(World Telecommunication Standardization Assembly)を取り上げて意見交換を行いました。
1)5Gを支えるネットワーク
5Gについては、昨年設立され今年末まで活動が延長されたFG-IMT2020(Focus Group on IMT-2020)について、その活動成果を高く評価するとともに、CJK各社は今後ともFG活動に積極的に貢献していくことが確認されました。また、5Gを支えるネットワークの今後の技術的な重要課題としては、end-to-end network management、network architecture and fixed-mobile convergence、network softwarization and network slicing、fronthaul and backhaul、information-centric networking、等であることを確認しました。
これら課題のFG成果物については速やかに勧告化が図れるように、親SGであるSG13と連携していくという方針について意識合わせが図れました。さらに、3GPP等他の標準化機関との検討の重複を避け、協調できるように連携を強化していくことが重要であることを確認しました。
また、5Gシステムの開発にはエコシステムの概念を取り入れることが重要であり、その中でオープンソースコミュニティとの関係について整理していく必要があるという共通認識が得られました。
2)IoTとその応用
IoTに関しては、昨年のTSAGにおいて、「IoTとその応用」に関する課題を検討する新SG20を設立する決定を高く評価するとともに、SG20は、M2M通信やユビキタスセンサーネットワークを含むIoT技術を国際的に協調して開発できるようにする責任があるという認識で一致しました。また、oneM2M等他の標準化機関との検討の重複を避け、協調できるように連携を強化していくことが重要であることを確認しました。
IoTのサーバーフィジカルシステムにおける重要課題としては、セキュリティ、プライバシー、インターオペラビリティと管理問題(アイデンティティと識別子の管理を含む)が含まれるという認識で一致しました。既存の縦割り型のデータ・サイロ構造を破壊し、データをトランスペアレントで、統合化し、相互運用可能な方法で共有できるようにしなければなりません。そのために、標準インタフェースを有する水平型クラウドベースのIoTプラットフォームが重要であると認識しています。
3)ビデオの将来
いろいろな形のビデオトラヒックは近年先例のない増加を見せ、今後もさらに増加すると予想され、ビデオの品質、信頼性、可用性等の確保が大きな課題になるという認識で一致しました。また、QoSとQoE課題を主管するSG12が進めるビデオ品質評価に関する検討を評価します。
4)WTSA-16準備
WTSA-16総会が、10月25日から2016年11月3日まで、チュニジアのYasmine Hammametで開催されること、その前の23日はCxO会合、24日にはGSS(Global Standards Symposium)が計画されていることが案内され、CTOメンバーへの参加が要請されました。WTSA-16では、SG構成の見直しとその議長・副議長が選定されるとともに、ITU-Tの作業方法の見直しが議論されることから、CTOメンバーからの提案についての寄書が要請されました。
CTO会合のより詳細な内容に関心のある方は、今回の会合結果はITU-TのCTO会合のサイトのCOMMUNIQUÉとして公開される予定ですので、そちらをご覧下さい。
CTO会合で示された5G(オープンソースを含む)、IoT、ビデオ等の課題はTTCにとっても重要な標準化課題であり、WTSA-16におけるITU-TのSG構成と合わせ、標準化戦略課題として検討していく予定です。
TTCでは、5Gに関しては「FG IMT-2020 Ph2対応」アドホック、SG20のIoTに関しては「IoT/SC&Cアドホック」が対応しています。「FG IMT-2020 Ph2対応」アドホックは、NGN&FN専門委員会を主管とし、アクセス網専門委員会、移動通信網マネージメント専門委員会の各専門委員会委員の中から、構成しています。「IoT/SC&Cアドホック」は、ICTと気候変動専門委員会を主管とし、次世代ホームネットワークシステム専門委員会、NGN&FN専門委員会及び信号制御専門委員会の各専門委員会委員の中から、構成しています。ご関心のある方は是非TTCのホームページをご覧ください。