ITU-TのCTO会合に参加して-今後の標準化重点課題動向-
ITU-TのTSB局長(Chaesub Lee氏)が主催し、ICT産業界を代表する民間企業の技術責任者(Chief Technology Officers)の集まりであるCTO Group会合(以下、CTO会合)が、10月11日(日)の午前、ハンガリーの首都ブダペストのHUNGEXPO(国際展示場)で開催されました。10月12日から15日まで、ITU Telecom World 2015が同会場で開催される機会を活用して、CTO会合はTelecom Worldの開会式前日午前に開催されました。さらに、午後には、ITU-TのSG議長関係者が加わり、合同会議が行われました。
今回のブログでは、CTO会合で議論され、共同声明として出されたコミュニケの内容を中心に、ICT産業界が高い関心を寄せる今後の標準化課題に関する議論模様を紹介します。
ブダペストはドナウ川を挟んだ西岸のブダ地区と東岸のペシュト地区の2つの町が1873年に町が合併され1つになったものです。この2つの町をつなげているのがセーチェーニ鎖橋の吊り橋です。ドナウ河畔地区はハンガリーの世界遺産で、重厚な美しい街並みが広がっていました。
CTO会合は、2008年のWTSA-08(ヨハネスブルク)総会での決議68によりTSB局長に課せられたアクションの一つで、標準化の優先課題を議論し、今後の国際標準化活動の効率化を図るための意見交換を図るものです。
私は、ITU-Tのレビュー委員会(Review Committee)の議長として、ITU-Tの戦略的改革についてCTO会合メンバーとの意見交換と連携を図るために、Lee局長より招待を受けCTO会合に参加しました。
CTO会合は毎年の定例イベントとなっており、今回は第7回のCTO会合となります。月に一回程度の頻度で電話会議での準備会合を重ね、コミュニケにまとめる議論を行い、本会議で最終の提言を合意します。CTO Groupには30社以上の登録がありますが、今回は都合がついた8か国13社(表1)の代表者とITU-T事務局からLee局長、Scholl次長とJamoussi担当部長などが参加しました。テレコムイタリア(イタリア)も参加予定でしたが、当日都合で参加できなくなりました。
No. | 企業・団体名 | 国名 |
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1
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Fujitsu Ltd.
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日本
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2
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Mitsubishi Electric Corporation
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日本
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3
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National Institute of Information and Communications Technology
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日本
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4
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NEC Corporation
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日本
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5
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NTT DOCOMO, Inc.
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日本
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6
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China Mobile Ltd
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中国
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7
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Huawei Technologies Co. Ltd
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中国
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8
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KT Corporation
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韓国
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9
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Cisco Systems
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米国
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10
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Ericsson
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スウェーデン
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11
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Tunisie Télécom
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チュニジア
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12
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Türk Telekom
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トルコ
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13
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Nokia Networks
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フィンランド
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CTO会合で議論された今後の標準化重要課題のキーワードとしては、5G(IMT-2020)システム、IoTを含むサービスインターオペラビリティ、トラスト、オープンソースです。ICTが世界を持続可能で弾力的な開発の道に移行するために、第68回国連総会では2030年に向けた行動計画として、17の持続的開発目標(Sustainable Development Goals)を定めました(表2)。 この目標を達成するにあたり、ICTを活用したスマートシティとIoTのアップリケ―ションと、5Gシステムが主要な技術開発であると認識されました。
5Gは2020年以降の通信基盤となると期待されています。サービス要求条件の変化に柔軟に対応するために、5Gネットワークでは仮想化(Vertualization)が主要な技術となると考えられます。5Gはコアネットワークの概念とアーキテクチャの進化的な発展が求められています。5G標準化では、固定・モバイルのハイブリッド網の統合が必要であり、様々な標準化機関との関係が必要となることから、それらを連携させることがITUの役割として期待されています。現在、ITU-TがFocus Group(FG-IMT2020)を立ち上げて、今後検討すべき課題の整理を行っていますが、CTO会合としては、FG-IMT2020の活動を評価し、支援することが確認されました。
標準化においてインターオペラビリティは重要な課題ですが、その対象は、IoTを含む固定・モバイルのハイブリッド環境におけるサービスインターオペラビリティへと拡大し、その重要性が増加していくと考えます。また、インターオペラビリティは広範なサービスタイプをサポートするだけではなく、そのQoS(サービス品質)を改善することも重要になっています。高品質で双方向、リアルタイムの音声とビデオの通信では、現状のネットワークでは品質を維持できるのは1オペレータに閉じた環境での実現にとどまっています。今後ITU-Tは、ネットワークオペレータ、ICT分野の専門家、関連標準化機関からの提案を募って、高品質サービスのグローバルなレベルでのインターオペラビリティを可能にするための検討を開始することが重要であると認識されました。
加えて、インターオペラビリティの検討は、IoTのサービス側面の領域を含めたインターオペラビリティへの適用が必要です。IoTプラットフォームはそれぞれのバーティカル業界に応じた分野ごとに開発されることから、ITU-TでのIoT検討では、個別のバーティカル業界では実現できない異なるIoT分野相互間のインターオペラビリティの検討を強化することが重要です。
情報社会でのICTの関わりを拡大するにあたって、新たな概念であるICTインフラにおけるトラスト(Trust)の課題への関心が高まりつつあります。ITU-TのSG13ではTrustに関するコレスポンデンスグループを設立し、技術レポートを作成中です。Trustに関して、まずはユースケースを明らかにし、その分析に基づき、要求条件やアーキテクチャの検討を始めることが重要であると考えています。この検討の中で、ITU-Tは関連機関との連携の強化していくことが重要であると考えられています。
ネットワークの仮想化が進展する中で、仮想化実装にあたり、オープンソースソフトウェアがネットワークにおける重要な役割となってきています。ICTの統合化はNFV(Network Function Virtualization)やSDN(Software Defined Networks)などの革新をもたらし、標準化の社会とオープンソースの社会との協力が必要となっています。ITU-Tはオープンソース社会との関わり方を分析し、NFV、SDN、クラウドコンピューティング、IoT、ビデオ符号化などの分野での協力の可能性を検討することが必要であると認識されました。
IPR(知的財産権)に関するTSB局長アドホック会合が引き続き開催されているが、今後の新たな課題として、既存の3Gシステムで発生した特許問題を繰り返さないために、5Gシステムの標準に対する知的所有権の管理の在り方について議論を行うことと、今後関係が広がるオープンソースソリューションとIPRとの相互関係について検討を開始すること、が望ましい方向であると認識されました。
ITU-TのReview委員会の活動について、私が議長として活動報告を行うとともに、ITU-T組織改革案の一提案であるSSF(Standardization Strategy Function)の実現形態について議論されました。SSFは、ITU-Tの標準化戦略検討にとって必要な技術傾向の分析と市場のニーズ把握を目的とし、CTOメンバーや関連する標準化機関との協調のための戦略会合を企画し、ITU-Tの役割と位置づけをより明確にするための組織改革の提案です。議論では、産業界と市場の要求を反映するためのITU-T構成、関連組織との重複を避けながらよりオープンで戦略的で機敏に対応するための工夫が必要であること、オープンソースソリューションに大きくかかわるであろうSME(Small and Medium-sized Enterprises:中小企業)やベンチャーとの関係強化などを考慮し、メンバー構成としては、ITU-Tメンバー以外を含む体制が望ましいという指摘がされました。
以上、今回のCTO会合でのトピック概要を解説しました。より詳細な内容に関心のある方は、今回の会合結果であるCOMMUNIQUÉをご覧下さい。
CTO会合で示された5G、サービスインターオペラビリティ、トラスト、オープンソースの課題はTTCにとっても新たな課題であり、来年開催されるITU-T総会WTSA(World Telecommunication Standardization Assembly)におけるITU-Tの研究委員会構成と合わせ、標準化検討体制として検討していく予定です。
Goal 1.
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End poverty in all its forms everywhere
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Goal 2.
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End hunger, achieve food security and improved nutrition and promote sustainable agriculture
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Goal 3.
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Ensure healthy lives and promote well-being for all at all ages
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Goal 4.
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Ensure inclusive and equitable quality education and promote lifelong learning opportunities for all
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Goal 5.
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Achieve gender equality and empower all women and girls
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Goal 6.
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Ensure availability and sustainable management of water and sanitation for all
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Goal 7.
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Ensure access to affordable, reliable, sustainable and modern energy for all
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Goal 8.
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Promote sustained, inclusive and sustainable economic growth, full and productive employment and decent work for all
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Goal 9.
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Build resilient infrastructure, promote inclusive and sustainable industrialization and foster innovation
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Goal 10.
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Reduce inequality within and among countries
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Goal 11.
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Make cities and human settlements inclusive, safe, resilient and sustainable
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Goal 12.
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Ensure sustainable consumption and production patterns
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Goal 13.
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Take urgent action to combat climate change and its impacts*
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Goal 14.
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Conserve and sustainably use the oceans, seas and marine resources for sustainable development
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Goal 15.
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Protect, restore and promote sustainable use of terrestrial ecosystems, sustainably manage forests, combat desertification, and halt and reverse land degradation and halt biodiversity loss
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Goal 16.
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Promote peaceful and inclusive societies for sustainable development, provide access to justice for all and build effective, accountable and inclusive institutions at all levels
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Goal 17.
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Strengthen the means of implementation and revitalize the Global Partnership for Sustainable Development
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