マエダブログ

マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

『CEATEC JAPAN 2015』(シーテックジャパン2015)を終えて

 国内における最先端IT・エレクトロニクスの総合展示会である『CEATEC JAPAN 2015』(シーテックジャパン2015)は、10 月7日(水)から10 月10 日(土)までの4日間、「NEXT ― 夢を力に、未来への挑戦」のテーマに幕張メッセにおいて開催され、無事終えることが出来ました。TTCは本年も協賛団体の一社として参加するとともに、HATS PLAZA内にTTC展示ブースを設置し、TTCの標準化活動の紹介を行いました。

 本ブログでは、CEATEC JAPAN 2015やTTC展示ブースの模様の他、と国際会議場で開催されたスペシャルセッション「第5世代移動通信システム国際ワークショップ」について解説します。

 近年、CEATECへの大手企業の出展が減少する中、本年は開催日数を5日間から4日間に縮小して開催されました。CEATEC事務局の発表によると、開催4日間の登録来場者数(リピータを除く)は133,048人でした。昨年の5日間開催での150,912人に比べ総来場者数は減少しましたが、一日当たりの来場者数は10%ほど増加したと考えています。特に、金曜の混雑は昨年以上で、TTCの展示ブースで案内した「IoT/M2M」(Internet of Things/Machine to Machine)に関するイベントのパンフレットは品切れを起こし、展示関係者は対応に追われました。TTC展示コーナーで紹介していました「TTC活動の紹介」のスライドPDFをどうぞご覧ください。

 私が展示会場を回った印象では、「IoT」に関連したセンサーや超小型の電子デバイスや、それらを活用したスマート社会を目指したサービス提案が多くなっていると感じました。また、様々なロボットの展示や「RoBoHoN」という新しい通信形態の提案もあり、これらの会場は盛況でした。さらに、昨年よりベンチャーや中小企業の展示エリアが拡大され、この業界におけるプレイヤーの広がりと変化、その中で新しい技術の息吹が感じられました。

 2015年6月30日に政府が出した世界最先端IT国家創造宣言の改訂版では、我が国の国民一人ひとりがITの恩恵を実感できる世界最高水準のIT国家となるために必要となる政府の取組等を取りまとめています。その中で、(1)IT利活用の深化により未来に向けて成長する社会、(2)ITを利活用したまち・ひと・しごとの活性化による活力ある社会、(3)ITを利活用した安全・安心・豊かさが実感できる社会、(4)ITを利活用した公共サービスがワンストップで受けられる社会を実現するための取組が示されています。このITを支える技術が「IoT」であり、これらの成果が、来年のCEATECで製品やサービスの展示として見られることが期待されます。

 TTCでは、スマートコミュニケーション社会の実現に寄与する標準化活動を推進しており、e-Health、ITS、アクセシビリティなど各業界のイノベーションを支援するため、マルチメディア応用関連課題の検討体制を強化しています。ITU-T の新しい研究委員会SG20の設立に伴う「IoT」課題に対する検討についてもIoT/SC&Cアドホックを立ち上げ、TTCのIoT関連検討体制を強化しています。さらに、関係機関、団体との連携を含め標準化活動を効率よく対応することを目的に、新たにマルチメディア応用専門委員会を開設することとしました。

 近年の移動通信サービスの発展・普及には目覚ましいものがあり、ITU、3GPP等の標準化機関において、2020年頃の導入開始に向け、次の世代の移動通信サービスの検討が開始されており、また、欧州、韓国、中国など諸外国においても種々の団体が設立され検討が行われています。

 昨年、総務省主催の電波政策ビジョン懇談会において、2020年以降の第5世代移動通信システムの導入に向けたロードマップが示され、昨年の9月30日に「第5世代モバイル推進フォーラム」(5GMF)を設立し、産学官が連携して取り組みを推進してきました。この活動では、(一社)電波産業会(ARIB)の2020 and Beyond AdHocの活動成果をベースとして、さらに、有線系・固定系ネットワーク分野において私どものTTCとも連携し5Gモバイルを支えるネットワーク技術や、移動通信サービス利用のアプリケーションについても検討範囲を拡大することを目指しています。

 5GMFの運営については、ARIBとTTCが事務局として支援させていただいておりますが、5Gは、無線技術だけでなく、IoT(Internet of Things)関連技術や、5Gネットワークを支えるモバイルフロントホールやコアバックボーンのネットワーク課題も含め、無線と有線技術が連携したトータルな通信ネットワーク技術に関する検討が必要であり、TTCとしては最新の標準化重点課題として検討を推進しています。

 5Gにおける無線技術以外の課題についてはITU-Tにおいても重要性が認識され、ITU-T SG13の主管の下に、FG-IMT2020を立ち上げ、標準化課題の整理を進めています。TTCとしては、5GMFのネットワーク委員会(委員長:中尾彰宏教授(東京大学))の検討を支援するとともに、TTC 白書や5GMFのネットワーク委員会での検討成果をFG成果物への反映を図るために、「FG IMT-2020対応」アドホック(IMT2020-AH)で検討しています。

 CEATECでの国際会議場において、10月8日の午後には、総務省が主催し、ITUと5GMFが共催して、「第5世代移動通信システム国際ワークショップ2015」を開催しました。昨年に引き続くワークショップで、500名を収容できる会議場は満席で盛況なイベントとなりました。

 ワークショップは、総務省総合通信基盤局長の福岡徹氏と国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)研究委員会担当部長のコリン ラングリー氏のご挨拶で始まり、講演では、第5世代モバイル推進フォーラム会長の吉田進氏(京都大学特任教授・名誉教授)のキーノートスピーカーで始まりました。また、5Gに関する検討の世界の最新動向を共有するために、6名のスピーカーによる講演と、ワークショップの後半では講演者によるパネルディスカッションが行われました。

 ワークショップ講演者は、ITU-R第5研究委員会作業部会D(WP5D)副議長のハカン オルセン氏(エリクソン)、米国4G America会長のクリス ピアソン氏、欧州5GPPP(5G Public-Private Partnership)議長のヴェルナー ムーア氏 (ノキア)、中国IMT-2020プロモーション協会副議長のワン ジキン氏 (中国情報産業部電信研究院)、韓国第5世代フォーラム運営委員会議長のハン ヨンナン教授(韓国科学技術院)、日本5GMF企画委員会委員長の森川博之教授(東京大学)でした。

 パネルディスカッションでは、海外からの5名の講演者に日本から5GMFを代表してとネットワーク委員会から三瓶誠一教授(5GMF技術委員会委員長、大阪大学)と川村龍太郎氏(5GMFネットワーク委員長副委員長、NTT)を加えて、関口和一氏(日本経済新聞社編集委員)をモデレータとしてのパネルディスカッションで終了しました。

 今回のワークショップは昨年に引き続く企画であり、5Gに関する一年間の検討の進展状況を確認できる内容であったと思います。特に、5Gの検討はITUを含んで、関連する標準化機関が連携協調することが重要であること、5Gが目指す技術的な要求条件についての各国、各標準化機関間での意識合わせが出来つつあること、IoTなどのVertical産業との連携とサービス条件の明確化が今後の重要課題であること、などが確認できたと思います。

 次回の「CEATEC JAPAN 2016」は、2016年10月5日(水)から10月8日(土)の4日間、幕張メッセで開催予定とのことです。

 CEATECでのTTC展示コーナーに来場された皆様には、これからのスマートコミュニケーション、IoT技術、5Gモバイルを含む将来のモバイルネットワーキングに関する技術動向の把握と関連する標準化活動にご参画頂けるよう、TTCへの会員加入をご検討いただければと思っています。TTCでは、11月にはIoT/M2Mや5Gモバイル等のホットトピックを紹介するセミナーを計画しており、近々参加申し込みを開始予定です。是非ご参加ください。