マエダブログ

マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

次世代モバイル(IMT-2020)に関するフォーカスグループ設立について

 5月の連休はいかがお過ごしでしたでしょうか?私は、「あしかがフラワーパーク」の大藤を見に行くことが出来ました。ここは2014年にCNNが選んだDream Destinations(世界の夢の旅行先)の9か所の一つに選ばれた人気のスポットです。幸運にも天気に恵まれ、園内は、大藤、白藤、八重黒龍藤などが満開の時期で、藤の甘い香りに包まれていました。香りはお届けできませんが、花の写真を一部紹介させていただきます。

 連休の中、5月2日の深夜、ITU-TのSG13会合が開催されているジュネーブから、将来の重要な情報通信システムと期待される5G(第5世代移動通信システム)に関連するSG13会合のプレナリーの結果速報が届きました。今回のSG13会合は、4月20日~5月1日まで開催され、Future Networks技術の将来モバイルネットワークへの適用と、モバイル網における有線と無線の連携技術についての検討を加速するために、IMT‐2020に関する FG(Focus Group)の設立が議論されました。このFG設立は、韓国やチュニジアから提案され、日本も日本寄書を用意し、重要課題として対処してきました。FGとは、ITU-Tにおいて新規課題を始めるにあたり、勧告策定前の基礎調査や情報収集を行うための時限的な組織体制で、ITUメンバー以外の参加も可能なオープンな審議の機会です。今回のSG13会合では、5G/IMT-2020アドホック(後藤義則氏(NTT)が議長を担当し、審議をリード)を設置して審議を行い、結果として「FG IMT-2020」の設立を承認し、FGの新たなマネジメント体制を決定しました。

 日本においては、5Gは将来の重要な情報通信システムになると考えられており、産学官連携で研究開発、標準化、アプリケーションの検討や方向付けを推進する場として、2014年9月に「第5世代モバイル推進フォーラム」(The Fifth Generation Mobile Communications Promotion Forum(5GMF))が発足しました。オールジャパンでの検討体制が確立し、ARIBとTTCが5GMFの事務局として支援させていただいております。5Gは、無線技術だけでなく、5Gネットワークを支えるモバイルフロントホールやコアバックボーンのネットワーク課題も含め、無線と有線技術が連携したトータルな通信ネットワーク技術に関する検討が必要であり、TTCとしても最新の標準化重点課題として検討を加速させています。

 今回、SG13会合への対処にあたり、日本としては、5Gの早期実現を目指す上で、ITU-Tでの検討におけるFuture Networks技術の将来モバイルネットワークへの適用、有線と無線の連携技術等の検討加速、ITU-R等の他の標準化団体や5Gの推進団体との連携等が必要であると考え、5G関連の検討推進を支持する考えを日本寄書で提案してきました。審議結果は、その提案に沿った合意が得られたことになります。日本提案を審議に反映するために、現地ジュネーブで活躍、尽力された日本団の皆様に対し、心より御礼を申し上げます。

 ITU-Tでの「FG IMT-2020」の設立により、今後の5Gの検討において、ITU-RのWP5DにおけるIMT-2020の検討との連携を強化し、ITU-Tとして貢献できるネットワーク課題を明らかにするとともに、世界各地域で活動している5Gの推進団体と積極的に連携しながらギャップ分析を行い、5Gモバイルを支えるネットワーク技術に関するユースケース、要求条件やアーキテクチャを整理していくことになります。IMT-2020は既存のIMT-2000やIMT-Advancedからのスムーズな移行と発展が重要であり、ITU-Rや3GPPなどとの連携方針を考慮する必要があります。

 新設の「FG IMT-2020」のマネジメント体制としては、議長は、Peter Ashwood-Smith氏 (カナダ:Huawei Canada)、副議長は4名で、Luca Pesando氏(イタリア:Telecom Italia)、今中秀郎氏 (日本:NTT)、Yachen Wang 氏(中国:China Mobile)、Nam-Seok Ko氏 (韓国:ETRI)が選出されました。CJK(中国、日本、韓国)の連携を中心に、欧米の関係者を巻き込んだグローバルな体制が確立できたと評価できるのではないでしょうか。

 FGの活動期間は次回2015年12月のSG13会合までの8か月の予定で、第一回会合はITU-R WP5D会合と並行し、6月10-18日(米国サンティアゴ)で開催の予定ということです。早速、第1回FG会合に向けて、具体的な作業計画、WG構成などの提案や国内の検討体制の整備を進める必要があります。

 今後の国内審議にあたっては、ITU-Tに関する国内審議を担う総務省の情報通信審議会・情報通信技術分科会・ITU部会・電気通信システム委員会、及び、技術的、専門的な審議を行うTTCで対応することになりますが、ARIB、5Gモバイル推進フォーラム(5GMF)等の関係者とも十分に連携して対処方針を検討していく予定です。

 TTCにおいては、昨年度「将来のモバイルネットワーキングに関する検討会(FMN)」アドホックを設立し、ARIBにおける次世代移動通信システムの検討をはじめ、国内外の研究動向、検討動向、および、日本独自のモバイル通信ビジネスの観点から、将来のモバイルネットワークの実現に必要な技術課題を抽出しました。さらに、抽出した課題に対して、国内外の研究機関、標準化団体で検討されている要素技術との関係を整理し、更に、今後の2020年以降の将来モバイルネットワークの方向性に関して考察を行いホワイトペーパーとしてまとめました。ホワイトペーパーのダウンロードは以下から行えます。

arrow067_01.gif将来のモバイルネットワーキングに関する検討会」ホワイトペーパーの公開

4月24日には、「将来のモバイルネットワーキングに関する検討会」アドホックが主催するTTCセミナー「5Gモバイル時代を支えるネットワーク課題とその展望~TTC将来モバイルネットワーキング白書、初公開~」を開催し、100名を超える参加があり成功裏に終了しました。セミナープログラムを表1に示します。 

 表1;セミナープログラム 

時間
講演内容
講演者
15:00~15:15
検討会アドホックの検討のスコープ、将来ネットワークのシナリオ
「FMNアドホック」 サブリーダ 
林 通秋 氏(KDDI株式会社)
15:15~15:50
モバイルコアネットワークの課題と要素技術
「FMNアドホック」 委員 
武智 竜一 氏(富士通株式会社)
15:50~16:25
モバイルバックホール/モバイルフロントホールの課題と要素技術
「FMNアドホック」 委員 
鹿嶋 正幸 氏
(沖電気工業株式会社)
16:25~16:40
網オペレーションの課題と要素技術
「FMNアドホック」 委員 
横田 大輔 氏
(ソフトバンクモバイル株式会社)
16:40~16:55
将来のモバイルネットワーキングに関する考察と提言
「FMNアドホック」 リーダ 
岡川 隆俊 氏
(株式会社NTTドコモ)
16:55~17:00 
閉会挨拶
一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)
前田 洋一 専務理事

 TTCでは、より多くの皆様に議論にご参加いただき、これからの5Gのモバイルネットワーキングの検討を盛り上げていただければと思います。

 TTCへの入会に関心のある方は入会案内をご覧ください。