マエダブログ

マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

平成27年・新年のご挨拶

 新年あけましておめでとうございます。2014年から2015年にバトンが渡されました。(写真は東京タワーの年越しイルミネーションです。)

 本年は干支で「未年」。十干十二支で「乙羊(きのとひつじ)」。年男の私は、同じ干支が廻って来る還暦を迎えることになりました。一つの区切りの年として、今まで多くの方々に支えられて乗り切って来られたビジネスと標準化活動に対して感謝の気持ちを新たにし、新年を迎えたいと思います。

 「未年」にちなんだ謂れを調べてみると、「群れをなす羊は、家族・一族の安泰を示している」と言われるとともに、「[羊]という字は[祥]に通じるので縁起が良い」と言われています。日本がグローバルビジネスにおいて「迷える子羊」とならないように、そして、経済再生の途上にあるICT業界にあって、「仲良く」・「団結」・「安泰」を象徴する存在としての『ヒツジ(羊・未)』に肖れるように精進したいと思います。本ブログを通じて、TTCとしての本年の主要な課題目標を示します。

 TTCは1985年、通信の自由化と電電公社の民営化を機に発足し、今年30周年を迎えます。国内でのマルチキャリア相互接続の実現のための国内標準の制定やITU-Tを中心とするデジュール標準化活動の推進において、TTCの存在意義は見いだされているものの、TTCが発足した当時の組織の狙いと期待は、現時点でのそれらとは異なってきており、TTC会員のTTCの必要性に対する考え方も変わってきています。TTCの位置づけの再確認や取り組むべき課題の取捨選択を行い、TTCの組織としての存続の在り方を見直す時期に来ていると考え、経営改善に向けた取り組みを本格化します。

 標準化エリアが上位レイヤに移り、通信インフラ領域の課題は縮小傾向にあります。今後の標準化対象は、従来のITU、ISO、IECといった棲み分けを越えたところ、いわゆるVertical領域にあり、情報通信だけでは対応できなくなっており、ITU、ISO、IECの従来の業際を跨がる時代となってきています。

 日本には世界に対して圧倒的な存在感を持つ通信関連企業がなくなり、日本の情報通信が世界をリードできない状況なっています。グローバルビジネス戦略に標準化は必須の時代です。TTC会員各社に対し、より即戦的な情報を提供できるようTTCの新たな役割を明確にしなければならないと思っております。国内標準についても、セキュリティ、環境、アクセシビリティ等では、国という枠組みとして最低限守るべき基準の設定が重要であり、国内標準策定の意義は高まっています。さらに、通信サービスを取り巻く環境や技術動向の変化につれ、通信サービスの提供の根幹となる相互接続性、ネットワークサービスの安定運用、品質、安全へのニーズは高まり、引き続き標準化すべき事項は増えることが予想されます。

 TTCは、日本市場でのビジネス展開に有利となる国際標準化の提案だけではなく、会員企業に不利になるような国際標準化を阻止することを含め、グローバルビジネスを有利に展開できるよう、戦略的にアップストリームを行う場を提供していきたいと考えます。また、圧倒的な存在感を持つ企業が少ない状況では、会員会社が団結し、TTCの場を使って意見集約や協調するとともに、各国標準化機関やグローバル企業との連携を視野に入れた大きな標準化戦略を議論することは意義があると思います。戦略的な新規テーマを抽出し、標準化の早期段階から、ユースケースや要求条件などの議論を行う場をTTCは提供していきたいと思います。

 特に本年は、従来のITU-Tを中心としたアップストリームとダウンストリームの標準化課題に加えて、5Gで代表される次世代モバイルネットワーク課題の検討の開始、IoT(Internet of Things)及びM2M(Machine to Machine)で代表される業界横断での連携が必要な標準化課題への取り組みを本格化したいと思います。ICTにより、様々な人、モノ、システムがつながり、安全・安心で便利で、地球に優しく、しかも災害に強く経済的な社会を実現し、スマートエネルギー、スマートモビリティ、緊急時や災害対応、健康・高齢化やアクセシビリティ対応などの課題に貢献していきたいと思います。

 グローバル展開では、新興国で採用される傾向が高いデジュール標準であるITU-Tと結びつきが強いTTCの活動は必要であり、新興国として、BSG専門委員会での東南アジア(フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム等)での経験をベースに、APT(アジア・太平洋電気通信共同体)の中で私が議長を務めるASTAPでの標準活動とグローバル展開との整合を図っていければと思います。また、TTCは、CJK(中国・日本・韓国)やインドの標準化機関、さらに、GSC(Global Standardization Collaboration)を通じた標準化連携の関係を構築しており、これらを活用したグローバル展開を推進していきたいと思います。

 最後に、標準化の推進と普及活動を通じ、我が国の国際競争力の向上を目指しつつ、途上国支援やアクセシビリティの検討による国際社会への貢献ができるよう、本年も最善を尽くして行きたいと思います。一年の活動状況について、引き続き「マエダブログ」を通じてライブでホットな標準化の話題を情報発信して参ります。今一度、皆様方に更なるお力添えをお願いいたしまして、新年のご挨拶とさせて頂きます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。