ICNコンソーシアムの設立イベントに参加
TTC事務室周辺の芝公園の銀杏の木は黄色に色濃く染まり、落ち葉が散りだして歩道も美しく彩られています(写真1、2)。冬が間近に訪れてきているようです。
写真1、2 芝公園の銀杏
12月1日、情報指向ネットワーキング(ICN: Information Centric Networking)コンソーシアムの設立総会とICNコンソーシアム設立記念講演会が、早稲田大学西早稲田キャンパスにおいて開催されました。私は、記念講演会にお招きいただき、お祝いの挨拶をさせていただく機会を得ました。
このICTコンソーシアムは、「コンテンツの効率的配送を目指すICNの取り組みを加速し、国内外で実施されているネットワーク分野の研究とも緊密に連携しつつ、新たなネットワークの実用化に向けた活動を行うため、産官学のメンバーによる多面的な英知を結集し、活発で効果的な研究・開発を行うことを通じてICTの発展に資すること」を目的としています。
ICNコンソーシアムの体制としては、総会の下に運営委員会と技術検討WGがあり、コンソーシアム会長は津田俊隆氏(早稲田大学)(写真3)、副会長は江村克己氏(日本電気)、運営委員会委員長は中里秀則氏(早稲田大学)でスタートします。技術検討WG(ワーキンググループ)には現時点で、WG1(ICNアプリケーション)、WG2(ICNシステム検討とマイグレーション)、WG3(システム実装)、WG4(国際連携と標準化)のグループが構築される予定で、今後、引き続き参加募集とメンバー登録が行われる予定です。ICNコンソーシアムに関する問合せは、直接「ICN@list.waseda.jp」へお尋ねください。
近年、ネットワークが扱うトラヒックは音声、データからビデオを中心とする大容量コンテンツに主役が変わり、モバイルサービスの進展に伴い膨大な数のモバイル端末がネットワークに接続されるようになり、さらに、M2MやIoTの普及によるセンサデータ等の新しいトラヒックの増加が見込まれています。ネットワーク環境が量的側面を中心に発展してきたこれまでの状況とは全く異なる捉え方で、トラヒックを効率的・効果的に扱い、同時に重要な社会インフラとして利用者の期待に応えるため、ビッグデータやコンテンツを意識し、ネットワークサービスには新たなパラダイムが求められています。
TTCでは、従来のネットワークインフラに関する標準化課題に加え、「スマートグリッド」、「ITS」、「M2M」などの標準化への関心が高まっており、「エネルギー」、「交通」、「健康・医療」、「災害救援」、「次世代モバイル」といった業界の垣根を越えた分野での標準化に取り組んでいます。これらは現在アプリケーション寄りの個々の課題として扱われていますが、種々の性質と要件、意味を持ったデータが全体として効率よく流れる、次世代のネットワークインフラを考える上での重要なユースケース、要件とも言えます。
現在のIPネットワークの次の世代のネットワークの実現に向けた活動は世界中で展開されてきており、国連における電気通信の標準化を担当する国際電気通信連合ITU-TのSG13においては、将来網(Future Networks)の検討が精力的に進められており、SG13の課題15(Question 15/13 - Data-aware networking in future networks)では、コンテンツ指向ネットワーキング技術 に関する標準化を扱っております。TTCでは、NGN&FN(Future Networks)専門委員会でSG13に対する対処審議を行っています。
今後の膨大なコンテンツを安全にネットワークで提供する上で、このコンソーシアムが進めるICN技術に関する国際標準化への反映は大変に重要なものになると考えます。
我が国において、ICNによる新たなネットワークの実現に向けた取り組みを加速し、ITU及び米国NDN(Named Data Networking)コンソーシアムなど海外のICN推進団体とも協調しながら世界の動きと調和した活動を展開することは喫緊の課題と認識しています。
現在、国内でのITU-Tへの対応は、総務省情報通信技術審議会の電気通信システム委員会に一元化され、専門的な事前検討についてはTTC等の民間標準化組織で行うことになっております。その意味において、TTCの役割は益々大きくなっていますし、本コンソーシアムとの連携は重要になると認識しております。
本コンソーシアムの成果が、この国際標準化に反映されることを期待するとともに、日本がこの国際標準化での審議を推進することを祈っています。