台湾でのXGPフォーラム定期総会に出席
XGPフォーラム(http://www.xgpforum.com/new_XGP/ja/index.html)は広帯域移動無線アクセスシステム(BWA)の標準化を推進する団体です。XGPとは、eXtended Global Platformの略で、同時に次世代PHS(neXt Generation Phs)とも呼ばれております。
XGPフォーラムは、TDD(*1)方式の狭帯域マイクロセルシステムであるPHSの発展、普及を目的とした組織であるPHS MoUグループを発展的に改組した団体で、PHSを含むTDD関連の通信事業者やメーカが参加しており、また、運用上のTDDシステムの技術、ノウハウを保有しています。 例えばPHSの持つセル設計フリーの仕組みや、高い周波数利用効率などの長所は、世界各国の通信事業者が直面するであろうトラヒック量の急拡大での課題解決の参考になると考えられています。TD-LTE(*2)とも完全互換性のあるブロードバンド・ワイヤレスシステムの実現をXGPのターゲットと位置付けています。
私はXGPフォーラムの議長を2010年10月より拝命しており、このXGPフォーラムの第31回定期総会が、9月17日に台湾北西部の新竹市にあるSheraton Hotelを会場として開催されました。今回の総会には、XGPフォーラムのマネジメントメンバーとして、副議長の一人に新たに就任されたARIBの松井専務理事と一緒に対応しました。
同会場では、TD-LTE技術のグローバル化を推進するGTI (Global TD-LTE Initiative) 、中国移動(China Mobile)、台湾の工業技術研究院(ITRI:Industrial Technology Research Institute)の主催により、9月16日から18日に、「Mobile Broadband Development Summit」のイベントが併催され、XGPフォーラム総会に参加メンバーはこのイベントにも参加することが出来ました。
XGPフォーラムはこのSummitイベントの共催の一組織として参加しました。イベント会場は約500名を収容できる規模で、台湾だけでなく中国本土からの参加者も多く、大変盛況なイベントで驚きました。私は、9月16日開催のSummit開会式典で、XGPフォーラム議長として、フォーラムの活動状況を報告する招待講演の機会を与えられました。
このSummitは、「LTE TDDとLTE FDD(*3)との融合的発展」をテーマとして、中国と台湾の政府、規制当局、通信事業者、研究機関、産業界の多数の専門家による講演で構成されました。また、海外からは、我々XGPフォーラムの他、WiMAXフォーラム、ソフトバンク、Sprint、エリクソン、ノキアなどの代表者による講演が行われました。イベントの背景としては、LTEにおいて、中国がすでに大規模商用しているTDD方式を推進していきたいという中国政府の政策方針が大きく影響しているように感じました。中国では、TD-LTEの開発は大変活発で、実証実験などを通じて、その技術の成熟度がアピールされていました。TD-LTEへの日本国内での関心はまだあまり高くないようですが、将来のIoT/M2M(Internet of Thing/Machine to Machine)における廉価なアクセスシステムとしての期待も大きく、今後のTD-LTEの動向には注目が必要と思います。
9月17日開催のXGPフォーラムの定期総会では、決議案審議の前に、TD-LTEの推進に関心のある中国と台湾からの代表による基調講演を持つことができ、GTI事務局長のHuang Yuhong女史、TDIA(Telecommunication Development Industry Alliance)副事務局長のJin Yidun氏、ITRI技術部長のChing-Tarng Hsieh氏、FITEL(大衆電信)CTOのJames Lin氏の挨拶と講演が行われました。
定期総会の決議案審議では、2社の新規会員の加入承認、昨年度の活動報告と会計報告の承認、次年度の活動計画と予算案の承認が主課題であり、いずれの決議案も無事の承認が得られました。
今後の中国や台湾のLTE導入開発の動向を把握する上で、このフォーラム総会を通じて得た交流チャネルを大切にしていきたいと考えます。
台湾新竹の気候は、昼間の気温は38℃を超え、湿度も70%以上と高く、秋風を感じる日本の気候が懐かしく思います。また、新竹は台湾のシリコンバレーと呼ばれ、IT関連の研究機関や企業が多いようですが、観光客にはあまり馴染みのない地域で、会合期間中の食事はホテルのレストランで済ますこととなり、結局ホテルから外出することは諦めました。
会合後の9月18日には、帰国のために台北松山空港に近い台北市内に移動し、XGPフォーラムの会員でもあるFITEL(大衆電信)社幹部を表敬訪問するために、新竹から台北に移動しました。台北市内はお店も多く、色々なところに日本人観光客の姿を見ることが出来ました。台北でやっとホテル外の食事にありつけ、台湾で有名な小籠包を昼食に、火鍋(いわゆるしゃぶしゃぶ鍋。写真左はオシドリ鍋とよび、鍋を二つに仕切り二食の味が楽しめる)を夕食で味わうことが出来ました。
(*1) TDD: Time Division Duplex
双方向の無線通信を実現するため、端末と基地局の上りと下りの通信に同じ周波数を使用し、周波数帯域を効率的に使う方法。
(*2) TD-LTE: Time Division duplex Long Term Evolution。LTEと時分割により単一の周波数での同時送受信を実現するTDD(時分割複信)を組み合わせたもの。
(*3) FDD: Frequency Division Duplex
周波数帯域を上り方向(送信用)と下り方向(受信用)の2つに分割して利用することで、双方向での同時通信を可能にする方法。