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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

インドネシアでの「ICTセンタ開所式」に参加

 8月21日より24日まで、SHARE【注1】関連の会合に参加するために、マレーシアとインドネシアに出張しました。今回のブログでは、その中で、8月24日(土曜)の午後にインドネシアのタナダタール県で開催された「ICTセンタ」の引渡し開所式の模様を報告します。

 アジア地域での標準化展開戦略としては、今年6月に示された総務省のスマート・ジャパンICT戦略の中で、ICTの国際競争力強化と国際展開を通じた国際貢献が戦略として示され、ASEAN各国での日本発のグローバル展開モデルの構築が謳われています。TTCでは、標準の普及推進を目的に、2007年よりアジア地域の5か国と連携してAPTプロジェクトに参画し、インドネシア、フィリピン、マレーシアの3カ国で、ルーラルエリア(過疎地域)における医療、教育、農水産業、環境などの社会的課題をICTにより解決するICTソリューションのパイロットプロジェクトを実施してきました。これらの活動概要はマエダブログ2013年12月20日号で紹介しております。

 これらのパイロットプロジェクトを通して、ルーラルエリアでのソリューションへのニーズや有用性を把握し、その成果をAPTの ASTAP (APT Standardization Program Forum) やADF (Asia Pacific Telecommunication and ICT Development Forum) の場に展開する活動を進めています。TTCでは2013年6月に、普及推進委員会の体制を見直し、新たに標準化格差是正(BSG)専門委員会を設立し、今までのノウハウを継承するとともに、ASTAPやITU-Tを通じた新たな標準化と国際連携について検討しています。

 今回のタナダタール県の「ICTセンタ」開所式では、日本からは、「SHARE」の提言者であり、現在TTC顧問である井上友二様をはじめ、BSG専門委員会からTTC事務局とBSG専門委員会会員の沖電気、三菱電機、NEC、NTTの4社と、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、ベトナムのアジア5カ国のSHARE会合メンバーが参加しました。

 タナダタール県は、インドネシアの西サラワク州にあり、パダン空港からクルマで2時間半ほどの山の中にあります。ジャングルの山の中に、棚田を利用した農地が整備されています。棚田にお米の実る田園風景は日本人には親しみやすい景色です。

写真1 棚田風景
写真1 棚田風景
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写真2 開所式で子供たちに慕われるシャデック知事

 TTCとインドネシア情報通信省(KOMINFO RI.)との間の「ICTセンタを通じた情報通信技術における人材育成のための覚書」に基づくもので、TTCからはBSG専門委員会の4社(沖電気、三菱電機、NEC、NTT)の支援により、ICTセンタの施設構築を実現しました。TTCとタナダタール県とは、2008年からのEヘルスに関するAPTプロジェクトでの連携の実績があり、タナダタール県知事のシャディック(Shadiq Pasadigoe)氏は当初からこのプロジェクトに高い関心を示されてきました。今回のインドネシア政府との覚書に基づくICTセンタ構築

にあたっては、タナダタール県の建物の一部を改装して、GE-PONを適用した光LANによるインフラも構築しました。

 ICTセンタは以下の機能を提供するものとして運営します。

  • Training for Student
  • Technical Transfer & Support (Solution Service, Hard & Software)
  • Tele knowledge center (Data Center & Management)

(T3 センターと呼んでいます)

 ICTセンタへは、これまでに各国で実施したICTソリューションを移植するとともに、KOMINFO RI.とタナダタール県が連携してインドネシアにおける情報通信技術に関する人材育成に活用し、自らICTソリューションの運用・保守ができるようになることを目的として運用される予定です。光LANインフラの上に種々のアプリケーションを実装し、SHAREメンバー各国とのAPTプロジェクトでの経験とノウハウを共有できるプラットフォームとして発展させていくことを期待しています。

写真3 オープニング式典での井上顧問挨拶
写真3 オープニング式典での井上顧問挨拶
 写真5 開所式場の歓迎垂れ幕
写真5 開所式場の歓迎垂れ幕
 写真4 オープニング式典歓迎式
写真4 オープニング式典歓迎式
 写真6 式典会場模様
写真6 式典会場模様

 今回の「ICTセンタ」引渡し開所式では、TTCとSHAREメンバーを代表して、井上顧問にご挨拶を頂き、インドネシア側からはKOMINFOのワリヤント氏とタナダタール県知事のシャディック氏の祝辞がありました。開所式会場では、TTC一行を歓迎する音楽隊の出迎えがあり、日本語の垂れ幕が用意され、TTCの貢献を高く評価していただきました。また、より多くの地元の人に「ICTセンタ」を活用してもらうように、インドネシア側からは学生を含め400名近い人々が招待され、盛大に開催されました。式典の最後には「ICTセンタ」の引渡しのための署名式が行われ、前田が署名を行いました。

 開所式典の終了後、現地の「ICTセンタ」の見学案内が行われました。写真7はICTセンタの外観、写真8はパソコン端末16台が設置されたトレーニングルーム、写真9はICTセンタでトレーニングを受ける生徒との記念写真です。ICTセンタの視察終了後は、知事の計らいで、現地の観光施設を案内していただきました。写真10は2007年に火災にあい昨年再建されたPagaruyung宮殿、写真11は田んぼの中で疾走する牛の手綱さばき競うPacu Jawi(牛レース)の模様です。牛レースはタナダタール県だけに残っている伝統的な行事で8月の土曜日に開催されており、幸運にも開催日に出会うことが出来ました。

 写真7 ICTセンタの建物外観
写真7 ICTセンタの建物外観
写真9 ICTセンタの生徒と一緒に記念撮影
写真9 ICTセンタの生徒と一緒に記念撮影
写真8 トレーニングルーム
写真8 トレーニングルーム
 写真10 Pagaruyung宮殿
写真10 Pagaruyung宮殿
写真11 タナダタール名物牛祭り
写真11 タナダタール名物牛祭り

 今回の「ICTセンタ」の設立は、6年に亘るTTCでの普及推進活動を総括すると共に、今後の新たな活動方針を議論する機会となると考えます。SHAREの各国の代表者からは、「ICTセンタ」を通じて、各国のプロジェクトでのノウハウや経験を共有するとともに、各地域で抱えている問題を解決する場となることを期待していることと、日本企業への今後の一層の支援への期待が表明されました。今後、各国のこれまでの成果をどのようにアジアの他国に水平展開していくかについて引き続き議論していきたいと考えています。

 BSG専門委員会では、アジア各国の主要メンバーと連携しながら社会的課題をICTにより解決するICTソリューションを推進し、新興国に特化した利用条件の標準化への反映を検討する活動を行っています。BSG専門委員会にご関心のある方は是非TTCのホームページをご覧ください。

【注1】TTCでは、標準の普及推進を目的に、アジア地域の5か国との連携を通じ、ICTの発展とアジア地域発の標準化に寄与するための活動を推進しています。2007年に、TTCに普及推進委員会を新設し、そのスローガンとして”SHARE” (Success & Happiness by Activating Regional Economy)を提言し、アジア各国と連携し各国のルーラルエリアでの情報格差解消、いわゆるBridging the Standardization Gaps(BSG)に向けたICTを利活用したソリューションの普及推進を推進してきました。