第18回GSC(Global Standards Collaboration)会合に参加して
2014年7月22日と 23日に、ETSI本部のある南フランスのソフィア・アンティポリスにて、第18回GSC(Global Standards Collaboration)会合が、ETSIのホストにより開催されました。GSCは世界の主要な標準化機関 (SDOs : Standards Development Organizations) の代表者(HoD:Head of Delegation)が一堂に集まり、ICTに関する標準化活動についての情報交換を行うとともに、各SDOでの検討の重複を避け、グローバルな標準化を促進するためのSDO間の協調と連携の戦略を検討するための集まりです。各SDOのHoDが直接顔を合わせ、いつでも情報交換できる関係を構築することも重要な狙いとしています。今会合にはGSCメンバー組織から65名、ゲスト組織として9組織から12名が代表として参加しました。TTCからは前田がHoDで、総計5名がTTCを代表して参加しました。今会合の結果報告は、TTCレポートやTTCの関連する専門委員会とアドバイザリーグループ会合で行う予定ですが、本ブログではHoD会合の内容を中心にご報告します。
今会合の準備にあたっては、月一回の頻度でHoD電話会議を行い、運営企画を検討してきました。会合前日の21日の夜と最終日の23日の昼にはHoD会合を開催し、GSC会合の最終準備状況と今後の開催方針を議論しました。HoD会合の合意事項として、GSC-18会合からIEEE-SA (IEEE Standards Association)を正式メンバーとして承認しHoD会合に含めるとともに、今会合でインド政府代表から報告のあった「TSDSI(Telecommunications Standard Development Society, India:マエダブログ2013年11月11日号参考)をインドの電気通信における標準化機関として承認する」との声明とTSDSIからのGSCメンバーへの加入要請に基づき、TSDSIをGSCの正式メンバーとして承認することとしました。今会合からの新規メンバーの加入により、GSCは以下の11標準化組織が正式メンバーとなり、グローバル標準化を促進するための連携の輪が拡大しました。
組織名
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URL
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ARIB (Association of Radio Industries and Businesses)
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ATIS (Alliance for Telecommunications Industry Solutions)
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CCSA (The China Communications Standards Association)
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ETSI (European Telecommunications Standards Institute)
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IEEE-SA (IEEE Standards Association)
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ISACC (ICT Standards Advisory Council of Canada)
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ITU (International Telecommunication Union)
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TIA (Telecommunications Industry Association)
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TSDSI (Telecommunications Standards Development Society, India)
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TTA (Telecommunications Technology Association)
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TTC (The Telecommunications Technology Committee)
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また、GSCメンバー以外に、今会合ではゲスト組織として、GISFI (Global ICT Standardization Forum for India)、GM (General Motors)、HGI (Home Gateway Initiative)、ISO (International Organization for Standardization)、ISO/IEC JTC1、OMA (Open Mobile Alliance)、PCHA (Personal Connected Health Alliance (Continua))、TCCA (TETRA and Critical Communications Association)、W3C (World Wide Web Consortium)の標準化組織の代表が参加しました。
写真1はETSIオフィス玄関、写真2はGSC会合が開催された会議場で、ETSIの総会が開催できる会場で、240人を収容できる会議設備を有しています。
今までのGSC会合では、HIS(High Interest Subject)と呼ぶ重要課題として、ICTと環境、スマートグリッド、M2M(Machine-to- Machine)通信、クラウドサービス、緊急通信、ITS(Intelligent Transport System)、サイバーセキュリティなど、20近い重要課題について、それぞれのGSCメンバーが活動報告を行い、議論の結果はResolution(決議)としてまとめてきました。しかし、情報交換を中心とする会合形式からさらにグローバル標準化に向けた課題の抽出と標準化における協力や連携に向けた戦略議論を促進させるために、今回のGSC会合では、HISの中から、GSCメンバーの関心の高い3つだけのテーマに焦点を当てて、外部からの関連する専門家やSDOの代表を含む3つのセッションで構成することとしました。
テーマとしては、業界を跨るICT活用とVerticalとの連携の観点からM2M/IoT(Internet of Things)、 技術革新の観点からSDN(Software Defined Networking)/NFV(Network Function Virtualization)、社会公共性の観点から災害対応のCritical Communication(緊急通信)、の3つを選択しました。 どのSDOにとっても、グローバル標準化の重要性は今後の貿易、ビジネス競争、ユーザの取り込み、相互接続の実現などの観点で益々高まっています。GSCメンバーだけではなく、課題毎に関連の深いSDOをゲストとして招くことで、タイムリーな課題をグローバルな視点で議論することができるようにしました。
(1)M2M/IoT
M2M/IoTはGSCメンバーの7組織が構成するoneM2Mの成果をグローバル標準に反映する上でも最重要課題の一つです。M2M/IoTは何十億台ものデバイスの相互接続とそれらが生み出すビッグデータの扱いが課題となり、さらにM2M/IoTを活用する様々なVerticalとの連携も大きな課題です。今回のGSCでは、oneM2MとITU-TやIEEEとの連携の必要性が認識されました。特に、M2Mのフレームワークアーキテクチャについては、検討が先行するoneM2MとIEEEが新設したP2413(Standard for an Architectural Framework for the IoT)との連携の仕方を検討する必要が認識されました。また、Verticalとの関連では、モバイル業者から見た視点でのOMA、ヘルスケア分野でのPCHA/Continua、ITS分野でのGM、スマートホーム分野でのHGIなどから標準化への期待が述べられ、交流が図れた点は意義がありました。
(2)SDN/NFV
NFVとSDNはネットワークオペレータにとって、柔軟な新しいサービスを迅速に、より効率的に提供できるようにしてくれるものと期待されています。今回のGSC会合では、NFVとSDNの相互関係について、多くの産業界の専門家との意見交換を行い、アーキテクチャ的なフレームワーク、ユースケース、などの最新情報を共有し、今後の標準化課題の抽出を行いました。TTCからは中尾彰東大教授に参加、講演をいただきました。中尾教授の提案のDeep (Data Plane) ProgrammabilityやProgramming Model などについて、中国のCCSA、韓国のTTA、IEEEなどが関心を示し、今後の課題としての共鳴を得ることが出来ました。SDNについては、9月2日にTTCでCJKワークショップを計画しており、韓国のTTA、中国のCCSAとより深い議論を行う予定です。
(3)Critical communication
Critical communicationとは、公共的安全サービスのための通信システムや大規模警報通知システム、緊急通信システムや災害救済のための通信システムなどを含んだものです。3年前のGSC-16において、日本の東日本大震災を踏まえ、災害防護と救援におけるICTシステムの重要性を再認識し、災害を考慮した標準化の推進やネットワークインフラの耐性確保のための検討を行う「緊急通信タスクフォース」を設立しました。今までに技術レポートを作成し活発に活動を進めてきましたが、今後もこのタスクフォースについては継続することを決定しました。セッションでは、ITU-Tの災害対応のフォーカスグループの活動報告の他、北米、アジア、欧州での緊急通信に関する経験と検討状況が報告され、標準による地球規模の調和により、様々な困難を軽減し、緊急通信サービスの向上を図ることが重要であるという共通認識を確認できました。
今回のGSC-18会合の資料は、TTCの関連専門委員会やアドバイザリーグループの会合に展開する予定ですが、全ての会合文書はhttp://www.etsi.org/gsc-18/documents、または、http://docbox.etsi.org/Workshop/GSC18/でご覧いただけるとともに、過去の資料を含めて、ITU-Tのサイトのhttp://www.itu.int/en/ITU-T/gsc/Pages/meetings.aspxでご覧いただけます。ご不明な点についてはTTC事務局にお問い合わせください。
次回のGSC-19会合は、ITU本部のジュネーブ(スイス)で、2015年7月頃に開催する方向で調整の予定で、今後のHoD電話会議で決定する予定です。
最後に、南フランスの風景をお届けします。ニース空港からソフィア・アンティポリスへの移動の途中に撮影したニース市内の公園(写真3)と街の一角で見つけた花の風景(写真4)です。
また、21日の夜にカンヌのマリオットホテルで開催されたHoD会合後に、夜10時からのカンヌ湾(写真5)での花火を偶然見ることが出来ました。この花火大会はFestival d’art pyrotechnique de Cannesと呼ばれ、世界各地から7つ有名花火業者が参加するコンクール形式で競うようで、この日はスペインの花火業者のパフォーマンスでした。このイベントには日本の花火業者は参加していないようで少し残念でした。