ITU-T SG16会合(札幌開催)始まる
ITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector:国際電気通信連合電気通信標準化部門)のSG16会合(Study Group 16)が6月30日から7月11日まで、札幌コンベンションセンター(北海道札幌市白石区東札幌)で開催されています。今回のブログでは、会合前半のイベント情報を含めた速報をお届けします。
SG16は、マルチメディア分野の標準化に関する検討を行っている研究委員会(Study Group)で、画像・音声符号化だけでなく、IPTV、デジタルサイネージ、モノのインターネット(IoT)、医療の情報化(e-health)、高度道路交通システム(ITS)、アクセシビリティ等幅広くマルチメディア課題に関する検討を行っています。SG16の議長は三菱電機(株)の内藤悠史氏が務められており、2008年から担当され、2016年までの任期です。SG16全体会合の日本での開催は初めてで、総務省のホストにより、日本開催支援委員会に参加する各社のスポンサーシップにより日本開催が実現しました。TTCは会合運営の協力社(partnership)として参加しております。
写真はSG16オープニングプレナリーで議事を行う内藤議長、カウンセラのCampos氏、来賓の総務省武井大臣官房総括審議官です。
今回のSG16会合に加えて、SG16とISO/IEC JTC1/SC29/WG11との連携を強化するための以下の合同会合が併催されます。
- JCT-VC(Joint Collaboration Team on Video Coding)とJCT-3V(3D Video Coding Extension Development)
- IPTVに関する標準化連携のためのIPTV-GSI(Global Standardization Initiatives)とJCA(Joint Coordination Activity)-IPTV
- アクセシビリティに関するIRG(Intersector Rapporteur Group??)-AVA(Audiovisual Media Accessibility)
- ITSに関するCITS(Collaboration on ITS)
なお、ISO/IEC JTC1/SC29/WG11とは、ITUと同じグローバルなデジュール標準化機関である国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)の第一合同技術委員会(Joint Technical Committee 1)で、そのSubcommittee(SC)29は、音声や画像の符号化方式の標準化を検討する副委員会であり、Working Group(WG)11は画像符号化(MPEG)方式を担当しており、SG16とは良好な連携関係にあります。
また、今回のSG16会合開催に合わせて、日本の開催企画として、以下のイベントが同会場で開催されました。
【1】マルチメディア技術ワークショップ(7月1日午後開催):
IPTVや映像符号化方式等、SG16会合に関連性の深いテーマでの技術講演会で、表1のプログラムで構成しました。
プログラムの技術講演全体をTTCのマルチメディアアドバイザリーグループが協賛し、そのうちセッション1(技術セッションの講演1~講演4)をTTCのIPTV専門委員会が協賛しました。
表1:マルチメディア技術ワークショッププログラム
基調講演
13:15-13:30
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開会挨拶
内藤 悠史 SG16議長、
総務省 情報通信国際戦略局 通信規格課 松井 俊弘 課長、
TTC 前田 洋一 専務理事
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13:30-13:45
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NTT サービスイノベーション総合研究所
藤田 敏昭 所長 |
13:45-14:00
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NICT 富田 二三彦 理事
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14:00-14:15
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三菱電機 田中 健一 役員技監
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技術講演 特別セッション
14:15-14:45
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【招待講演】Beyond the content distribution, and its technology
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室蘭工業大学
岸上 順一 教授 |
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技術セッション
14:55-15:10
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H.265/HEVC Encoder for UHDTV
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NTTメディアインテリジェンス研究所
画像メディアプロジェクト 池田 充郎 氏 |
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15:10-15:25
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8K-UHDTV H.265/HEVC Real-time Encoder
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NHK技研 テレビ方式研究部
市ヶ谷 敦郎 氏 |
15:25-15:40
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ITU-T standards based IPTV solutions and the global testbed
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OKI 通信システム事業本部
キャリアシステム事業部 山本 秀樹 氏 |
15:40-15:55
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ITU-T Standards for Multimedia Application Platforms
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三菱電機 開発業務部
松原 雅美 氏 |
15:55-16:10
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To Create a World Without Communication Barriers
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NICT 音声コミュニケーション研究室室長
堀 智織 氏 |
16:10-16:25
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An advanced traffic management solution for big-data circumstances
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日立製作所
櫻井 義人 氏 |
【2】聴覚障害者の完全なコミュニケーションに関するワークショップ(International Workshop on Total Conversation for the Deaf and the Hard of Hearing)(7月2日午後開催):
このワークショップはSG16におけるアクセシビリティに関する専門家を集め、公益財団法人日本財団の主催で、ITU-Tの後援、一般財団法人全日本ろうあ連盟と一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、特定非営利活動法人CS 障害者放送統一機構の協力により実現しました。
表2のプログラムにて、聴覚障害者のリレーサービスなどのアクセシビリティについて、日本と世界の状況の報告や提言などの意見交換を行いました。リレーサービスとは、耳が聞こえないあるいは言葉が不自由などの理由で電話コミュニケーションが困難な利用者のためにオペレーターが介在してリアルタイムで双方向の会話をつなぐサービスで、文字リレー、電話リレー、ビデオリレーなどを含め健聴者用電話サービスのように利用できるようにするためには、国際標準化する必要があります。
TTCからは、緊急通報アクセシビリティワーキングパーティが検討している「緊急通報アクセシビリティシステム」の紹介を加納リーダーに行っていただきました。
また、SG16のアクセシビリティを扱う課題26の会合においては、緊急通報アクセシビリティシステムの提案を新課題として検討することが合意されました。また、障害者向けのリレーサービスの検討の重要性が認識されました。なお、アクセシビリティおよびリレーサービスについては2013年11月25日号のマエダブログも参考にしていただければと思います。
表2:聴覚障害者の完全なコミュニケーションに関するワークショップ
開会挨拶
開会挨拶
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ITU JCA-AHF 共同議長
Andrea Saks 氏 |
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基調報告
ITU-T F.790 勧告と電話リレーサービス
などの電話を利用するための仲介サービ
ス等の国際動向
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ITU JCA-AHF 共同議長
Christopher Jones 氏 |
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講 演
1.「緊急通報アクセシビリティシステムの構築」
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一般社団法人情報通信技術委員会 緊急通報アクセシビリティWP リーダー 早稲田大学 名誉教授
加納貞彦 氏 |
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2.「クローバルな手話辞典・データベースの構築」
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一般社団法人情報通信技術委員会
H25年度標準化ニーズ作業部会 大木洵人 氏 |
3.「タイにおけるリレーサービスについて」
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タイ(NECTEC)
Wantanee Phantachat 氏 |
4.「日本のアクセシビリティの現状と展望」
-ろう者の視点から- |
全日本ろうあ連盟 理事長
石野富志三郎 氏 |
5.「日本のアクセシビリティの現状と展望」
-中途失聴・難聴者の視点から- |
全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 理事長
高岡正 氏 |
6.「ITU-T への電話リレーに関する要望」
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日本財団 国際協力グループ グループ長
公益ボランティア支援グループ長(兼) 石井靖乃 氏 |
【3】マルチメディア技術の最先端展示会(7月1日~7月4日):
8K超高精細テレビ用H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)システム、8Kモニターをはじめ、マルチメディア分野における研究成果や取組を紹介する製品・サービス等を展示しました。展示一覧を表3に示します。
表3.マルチメディア技術の最先端展示会展示一覧
総務省
(協力:NHK、NICT、シャープ) |
85インチモニターによる8K動画のデモ
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NICT
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①言語の壁の無い世界を創る (U-STAR)
②聴覚障がい者と健聴者のコミュニケーション支援アプリ「こえとら」 |
NICT
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簡単3Dフォーマット(大域ビューと奥行)
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三菱電機
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ITU-T標準に準拠したIPTV端末装置
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三菱電機
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10G-EPON ネットワークアクセスを用いた高速通信サービス
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NTT
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多視点映像とデプスマップを用いた自由視点テレビ
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NTT
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MMT FECを用いた高信頼4K H.265/HEVC リアルタイム伝送
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富士通研究所
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映像電子透かし技術のアプリケーション応用
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NHK
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8K-UHDTV用H.265/HEVCリアルタイムエンコーダ
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沖電気工業
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ITU-T標準準拠IPTVソリューション
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3Dragons
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裸眼全周囲3Dディスプレイ「ホロデッキ」
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7月1日夕方には、総務省の上川陽子副大臣をお招きして、展示会の紹介を行うとともに、今回の日本会合の成功を祈念したレセプションが開催されました。
今回のSG16会合及び併催される関連会合で扱う技術課題に対し、TTCでは、映像及び音声符号化課題についてはメディア符号化専門委員会、IPTV課題についてはIPTV専門委員会、また、アクセシビリティなどの様々なサービス課題についてはマルチメディアアドバイザリーグループ、ITSに関してはスマートカーワーキングパーティで対処を検討してきており、今後、各課題の会合結果について報告、議論することになっています。
アクセシビリティやITS等の課題は従来の情報通信の業界に閉じない標準化課題であり、より多くの皆様に議論にご参加いただき、これからのスマート社会の構築に向けた検討を盛り上げていただければと思います。