第13回CJK標準化会合(韓国・釜山)での新たな一歩
CJK標準化会合(CJK IT Standards Meeting、以下CJK会合)の第13回会合が4月14日から17日に韓国の釜山でTTAのホストで開催されました。私はTTC代表HoD(Head of Delegation)として参加しました。
今回CJK会合が開催された釜山(プサン)は、対馬海峡に面し、韓国の南東部に位置する首都ソウルに続く第二の都市で、港湾規模においては韓国第一の港町です。会合会場は、ビーチがきれいな海雲台海岸にあるParadiseホテルで、海岸に面した風光明媚な場所であり、新鮮な海の幸にも恵まれていました。また、ギネスワールドレコードに世界最大の百貨店として登録された新世界セントムシティがあり、大変活気のあるところでした。
CJK会合は、中国、日本、韓国の3カ国の情報通信産業の成長と発展のための情報交換に関するMoU(Memorandum of Understanding:覚書)に基づく、情報通信の標準化分野における協調会合です。CJK会合は、2002年6月から、中国、日本、韓国の情報通信分野の標準化機関 (SDOs : Standards Development Organizations) が各国の窓口となり(中国はCCSA、日本はARIBとTTC、韓国はTTA)、それぞれの組織のHoDが中心となって標準化方針を議論するとともに、重要課題についての専門家を交え、およそ年一回のペースで、3カ国で 順番にホストを持ち回りで開催しています。2002年6月に韓国で第1回会合を開催し、今回が13回目となりました。CJK会合の経緯などを理解いただくために、過去のマエダブログから第11回CJK会合と第12回CJK会合の報告を参考にしていただければと思います。
今回のCJK会合の参加者は、ホストの韓国TTAから54名、中国CCSAから23名、日本はARIBの15名とTTCの14名で、総数は100名超えました。TTAのHoDはTTA会長のChasik LEEM氏、会議運営はTTA次長のKyuJin WEE氏が総合議長を担当しました。なお、LEEM氏は2013年11月にTTA会長に就任され、HoDとして初参加で、HoD間での親交を深めることができました。CJK会合は、複雑な政治状況の中で、標準化を通じて、専門家であり友人として、日中韓で意見交換ができる貴重な国際連携の枠組みであると考えており、今後も継続していくことをHoD会合にて再確認しました。
第12回CJK会合以降、月一回のペースでHoD間での電子会議(CJK HoDアドホック会合)を開催し、CJK間の情報交換とCJK会合の発展のための改革案を議論してきました。一年間の議論を踏まえ、今回の主要な会合成果としては、今までの標準化に関する情報交換と国際標準化活動における協調連携に加え、3ヵ国のSDO間でそれぞれの国内標準や国際標準を共同採用することを検討する新しい関係を合意したことです。その標準共同採用に関する条項をMoUに追加するために、2002年11月のMoU締結以来、初めてのMoU改訂を行いました。標準仕様を共同採用することで、標準に関わる市場の拡大と各SDOにおける標準作成の効率化を図ることが期待されます。12年を超えるCJK会合は主に情報交換の場として活用されてきましたが、今後はこの連携関係をより強化することを目指していく予定です。
個別の技術課題については、各々作業部会(WG:Working Group)で議論されました。詳細結果は今後TTCレポートなどで報告される予定ですが、以下が主な結果です。
(1)IMT-WGにおけるVoLTE検討アドホックの設置: 日本では、IMT(International Mobile Telecommunication:次世代移動通信システム)移動通信システムはARIBの担当課題ですが、その網間接続インタフェースなどのネットワーキング課題はTTCの信号制御専門委員会で検討されている課題であり、「IMT WGの中に、音声通話をLTEのパケット網上で実現するための技術であるVoLTE(Voice over LTE)【解説】での網間相互接続に関する標準化課題を検討することを合意しました。
(2)IoT-WGの新設: UNIOT(Ubiquitous Networking in support of Internet of Things)WGを発展的に解消し、3カ国で特に関心の高いIoT、SDN(Software Defined Networking)、Smart City分野に絞った標準化連携を強化するためのIoT-WG(Internet of Things including SDN and Smart City WG)を設立することを合意しました。TTCではNGN&FN専門委員会を中心に対応していく予定です。IoT-WG会合とSDNワークショップについて8月または9月にTTCで開催する計画を合意しました。また、TTCから提案の適合性及び相互運用性試験に関する検討についても扱うことを合意しました。
(3)IS-WGにおけるセキュリティ課題の連携: 前回CJK会合で新設されたIS-WG(Information Security WG)はITU-T SG17会合における協調連携を図ることを狙いとして、情報セキュリティ問題を扱います。次回のWG会合を8月5日~6日にTTCで開催することを合意しました。TTCではセキュリティ専門委員会を中心に対応していく予定です。
(4)WPT-WGのテクニカルレポート承認: WPT(Wireless Power Transmission:無線電力伝送)の課題は日本ではARIB の担当ですが、1年間検討を進めてきたテクニカルレポート第二版を完成し承認しました。このレポートはITU-R SG1 WP1A会合にCJKの共同提案の情報として活用される予定です。
次回の第14回CJK会合は、日本の当番で、ARIBとTTC共同でホストする予定で、2015年4月21日~23日に札幌で開催する予定です。
VoLTEとは、新世代の移動通信規格であるLTE上での音声通話を実現する技術です。LTEでは、音声通話機能のための回線交換網がなく、全てのデータ通信をパケット網を使って処理しており、音声通話をする場合は、自動的に3Gネットワークに切り替えて、従来の回線交換網を経由して実現しています。VoLTEは、音声通話をインターネット上で音声を扱う「VoIP」技術をLTEネットワーク上で実現するもので、デジタル化された音声データを直接LTEのオールIP化したIPマルチメディアサブシステム(IP Multimedia Subsystem、IMS)で実現することを可能とするものです。