TTCセミナー「FTTHを支える敷設・保守・運用技術の最前線」 開催される
先週は記録的な大雪で大変な思いをされた方も多いかと思いますが、2月19日は、空から降る雪も雨に変わり、雪が解け始める季節を意味する二十四節季での「雨水」と呼ばれる日です。この時節から寒さも峠を越え、春の足音が聞こえ始めることを祈っています。
さて、今回のブログは、2月18日に開催されたTTCセミナー「FTTHを支える敷設・保守・運用技術の最前線」の内容を紹介します。
このセミナーは光ファイバ伝送専門委員会が中心となって企画されたものです。図1の日本におけるブロードバンド加入者数の動向に示しますように、日本は、2013年9月末までの総務省の統計報告では、約4200万の固定系ブロードバンド加入者の60%の2460万がFTTHの加入者で、世界で最も光化が進んでいる国の一つです。日本のFTTH通信基盤を支えるのが光ファイバの敷設・保守・運用技術であり、本セミナーでは、これらの敷設・保守・運用の最新技術と関連するITU-T等の標準化動向について講演いただきました。
テーマが通信基盤を支える敷設・保守・運用技術を扱うことから、TTC会員である通信建設業界の関係者の皆様にも多くのご参加をいただき、参加者は60名を超える盛況なセミナー開催となりました。セミナーのプログラム構成を表1に示します。
光ファイバ伝送専門委員会は2011年11月に新設された委員会であり、総務省におけるITUへのアップストリーム活動体制の見直しに伴い、TTCにおいて、ITU-T SG15 WP2(光技術と物理インフラ)の6つの課題に対応する専門委員会として設置されました。情報伝送専門委員会の網間物理インタフェースで扱っていた課題も本専門委員会へ移管されました。委員会設立以降、今まではSG15へのアップストリーム活動が中心でしたが、今年度からはダウンストリーム活動(2013年8月19日号マエダブログで紹介)を本格化していくことになり、本専門委員会の配下に、WDM(波長分割多重)システムなどの40G/100G伝送信号を処理する光システム/光部品/サブシステム関連の課題を扱う光ファイバシステムSWG(サブワーキンググループ)と、光ファイバケーブルの特性と試験法/屋外設備の建設・保守・運用に関連する課題を扱う光ファイバケーブルSWGの二つのSWGを設置して活動を行っています。
今回のTTCセミナーは光ファイバ専門委員会委員長の中島和秀様 (NTT)の進行により、二部構成で、前半はFTTH網の建設、運用、保守に関わる最新技術と関連するITU-T等の標準化動向について、後半はファイバ、ケーブルなどの光部品やサブシステム構成技術と試験法に関する最新技術動向について講演を頂きました。
まず、佐藤勉様 (日本コムシス株式会社)には 「FTTH敷設技術と標準化への要望」と題して、豊富な写真を用いてFTTHの局から家庭までの建設工事・運用保守技術の現場最前線の情報を提供いただきました。安冨徹也様 (古河電気工業株式会社)には「構内配線技術、光ケーブル敷設方法および現場付光コネクタ等の光デバイスの標準化動向」と題して、ITU-TのLシリーズ勧告を中心に、構内配線技術、光ケーブル敷設方法、光コネクタ等の光デバイスに関する勧告の最新動向を紹介いただきました。戸毛邦弘様 (日本電信電話株式会社)には「屋外光設備の保守・運用に関する標準化動向」と題して、SG15で光ファイバケーブルの保守運用に関する課題のラポータを担当されている立場から屋外設備保守運用に関する最新の標準化動向を紹介いただきました。
後半では、平野正晃様(住友電気工業株式会社)には「Beyond 100Gに向けた光ファイバ技術の最新動向および標準化に向けた取り組みと課題」と題して、低損失・低非線形化に向けた光ファイバ開発の歴史と最新の技術動向を紹介いただきました。つづく塩原悟様 (株式会社フジクラ)には、「高密度実装光ケーブルの最新技術動向」と題して、光ケーブルの細径化、軽量化、経済化のための高密度実装の最新技術動向を紹介いただきました。最後に、伊藤文彦様 (日本電信電話株式会社)には「FDM-OTDR/PON下部試験の最新技術動向および標準化に向けた要望と課題」と題して、ファイバの試験・測定技術の研究の最先端情報をご紹介いただきました。
今回のTTCセミナーでは、通信インフラの建設工事関係者の皆様のご支援と会場での活発な意見交換にご参加いただきありがとうございました。
世界中でFTTHの導入が本格化していますが、2400万加入を超えるFTTH商用サービスの建設、運用、保守が、安定的に展開されている国はまだ日本だけといえます。これらを支える建設技術や保守技術はもとより、アクセス区間の様々な環境条件でFTTH工事・保守を安定提供するために用いるツールや作業工程の標準化は日本のノウハウであるとともに、世界中にFTTHブロードバンド市場が広まる過程で、日本が世界に貢献する際の差別化技術になるのではないかと強く感じました。TTCでは、より多くの皆様にこのような議論にご参加いただき、これからの光インフラの構築に向けた検討を盛り上げていただければと思います。ご関心のある方は是非TTCのホームページをご覧ください。
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時間
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タイトル
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1
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14:00-14:05
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開会挨拶
中島 和秀 氏 (日本電信電話株式会社)
(光ファイバ伝送専門委員会委員長)
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2
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14:05-14:35
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「FTTH敷設技術と標準化への要望」
佐藤 勉 氏 (日本コムシス株式会社)
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3
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14:35-15:05
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「構内配線技術、光ケーブル敷設方法および現場付光コネクタ等の光デバイスの標準化動向」
安冨 徹也 氏 (古河電気工業株式会社)
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4
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15:05-15:35
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「屋外光設備の保守・運用に関する標準化動向」
戸毛 邦弘 氏 (日本電信電話株式会社)
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5
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15:35-15:45
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休憩
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6
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15:45-16:15
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「Beyond 100Gに向けた光ファイバ技術の最新動向および標準化に向けた取り組みと課題」
平野 正晃 氏 (住友電気工業株式会社)
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7
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16:15-16:45
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「高密度実装光ケーブルの最新技術動向」
塩原 悟 氏 (株式会社フジクラ)
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8
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16:45-17:15
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「FDM-OTDR/PON下部試験の最新技術動向および標準化に向けた要望と課題」
伊藤 文彦 氏 (日本電信電話株式会社)
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9
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17:15-17:20
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閉会の挨拶
前田 洋一 (情報通信技術委員会 専務理事)
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10
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17:20~
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意見交換会
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