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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

第2回ITU-T「レビュー委員会」開催速報

 新年の松の内が明けたばかりの1月13日から一週間ジュネーブに出張してきました。私が議長を務めるITU-Tのレビュー委員会(RevCom:Review Committee)への対応のためです。私の標準化活動25年間でジュネーブ出張が最も多いですが、今回のように正月の早い時期の出張は珍しく、ITUの会場で行き交う人々との最初の声掛けが「A happy new year!」というのは、様々な国からの友人たちと気持ちを新たにして新年を迎える機会として新鮮でした。私のRevCom議長としての開会の挨拶では、今年は「午年」で、十二支の七番目で折り返し点となることから変化の年と言われており、馬力で高く飛躍する年としたい、と希望を述べました。

 RevComの第一回会合は2013年6月に開催されました(2013年6月10日号ブログで紹介)。通常は年一回開催のTSAGTelecommunication Standardization Advisory  Group)会合と併催されるものですが、前回のRevCom会合で、議論を加速するために追加会合の必要性が合意され、年二回の開催が可能となりました。今会合はその第二回会合として開催されました。追加会合は国連の公式6ヶ国語の通訳なしの英語のみで開催でき効率的です。今回のマエダブログでは、議長として対応した第二回会合結果の速報をお伝えします。今後、RevComの主要課題の詳細については話題ごとに何回かに分けて紹介したいと思います。

 今回のRevComは1月16日と17日の二日間の開催でしたが、参加者は電話会議によるリモートでの事前登録参加者を含め18か国から59名でした。参加者には、各国の主管庁やセクターメンバーの代表のほかに、ITU-TのSG議長、IEC、ISO/IEC JTC1や地域標準化機関であるCITELInter-American Telecommunication Commissionなどの組織代表者を含んでおり、少な目ではありましたが有益な議論ができる参加者数であったと思いました。

写真1 RevComマネジメント
写真1 RevComマネジメント
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写真2 RevCom会合会場

 RevCom会合のオープニング(写真1はRevComマネジメント、写真2は会場の模様)では、ITU-T局長のジョンソン氏を迎え、ITUのモンブリアンビルのH1会場で始めましたが、リモートアクセスの音声回線不良から急遽ITUタワーのC2会場に変更しなければならないアクシデントがありました。通信不良となったリモート参加者の扱いをどうするか、通信故障の修理を待つのか会場を変更するのか、会議の運営時間をどうするか、などの最終判断は全て議長にかかってくるので気楽ではいられませんでした。

 RevComの役割については、「ITU-Tの標準化体制に関する戦略的かつ組織的な検証と他の標準化機関との協調連携の枠組みの検討」ですが、今会合の主な課題とその主要結果を以下の四点にまとめられます。詳細内容については、国内でまとめられる予定の報告資料を参考にしていただければと思います。ご質問がある場合はTTCまでお問い合わせください。

1. 今後のアクションプラン(作業計画)の更新

(1) WTSA-12の決議82のANNEX Aに記載の作業委託事項(Terms of Reference)の記載に準拠することを再確認し、2016年WTSA-16までの改定アクションプランを合意しました。

(2) アクションプランはLivingリストとして、今後RevComマネジメントで適宜維持管理していく予定です。

2. ITU-T再編検証に関する意見収集用質問状の草案作成

(1) 前回立ち上げた質問状検討のためのコレスポンデンスグループ(Correspondence Group)の活動成果である質問状草案のレビューを行った。草案は、コレスポンデンスグループのリーダーである総務省情報通信国際戦略局通信規格課の深堀道子国際情報分析官が作成したものであり、参加者からは深堀分析官に対しての労いと感謝の意が表されました。

(2) 草案レビューの中で、回答者の立場を考慮し質問項目を削減するのが望ましいとの指摘が出され、大幅な簡略化を図るとともに、決議82の課題に沿った一般的な内容の質問から開始し、その後詳細な内容に展開する階層化アプローチを採用する方針を合意しました。最終的に、RevComマネジメントに検討チームを構成し、第一段階の質問状を完成しました。

(3) 質問状の第一段階はITU-T会員を対象に、Webでのオンライン形式で実施する予定です。公開できる段階になりましたらなるべく多くの皆さんに参加いただけるように、質問内容をマエダブログでも紹介させていただきます。

3.寄書に基づくITU-T再編(Restructuring)議論のための新ラポータグループ設立

(1) カナダ、日本、韓国からの寄書をもとに、SGの組織再構成について議論がなされ、今後RevComが検討を進めるにあたって考慮すべき再編原則の提案、様々な組織案の長所と短所の分析など、今後の検討の進め方についての提案が行われました。

(2) ITU-T再編について検討を加速させるために、RevCom議長から、RevComの中に「ITU-T再編」に関するラポータグループを構成することを提案し合意されました。ラポータには副議長の一人であるMusab ABDULLAH氏(バーレン)を指名しました。

(3) 6月16日からの第三回RevCom前に中間会合として5月7日に電子会議を開催する予定です。

4.ITU-T研究委員会(SG:Study Groups)活動の統計データ分析

(1) RevCom議長とTSB(電気通信標準化局)が集計したSGの活動成果に関する統計データについての分析を行いました。統計データ例としては、各SG会合毎の会合参加者、寄書数、会合成果物数(承認勧告数)、ITU-T勧告のダウンロード数をまとめました。

(2) SG活動モニターのパラメータとしてどの項目がふさわしいか、組織編成にどのような情報が得られるかを検討する必要があります。統計データは数字だけが独り歩きし、大小で評価に用いられたりする懸念がありますが、SG2やSG3などの規制や政策を扱うSGでは寄書数や参加者数は小さ目であり、SGの特殊性と重要性を考慮することが必要であることが指摘されました。また、ダウンロード数などは自動ロボット検索などの影響を考慮する必要があることが認識されました。

(3) 統計データは、SGの活動をモニターするには有益であり、今後も定期的にデータ収集を行っていくことを合意しました。収集はITU-Tのデータベースの改良により、今後は大きな稼働を必要とすることなく自動収集できる環境が構築されつつあります。SG15議長からは、SG会合データだけではなく、中間会合であるラポータグループ会合の統計データを追加することが提案され、今後検討していくこととしました。

 以上が今回のRevCom会合の主要結果ですが、最後に、上記4項で発表された統計データの中から、世の中でITU-T勧告のどの勧告に関心が集まっているのかを把握する参考資料として、2009年から2013年の間にITU-Tのウェブサイトからダウンロードされた勧告数の上位100位までの勧告番号を表1に紹介します。第一位のH.264はSG16で検討した映像符号化の標準仕様です。それぞれの勧告番号がどのような勧告であるかを知りたい方は、以下のURLで無料で入手できます。http://www.itu.int/en/ITU-T/publications/Pages/recs.aspx

 レビュー委員会は新体制の組織であり、チャレンジです。日本におけるITU-Tに対する標準化検討の専門家の集まりの場を提供するTTCは、最新技術トレンドをベースに、今後の標準化戦略に関わるTSAGやレビュー委員会の検討に貢献していきたいと考えております。これらの検討は、TTCでの国際連携アドバイザリーグループを中心に、関連する専門委員会の皆様と議論し、実りある活動に発展させていきたいと願っています。

 今後ともご支援よろしくお願いいたします。

表1:ITU-T勧告のダウンロード数のTOP 100勧告(2009 年~ 2013年)