平成26年・新年のご挨拶
新年明けましておめでとうございます。皆様におかれましては恙無く(つつがなく)新しい年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
我が家の玄関にしめ飾り(写真1)がありますが、しめ飾りは幸福を届けてくれる年神様をお迎えする目印(標:しめ)で、橙は家系代々の繁栄、裏白は「後ろ暗いところがないように」、昆布で「よろこんぶ」との願いが込められているようです。
本年は「午(馬・うま)年」。本年の心がけを「馬」を用いた諺で描いてみます。ビジネス環境は激動で依然厳しい状況でありますが「人間万事塞翁が馬」諦めることなく、「荒馬の轡(くつわ)は前から」何事にも挑戦し、自らを駑馬(どば)として「駑馬に鞭を打ち」、「老馬の智」を活用し、TTC会員のために「犬馬(けんば)の労」を惜しまず、標準化で「天馬(てんば)空(くう)を行く」が如く活動できればと祈念しています。また、「馬を鹿」に通すことなく奢らず、「馬耳東風」となることなく世の中の声に耳を傾け、「尻馬に乗る」ことなく自ら熟考するよう戒めたいと思います。さらに、英語の諺、「A man may lead a horse to the water, but he cannot make it drink.」 にあるように、必要なwater(標準化)の水際までは案内はできても標準化の押し付けはできないことを肝に銘じ、今後の標準化活動の普及推進のあり方についても考えたいと思います。
さて、最近の情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)を取り巻く環境は、ICTとその利用形態の劇的な変化を背景に大きく変貌しています。特に、スマートコミュニティ時代におけるユーザ視点と環境を意識したICTの新しい役割への期待の拡大、スマートフォンやタブレット端末による映像コンテンツ利用を中心としたサービスの急増、人と人との通信から機械やデバイス間の通信(M2M:Machine to Machine)への拡大など、情報通信トラヒックは今後も飛躍的に増加し変化していく傾向にあります。しかしながら、急増するトラヒックを支えるネットワークインフラの構築・維持といったCAPEX/OPEX(Capital Expenditure/Operating Expense)低減をベースとしたビジネスモデルだけではICTビジネスの発展は厳しく、OTT(Over the Top)といわれるインターネット上で提供される様々なサービスとの新たな価値創造を目指すビジネスモデルへのパラダイムシフトが急務と思います。
このような状況の中、標準化は、通信インフラと様々なアプリケーションや端末とのオープンなインタフェースの提供のために必要であり、その標準化活動はますます多種多様になっていきます。
中でも今後注目する標準化課題としては、昨年11月のITU-TのCTOグループ会議でも提言されましたが、ICTと気候変動、スマートグリッド、e-health、ITS(intelligent transport systems)、M2M、クラウドコンピューティング、SDN(Software Defined Networking)、Big Data、C&I(Conformance and Interoperability)、IPR(Intellectual Property Rights)共通パテントポリシー改訂、などが挙げられるでしょう。
ネットワークサービスとしては、2020年までに一人が一日に1ギガバイト以上のデータを高速移動網で利用する時代が来ると想定し、2020年には、今の千倍以上の容量、ミリ秒オーダーの低遅延性能、網のSelf-awareness化、そして更なる省エネ効率化が求められるネットワークが要求されると予想されています。
通信サービスとしては、ビデオコンテンツの比重がますます増加し、映像関連処理やEnd-to-EndのQoS/QoE保証の標準化技術の必要性が高まっています。これらは、次世代移動網(5G)を支える光通信インフラ、災害時の緊急通信や復旧支援などの検討の推進を必要とします。また、昨年末の参議院本会議で、国連で2006年に採択された「障害者権利条約」を日本として批准することが承認され、ICTによるアクセシビリティへの貢献やプライバシー保護などへの対応も求められるでしょう。
TTCとしては、日本復興の本格化と2020年に誘致が決まった東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けた機運の盛り上がりの中で、日本のICTビジネスのパラダイムシフトに貢献できるよう、既存の標準化体制の検証と業際分野での新規課題の開拓に向けた挑戦を継続していくことを決意したいと思います。(写真2は、東京オリンピック・パラリンピック開催を記念した東京タワー特別イルミネーションです。)
この決意にあたり、TTCとしての本年の主要な課題目標を示します。
国際標準化への対応方針に関しては、ITU-Tでの新課題にタイムリーに対応することとし、TTCの専門委員会とアドバイザリーグループを活用し、ITU-Tへのアップストリーム活動に貢献していきたいと思います。また、私が議長を務めるITU-Tの新組織「レビュー委員会」が行う、ITU-Tや他の標準化組織の現状体制の検証や、新時代に相応しい標準化体制と標準化連携の戦略的検討を通じて、TTCでの標準化と国際標準化動向との整合を図っていきたいと思います。
M2Mに代表される業界横断での連携が必要な標準化課題への取り組みについては、TTCの業際イノベーション本部(I3C)を核として推進していきます。ICTにより様々な人、モノ、システムがつながり、安全・安心で便利で、地球に優しく、しかも災害に強く経済的な社会を実現し、スマートエネルギー、スマートモビリティ、緊急時や災害対応、健康・高齢化やアクセシビリティ対応、などの個別の分野の課題を幅広く検討し、これらの成果をTTCでの標準化活動に結びつけていきたいと思います。
国際連携に関しては、インドの標準化機関との関係構築、CJK(中国・日本・韓国3ヶ国連携)やGSC(Global Standardization Collaboration)での協力連携、さらに、SHARE(Success & Happiness by Activating Regional Economy)会合を中心としたインドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、ベトナムなどの東南アジアを中心とした標準化普及推進を継続推進していきたいと思います。
事業運営に関しましては、近年の厳しい経済状況の中ではありますが、事業運営基盤の強化・安定化に向け、経費節減はもとより、引き続き標準化に参加される会員の獲得や標準化を推進する受託業務の拡大に取組んで参ります。そのためにも、セミナー開催や展示会への参加による情報発信を継続し、TTC活動の「見える化」を促進します。TTCホームページに掲載中の「マエダブログ」にもライブでホットな標準化の話題を情報発信して参ります。
最後に、標準化の推進と普及活動を通じ、我が国の国際競争力の向上を目指しつつ、途上国支援やアクセシビリティの検討による国際社会への貢献ができるよう、本年も最善を尽くして行きたいと思います。今一度、皆様方に更なるお力添えをお願いいたしまして、新年のご挨拶とさせて頂きます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。