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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

【速報】第一回ITU-T「レビュー委員会」開催

 ITU-T総会WTSA-12(World Telecommunication Standardization Assembly:世界電気通信標準化総会)において新設されたレビュー委員会Review Committee」の第一回会合が6月3日にジュネーブで開催されました。このレビュー委員会に引き続き6月4日から7日まではTSAGTelecommunication Standardization Advisory Group)会合が開催されました。また、4日の夕方には、最近の標準化課題として注目されているSDN(Software Defined Networkingに関するワークショップが開催されました。今回のブログでは、議長として対応したレビュー委員会の第一回の会合結果を速報としてお伝えします。また、SDNに関しての議論については、このブログに引き続く別のブログで述べさせていただきます。TSAG会合報告については、国内でまとめられる予定の報告資料を参考にしていただければと思います。

  レビュー委員会の役割については、2月4日発行のマエダブログで紹介しましたが、今回のレビュー委員会は第一回ということで、キックオフを目的としたもので、本委員会の役割の確認、アクションプランの作成、検討体制の確立を課題としました。TSAG会合開催前日のわずか1日の短期開催で、議長としては時間制限の中での厳しい会議運営となりましたが、主要な合意を含めて無事に終了できて一安心でした。

  会議は遠隔での参加が可能で、遠隔参加の数は確認していませんが、ジュネーブの会場での参加者は24ヶ国から各国の主官庁代表を中心に75名、ITUの幹部やカウンセラを含めて100名を超える会議となりました。会議の模様は以下のサイトに写真付きで掲載されていますのでご覧いただければと思います。

http://www.flickr.com/photos/itupictures/sets/72157633899144825/with/8935431701/

  レビュー委員会の役割はWTSAの決議82「ITU-Tの戦略的かつ組織的検証」として規定されており、委員会の行動規範となります。その内容は、ITU-Tの標準化体制に関する戦略的かつ組織的な検証と他の標準化機関との協調連携の枠組みを検討することです。この課題は、本来TSAGが扱う課題ですが、過去の8年間において、TSAGはITU-T全体の組織規定や各SG間の役割分担の調整作業などで多忙な日程であったことと、SG会合に比べ、ITU-T全体の財政的制限(主に途上国参加支援や公式6ヶ国言語通訳経費負担など)からTSAG会合の開催期間が短縮されるなどの制約があり、結果的に前会期のTSAGでは、戦略的な組織検討や他の標準化機関との連携協調のあり方について、十分な議論が進展しませんでした。そこで、WTSA-12では、新たにレビュー委員会を設け、TSAGの役割の一部を補完、強化することとなりました。

  今回の第一回会合での議論では、TSAGとの補完の関係とは具体的にどうするのかを整理する必要があり、TSAGでの会合を含め、新体制のTSAGとレビュー委員会の役割分担と連携の仕方を明確にするための議論に時間を割くことになりました。その議論では、イラン、米国、カナダ、ドイツ、UAE、サウジアラビア、エジプト、ロシアそして日本が積極的でした。

  今回の会合の主な結果をまとめると以下の7項目に整理されます。

1)レビュー委員会の位置付け

  レビュー委員会の役割については、決議82のANNEX Aに準拠することを再確認しました。レビュー委員会の役割は、他の標準化機関との戦略的な協調の仕方についてのハイレベルな方向性(マクロ的な検討)や今までに無い新しい標準化体制の取り組みを提言することであり、一方、TSAGの役割は、ITU-Tの標準化作業手順を規定するAシリーズ勧告(勧告A.4、A.5やA.6など)の改訂作業を行い、他の標準化機関との情報交換の手続きや標準化仕様の共有の仕方などの標準化ルールに関する規定を作成するなどの実作業(ミクロ的な検討)を行うこと、と関係が整理されました。

  今後のレビュー委員会の検討では、

  • ITU-Tは近年の技術革新や市場要求に対応した標準化活動を推進出来ているのか?
  • 現状のITU-Tの体制や作業方法(Focus GroupやJoint Coordination Activities等)は適切なのか?
  • ITU-TとITU-RやITU-D、更に他の標準化組織との連携や協力の仕方について何を改善すべきなのか?

  などの問題意識を持って課題検討をしていくことが必要です。また、近年のITU-Tの標準化領域が、従来のICT分野から異分野・異業種に跨がった広範囲に拡大し、旧来のICT分野だけでなく、電力、自動車、医療、農水産業やアカデミアを含む多種多彩な分野(verticalsと呼ばれる)との連携が必要になっている中で、ITUはどのような標準化を推進し、他の標準化機関との関係をどのようにしていくのが相応しいかを議論していかなければなりません。

2)レビュー委員会の開催頻度の増加と今後の開催計画

  決議82では、レビュー委員会はTSAG会合の直前に定期的な開催を規定していますが、今後の検討を加速させるために、定期会合に加えて委員会を開催する必要性を合意し、第二回レビュー委員会を2014年1月16‐17日にジュネーブで開催することを決定しました。この追加会合は国連での公式6ヶ国の通訳なしの英語のみでの開催となります。

  TSAGと背中合わせで開催される第三回会合については、2014年6月に、レビュー委員会は月曜と木曜の2日間、TSAGは火曜、水曜、金曜が通訳付きで、木曜は英語のみのアドホック会合で開催する計画で、木曜はレビュー委員会と並行しての開催となる予定です(最終日程は遅くとも開催二か月前までには案内する予定です)。

3)Questionnaire Correspondence Groupの設立

  今後の標準化体制の見直しにあたり、ITUのメンバーや他機関に質問状による意見収集を行い、継続的に対策を検討すべく、メールによる迅速な検討を行うためのクエッショネアコレポングループ(Correspondence Group)を立ち上げることに合意しました。この課題検討は日本からの提案に基づく合意です。

  クエッショネアのコレポングループのメーリングリストはt13revcomQnr@lists.itu.intです。関心のある方の参加をお待ちしています。また、コレポングループのリーダーには、総務省情報通信国際戦略局通信規格課の深堀道子国際情報分析官が指名されました。

4)Action Plan Correspondence Groupの設立

  今回議長から提案した具体的な課題検討を進めるための行動計画案(アクションプラン)を基に、詳細な計画案を次回のレビュー委員会で決定することを合意し、その検討を推進するためのアクションプランコレポングループを立ち上げることにも合意しました。

  アクションプランのコレポングループのメーリングリストはt13revcomActPln@lists.itu.intです。関心のある方の参加をお待ちしています。また、コレポングループの運営リーダーには、レビュー委員会の副議長のひとりであるReiner LIEBLER氏(ドイツ、連邦ネットワーク庁)が指名されました。

5)Technology Watch運営委員会の活用

  最新のICT技術動向の調査を行い、今後のITU-Tの活動への検討材料を与えてくれる調査情報誌として、Technology Watch Reportがあります。この調査機能をもっと積極的に活用することを提案し、編集企画を検討する運営委員会に、レビュー委員会の議長と副議長が参加し、今後調査すべき新規課題の発掘など、企画に積極的に加わる方針を合意しました。

6)CTO会議報告書の分析

  2012年に開催されたCTO会議で提言されたStandardization landscape、ITS (Intelligent Transport System)、 M2M(Machine to Machine)、Cloud Computing、SDN、Broadband backhaul for beyond 4G、Smartphone securityなどの重要課題について、他の標準化機関との連携協調のあり方を検討していくことが確認されました。

  CTO会議は年一回程度開催される予定で、次回のCTO会議には、私はレビュー委員会の議長として、参加招請を受けており、CTO会議メンバーとの意見交換を積極的に図っていきたいと考えています。

7)ITU-Tの各SGにおける現状体制の活動評価

  各SG議長から新研究会期における主管課題についての他の標準化機関との連携状況などについて報告が行われましたが、今後も継続的に活動報告の検証を行うこととなりました。ITU-Tと他の標準化団体との協力のための既存のモデルを検証し、標準分野でのITU-Tの役割と責任を明らかにし、相互尊重に基づいた協同と協調の新しいあり方を検討していく予定です。

  以上が、第一回レビュー委員会の進捗ですが、これらの会合結果は、引き続き開催されたTSAG会合に報告され、特に、TSAGとの補完的な相互関係については再確認をすることができました。また、レビュー委員会の議長である私はTSAGのマネジメントチームメンバーに加わり、TSAG議長のBruce GRACIE氏はレビュー委員会のマネジメントチームメンバーに加わることを合意し、お互いに検討の重複がないように会合運営を行なっていくことを確認しました。

  レビュー委員会は新体制の組織であり、「チャレンジ」です。日本が、個別技術課題を超えた標準化戦略に関する議論のリーダーシップを確保するためには、国内の意見をタイムリーに国際での議論に反映させていかなければいけません。日本においてITU-Tに対する標準化検討の専門家の集まりの場を提供するTTCは、最新技術トレンドをベースに、今後の標準化戦略に関わるTSAGやレビュー委員会の検討に貢献していきたいと考えております。これらの検討は、TTCでの国際連携アドバイザリーグループを中心に、関連する専門委員会の皆様と議論し、実りある活動に発展させていきたいと願っています。

  今後ともご支援よろしくお願いいたします。