第17回GSC(Global Standards Collaboration)会合に参加して
2013年5月13日 (月) から 5月16日 (木)まで、GSC(Global Standards Collaboration)の第17回会合が韓国の済州島グランドホテルにて、韓国TTAのホストにより開催されました。写真1はGSCの開催を掲示した会場ホテルの外観です。GSCは世界の主要な標準化機関(SDOs : Standards Development Organizations) の代表者(HoD:Head of Delegation)が一堂に集まり、ICTに関する標準化活動について情報交換を行うとともに、グローバルな標準化を促進するためのSDO間の協調戦略を検討するための集まりです。各SDOのHoDが直接顔を合わせ、いつでも情報交換できる関係を構築することも重要な狙いとしています。TTCからは前田がHoDとして、総計8名がTTCを代表して参加しました。写真2はオープニングプレナリーでのGSC議長と各SDOのHoDのみなさんで、右端が私です。
GSCは現在、TTCを含む以下の9標準化組織が正式メンバーです。
国名
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組織名
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URL
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日
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ARIB (Association of Radio Industries and Businesses)
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米
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ATIS (Alliance for Telecommunications Industry Solutions)
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中
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CCSA (The China Communications Standards Association)
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欧州
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ETSI (European Telecommunications Standards Institute)
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米
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TIA (Telecommunications Industry Association)
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加
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ISACC (ICT Standards Advisory Council of Canada)
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韓
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TTA (Telecommunications Technology Association)
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日
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TTC (The Telecommunications Technology Committee)
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国際
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ITU (International Telecommunication Union)
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9標準化組織のGSCメンバー以外に、今回はオブザーバーとして、インドの情報通信技術省の他、Alliance for Wireless Power (A4WP)、American National Standards Institute (ANSI)、European Patent Office (EPO)、IEEE Standards Association (IEEE-SA)、ISO/IEC JTC1、Japan Patent Office (JPO)、Korea Intellectual Property Office (KIPO), Korea Internet and Security Agency (KISA), and Korea Wireless Power Forumが参加しました。どの標準化組織にとっても、グローバル標準化の重要性は今後の貿易、ビジネス競争、ユーザの取り込み、相互接続の実現などの観点で益々高まっており、GSCに加入することへの関心が高まっています。
オブザーバーの中で、今回、インド政府から参加があり、インドの国内標準化組織として新たにTelecom Standards Development Society, India (TSDSI)を設立する計画であること、TSDSIが近い将来にGSCに仲間入りすることを希望していることが表明されました。TTCはインドのGISFIとLoI(Letter of Intent)での連携関係を構築していますが、インド国内に政府が認める正式なSDOが設立された場合には、インドとの関係を再整理する必要があり、今後の情報収集が大切となります。
今回のGSCの総合テーマは「Standards for Shared ICT」で、会合ホストTTAの代表Keun-hyeb LEE氏は、歓迎スピーチの中で、ICTが触媒となって異なる産業がコンバージェンス(convergence)していく傾向にあり、GSCはICT convergenceに向け、様々な標準化組織が協調していく必要性を再確認する機会であり、時代の流れにマッチしたテーマであると述べられました。
GSC会合での議論テーマは、重要課題;HIS(High Interest Subject)と呼ばれます。現在、HISとして、ICTと環境、スマートグリッド、M2M(Machine-to-Machine)通信、クラウドサービス、緊急通信、ITS(Intelligent Transport System)、サイバーセキュリティなど、合わせて19の重要課題が扱われており、それぞれの議論の結果はResolution(決議)としてまとめらます。これらHISには取りまとめを担当するSDOが割り当てられています。
HISには電気通信の有線系の課題だけではなく、無線系の課題も含まれますので、TTCはARIBと課題の分担と連携をして対応しています。ただ、近年、M2M、ホームネットワーク、ITSなど無線、有線に色付けされないサービス/アプリケーションが増加してきており、合同で議論する機会が多くなってきています。HISの中で、タスクフォースを構成して次回のGSC-18までの期間も継続的に検討を推進する以下の3課題について触れます。
第一はM2Mです。GSCでは2010年にM2MをHISに取り上げ、SDO間の協調の結果、7つのSDOが元となってoneM2Mという新しいプロジェクト型の組織を設立したこと、およびITUでもM2Mのフォーカスグループを立ち上げたことが成果といえるでしょう。
第二は緊急通信です。GSC-16において、日本の東日本大震災を踏まえ、災害防護と救援におけるICTシステムの重要性を再認識し、災害を考慮した標準化の推進やネットワークインフラの耐性確保のための検討を行う「緊急通信タスクフォース」を設立し、技術レポート(中間報告)を作成し活発に活動を進めてきましたが、今回、本活動の重要性を鑑み、タスクフォースの継続を決定しました。
第三はITSです。ITSについては産官どちらにとっても高い関心の課題となっていることから、本タスクフォースを継続すると共に、Collaboration on ITS Communication Standardsグループでの検討への参加も呼びかける、ことに合意しました。
これら技術課題の他にICT標準における特許権利化技術の扱いについての関心が高まっており、今回のGSCでは、IPR(Intellectual Property Right)知的所有権に関する議論を集中的に行いました。会合には、オブザーバーとして、欧州、日本、韓国などの特許庁の専門家を招いて、最近の標準化における特許係争案件の動向やSDOにおけるパテントポリシーの動向についての情報交換が行われました。
TTCは、「ICT and the environment」と「Interoperability」のHISリーダ役を務めると共に、「Home networking」、「IPTV」、「ITS」、「M2M」、「Future networks」、「IPR」などのHISの議論に積極的に加わりました。これらの課題に対処すべく、TTC所属メンバーとして参加いただいた皆さんの写真3(会場)と、送別パーティでのショット写真4を示します。
GSC-17会合の報告資料や決議、共同声明などの情報は、TTCの関連専門委員会やアドバイザリーグループに展開する予定ですが、今回の会合ホストのTTAのサイト(http://www.tta.or.kr/English/new/external_relations/gsc17_document.jsp)で会合資料が得られます。ご不明な点についてはTTC事務局にお問い合わせください。
次回のGSC-18会合は、欧州ETSI本部ソフィア・アンティポリス(フランス)で、2014年7月21日-24日の期間開催される予定です。