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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

APT-ITU合同セミナと第21回ASTAP会合に参加して

写真1 タイの国花
写真1 タイの国花

 タイ・バンコクでの出張から帰国した3月16日に、靖国神社にある標本木の桜(ソメイヨシノ)の開花宣言が発表されました。平年より10日早く、1953年の観測開始以来、2002年と並んで最も早い開花だそうです。この時期のタイは乾季が終わり、暑さの本番を迎える前の観光シーズンで、タイの国花のゴールデンシャワー(英語名)(写真1)と一緒に咲くタイの桜(名前は分かりませんが)(写真2)が美しく咲いているのをみつけました。ただ人出も多いせいか、バンコク市内の交通渋滞は夜遅くまで相変わらずの厳しいものでした(写真3)

写真2 タイの桜
写真2 タイの桜
写真3 タイ市内の交通渋滞
写真3 タイ市内の交通渋滞

 さて、タイのバンコクのAmari Watergateホテルにて、3 月 7 日 (木) と8 日 (金)に、WTSA-12とWCIT-12の結果報告に関するAPTとITUの合同セミナが、3月11日(月)から15日(金)まで、第21回ASTAP会合が開催されました。本ブログでは、APT/ASTAPとTTCとの関係課題を中心にASTAP会合の主要結果について解説します。

  APT/ASTAPの組織については既に過去のブログでも紹介しておりますが、APTAsia-Pacific Telecommunity)とは、アジア太平洋地域の電気通信に関する協調連携を図る組織で、現在、38ヶ国が加盟しています。その中で電気通信に関わる標準化を扱う組織としてASTAPAPT Standardization Program Forum)があります。

1)  災害対応課題

  ITU-Tでは昨年1月に災害対応のフォーカスグループ(Focus Group on Disaster Relief Systems, Network Resilience and Recovery (FG-DR&NRR))が新設され、TTCでは災害対応ワーキングパーティで関連課題の検討を行なっています。今回のASTAPでは「インダストリ・ワークショップ」の企画として、日本からの提案で「災害救援」関連課題をテーマとした、アジア諸国との災害関連の情報交換の機会を持ちました。講演では、東日本大震災やタイの洪水の経験などを元にした災害救援とネットワークの災害耐性の向上に役立つICT技術に関する議論を行ないました。今後、ASTAPとしての重要課題として、関連の専門委員会での検討を促進していくことを合意しました。なお、この開催日の3月11日が丁度二年前の東日本大震災の日であるということから、ゲストとして参加されていたITU-Tのジョンソン事務局長のご提案により、午後のセッション開始時に、東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするために、会合参加者全員で一分間の黙祷を行ないました。

2)   BSG(bridging the standardization gaps):標準化格差是正課題

  TTCは、2008年5月からAPT会員(Affiliate member)となり、特に、東南アジアの開発途上国との連携強化とBSGと呼ばれる標準化格差是正の検討に貢献することを目的に、ASTAPでの標準化活動に取り組んでいます。今まで、TTCの普及推進委員会としてASTAPのBSG作業グループ会合に参加してきましたが、TTCでは、今月から普及推進委員会はBSG専門委員会として新体制を立ち上げ、引き続き、アジア地域における標準化格差是正に向けた検討を継続します。今回の会合では、今までのインドネシア、マレーシア、フィリピンなどで実施してきたAPTプロジェクトでの経験を基に、今後、過疎地域社会にICTソリューションを導入するためのガイドラインとなるハンドブックを標準化成果として検討していくこととしました。

3)  適合性と相互接続性(C&I: Conformance& Interoperability)イベント

  APTでの標準化検討の活性化と産業界の関心を高めるために、日本が提案していたC&Iイベントについて、次回のASTAP-22会合直前での開催(2013年9月9日と10日、バンコク)を決定すると共に、イベント実現に向けた準備検討会の議論が進展しました。C&Iイベントについては、日本でのHATS推進会議での検証試験の経験を元に、海外ベンダを交えた相互接続試験の実現を目指しますが、TTCは試験対象となるIPTV、NGN、光アクセス等の標準化仕様作成の観点から支援をしていく考えです。また、今回のASTAP会合には、ITU-T事務局のジョンソン局長をはじめとするTSBスタッフが参加し、ITU-TにおけるC&Iの検討状況を紹介すると共に、今後、C&Iの検討を通じてITU-Tとアジア地域標準化組織との連携関係を強化していく姿勢を確認する機会ともなりました。

4)  APTパテントポリシー実施ガイドライン 

  APT管理委員会で審議されているパテントポリシーガイドラインの改定について合意しました。この改訂は、ITU/ISO/IECでの共通特許ポリシー実施ガイドラインの改定にあわせた整合化を図るための修正であり、この修正提案はTTCのIPR委員会での検討結果を反映したものです。

5)  レビュー委員会(ITU-T Review Committee)

  ITU-TへのAPTとしての対処案の検討やITU-Tにおける注目課題に関する情報交換を図るITU-T作業グループ会合において、前田は、WTSA-12で設立されたITU-Tレビュー委員会の議長として、委員会の設立の目的と今後の活動計画概要について紹介を行いました(​​​​​​​ 添付資料参考)。レビュー委員会は今年から始まるITU-Tの研究会期で初めて設立された委員会であり、標準化戦略とその組織体制の議論に日本としての標準化方針を反映するために、TTCにおいては、国際連携アドバイザリーグループと連携して、日本としての対処方針を検討していく計画です。

  上記以外の会合内容について、APTの関連ページにアクセスすることにより、詳細情報が得られます。その情報には、昨年末にドバイで開催されたWTSA-12やWCIT-12の主要結果概要を把握することができるとともに、ASTAP会合では、セキュリティ、スマートグリッド、ICTと気候変動、次世代ウェブ技術、インターネット等の標準化動向について、各専門委員会の活動結果を把握することができます。私のブログでは、それら会合結果の理解を補助するための参考情報を提供すると共に、アジア地域での最新の標準化活動情報を皆様に発信していきますので、今後とも関心を持っていただければと思います。

 添付資料:ITU-T Review Committee;Resolution 82 onStrategic and structuralreview of ITU-T