ドバイにてITU-T総会WTSA-12が始まる
8月6日と10月19日のブログで紹介したITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)総会、WTSA-12(世界電気通信標準化総会)が11月20日からアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ世界貿易センターアリーナ会場(写真1)で開始されました。 現在、ITU-Tに加盟する主官庁・国数(Member states)は193ヶ国ですが、今回の総会には100ヶ国以上の国から900名を越える参加者があり、従来よりも活発な総会と言えるのではないでしょうか。(参考:前回のWTSA-08は、99ヶ国及び12の国際機関等から約770名の参加)
写真2は会場前のWTSAメイン会場、写真3は11月20日のWTSA-12開会式の模様です。
WTSA総会は以下の5つの委員会で構成されます。
- 第一委員会COM 1: 運営委員会(Steering Committee);WTSA全体の運営調整
- 第二委員会COM 2: 予算管理委員会(Budget Control);ITU-Tの会計審査や支出報告関連の審議
- 第三委員会COM 3: 作業方法委員会(Working methods of ITU-T);ITU-Tにおける作業方法に関する規定作成の審議
- 第四委員会COM 4: 作業計画・組織委員会(Work programme & organization);ITU-TのSG構成の体制と4年間の作業計画の審議
- 第五委員会COM 5: 編集委員会(Editorial Committee);WTSA決議文書の調整
今回のWTSAでは、私は作業計画・組織委員会(COM4:第4委員会)の議長に選任され、議事運営に多忙な日々を送っています。会合開催の模様については適宜速報をブログでお送りするつもりでしたが、あまりに多忙で、ブログを手掛ける余裕がなく残念です。ただ、すべてのプレナリーと各委員会の正式会議の模様は、ITU-Tメンバー登録が必要ですが、ITU-Tのサイト:http://www.itu.int/en/ITU-T/wtsa12/Pages/webcast.aspxからライブ及びアーカイブで見ることが出来ますので参考にしてください。
また、私はこのWTSAでSG15議長としての8年間の任期を終え、その最終任務として今研究会期の活動成果を報告しました。WTSAでの多くの決議案の審議結果は11月29日の最終プレナリーを待たなければいけませんが、今日までで会合の前半を終え、途中経過ではありますが、私が議長を担当する作業計画と組織関連の主要審議課題の中で、承認に至った進捗事項を中心に現地速報を報告します。
SG15からWTSAに勧告承認のために提案を行なった4つの勧告草案(G.8113.1、G.8113.2、G.9980、G.9901)については、前半の週で行われたプレナリーで審議され、無事承認が行われました。
この中で、MPLS-TP (Multi Protocol Label Switching-Transport Profile) のOAM (Operations, Administration and Maintenance)に関する勧告G.8113.1とG.8113.2については、SG15の今会期での懸案事項であり、2008年2月にSG15とIETFとの間で共同のMPLS-TPに関する共同検討を行うことを約束して以来、紆余曲折を経て、今回やっと承認に至ることができました。TTCでは情報転送専門委員会でMPLS-TP対応のアドホックを構成して対応してきた課題であり、IETF(The Internet Engineering Task Force)とITU-Tとの間での協調連携の成果と言うことができるでしょう。また、今回の勧告G.8113.1の承認を受けて、インターネットのアドレス資源の管理調整組織であるIANA(Internet Assigned Number Authority)は、G.8113.1用OAMを識別するためのコードポイントとして以下のコード割り当てを決定しました。
http://www.iana.org/assignments/pwe3-parameters/pwe3-parameters.xml#pwe3-parameters-10
私の担当のCommittee4が扱う最も重要な課題であるSG構成再編については、欧州を中心に、SG9とSG16、SG11とSG13とのSG統合提案はありましたが、再編での基本原則として、まず、日本が提案する現状の10個のSG構成を維持することを合意しました。現在は、SGの詳細な課題構成を審議中でありますが、この週末にかけてアドホック会合を開催して、日本が提案するSG構成案に沿った審議が進捗しています(写真4:11月25日(日曜)のアドホック会場の会合模様)。
新規決議案の提案としては、日本が提案するITU-Tの戦略と組織構成の見直しを行う委員会(Review Committee)の新設のための決議については、委員会の設立自体については基本合意を得て、現在、委員会の詳細任務の記述の明確化を図っています。また、APT共同提案で中国が積極的に提案する新規課題SDN(Software Defined Networking)に関する決議については、週末のアドホック会合で決議詳細案の作成を終え、月曜からの承認のための審議に移行します。審議を通じて、この提案は中国のHuaweiが積極的であり、キャリアの利用を目的としたSDNの検討をITU-Tで早急に立ち上げたいという意向が背景にあることが明確になってきましたが、既に業界フォーラムとしてONF(Open Networking Foundation)が立ち上がっており、また、米国はIETFを中心に展開したいという意向があり、MPLS-TPで展開されたITU-TとIETFとの協調連携のあり方が今後の課題となることが予想されます。TTCでは、クラウドコンピューティングのアドバイザリーグループとNGN&FN専門委員会に密接な課題であり、今後セミナ企画をはじめ、検討の加速化が図れればと期待しています。
ITU-Tでの組織再編および改善は、TTCのITU-Tへのアップストリーム活動における今後の専門委員会の取り組みに密接に関連する課題であり、特に、クラウドセキュリティ、SDN、相互接続検証試験の充実、M2Mをはじめとする業際的な標準化課題の進め方に深く関係するものであり、これからの動向に関心をもっていただければと思います。
◆WTSA全体のイベントの写真は以下のURLから
「WTSA-12, 19-29 November 2012, Dubai, UAE」にアクセスできます。この中から日本の関係者の写真をピックアップし、以下の写真を紹介しますが、この他にも皆様のお知り合いの写真を探してみてはどうでしょうか?現地の雰囲気をお伝えできればと思います。
1)GSSシンポジウムでの井上友二様(トヨタIT開発センター会長)
http://flickr.gwbg.ws/hhbd
http://flickr.gwbg.ws/hahz
2)GSSシンポジウムでの前田
3)WTSAプレナリー(第二回)でのSG議長に対する今会期の任期終了にあたっての感謝状の贈呈
SG15議長(前田)
http://flickr.gwbg.ws/gbfe
http://flickr.gwbg.ws/cff
SG16議長(内藤悠史様(三菱電機)
http://flickr.gwbg.ws/ghgz
http://flickr.gwbg.ws/ihb
SG12議長不在のため副議長の高橋玲様(NTT)が代理講演と受領
http://flickr.gwbg.ws/hehc
http://flickr.gwbg.ws/czeb
IPTVショーケースのサイドイベントでの日本の展示対応のみなさん