マエダブログ

マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

秋のジュネーブからホットなITU-T情報をお届けします。

日本では9月も中旬になるのに真夏日が続く状況のようですが、スイスのジュネーブの昼間の気温は20°C、日が落ちると10°C以下になりました。辺りの木々の緑はまだ残っていますが、街並みのキャンバスは急に秋色に変わろうとしています。(写真はITU本部とジュネーブ旧市街)

 私が議長を務めるITU-TのStudy Group 15(SG15)の第5回会合がジュネーブで開催され、勧告の承認を審議するプレナリー会合の運営のためにジュネーブに出張しました。

 SG15会合は、通常ほぼ9ヶ月間隔で開催しており、前回が2月に開催され、次回会合は12月に開催される予定ですが、今回の会合はその間に開催されるInterim(中間)会合に位置づけられ、SG会合が権限を有する勧告承認の機会を増やすことで勧告制定の加速化を図ることを目的に開催するものです。今会合では、アクセス網及びホームネットワークを扱うWP1とコア網の伝送系仕様を扱うWP3の課題に限定した議論が行われました。

 SG15の専門家の皆さんには、ホームネットワークの統一高速伝送仕様である改訂勧告G.9960(G.hn)やMPLS-TP網の運用保守のためのOAM機構を規定した新規勧告G.8113.2(G.tpoam)など18件の勧告草案の承認手続きの開始を合意したことなど大きな進展が有りましたが、詳細な会合報告はITU-TのSG15のホームページを見ていただくこととして、本ブログでは、TTCでのITU-Tへのアップストリーム活動に関連したホットな情報をお届けします。

1) ITU-T会合への寄書投稿のDirect Document Postingシステムを新規導入

今までSG会合やWP会合での寄書の投稿は、会合参加者が寄書を添付した電子メールをITU-Tの事務局に送付し、それを受領した事務局が寄書内容を確認し、寄書タイトルや投稿者データをデータベースに登録した上で、寄書が公開される手続きを経ていました。しかし、投稿から公開までに人手を介することから、時間がかかると共に人的稼働も必要となりました。この中間作業をなくすのがダイレクトポスティングシステムです。10月以降開催される他のSGやTSAG会合で適用され、SG15では12月の会合から新システムを適用することにしました。

  ITU-T事務局のシステム紹介に関する文書を元に、システム概要を私が一部翻訳しましたので、以下に参考資料として提供します。

   「ITU-T寄書のダイレクトポスティングシステムの概要」

2) ジュネーブITU本部での参加者入館登録証にRFIDチップを搭載

 今まで写真カードで使い捨てであった参加者入館登録証にRFIDチップが搭載され、ITU会議室への入館が自動ゲート化されると共に、参加登録データが自動で書き換えられることからカードの交換も不要になります。また、ITUのモンブリアンビルの200台の個人用ロッカーが、鍵での施錠からRFID連動で使用できるようになり、参加者登録情報に連動し、ロッカーの使用管理が向上することになりました。(写真は参加者入館登録カード、入館ゲートと新設ロッカー)

3) ホームネットワーク関連勧告G.9973にTTC標準JJ-300.00を採用

 今回のSG15会合の成果として、TTCの次世代ホームネットワークシステム専門委員会(専門委員長:伊藤昌幸氏)で検討された標準であるJJ-300.00:「HTIP: Home-network Topology Identifying Protocol」(February 2011制定)がITU-T勧告G.9973における正式参照標準として引用され、国際標準仕様として利用されることになりました。この勧告草案は日本からの提案であり、NTTの山崎毅文さん、美原義行さん(SL研所属)、吉田龍彦さん(NTT-AT所属)のご貢献によるものです。ご苦労様でした。