国際会議ハイレベル実践セミナを終えて
6月15日付けのブログでご案内した「国際会議ハイレベル実践セミナ」を、8月28日と29日の二日間にわたって開催し、定員いっぱいの50名もの参加者を得て、無事終了することができました。参加者へのアンケート結果の全体評価では、参加した皆さんの評価が、「非常に役立った」と「役立った」のいずれかの評価で、高い評価をいただくことができました。
写真1と2は、セミナ会場の模様です。写真3は、初日の講義を終えたところでのセミナ参加者の集合写真です。
今回のセミナは、私のITU-T SG15議長としての苦労、経験をもとに、今後、標準化組織における役職者を目指す人に、「知っていれば必ず役立つ会議運営ノウハウ」を伝えたいという想いから企画させていただき、標準化の実践力強化を意識した「ラポータとエディタに求められるスキルアップに焦点を当てたハイレベルな英語による国際会議実践セミナ」としました。セミナの実施にあたっては、国際会議セミナの実績をお持ちの日本ITU協会に本セミナの主催になっていただき、参加者募集と積極的な勧誘を含めた事務局運営を推進していただきました。TTCは企画のアイデア提案と会場の提供で、後援としてお手伝いをさせていただきました。また、総務省には、本セミナの趣旨と意義をご理解いただき、セミナの後援をいただいたことも、多くの参加者を得られた要因であったと考えております。今回のようなラポータとエディタ向けのセミナ企画は今までにあまりない、初めての試みではありましたが、日本ITU協会の大野様に積極的な会員勧誘を行なっていただいたことと、会員各社の標準化担当のみなさんを中心に受講生の選出をいただいたことにより、標準化活動の実経験をお持ちの多くの方にご参加いただけた実践的なものになったと思っております。
セミナの講師は、TSAG議長を12年間務められたGary Fishman氏にお願いしました。彼は、ITU-Tが昨年から実施している「ラポータとエディタ向けのチュートリアルセミナ」の講師でもあり、そのセミナの趣旨をITU-Tのサイトでインタビュー形式で紹介していますので参考にしてください。ITU-Tでのセミナと同じ講師を日本にお招きすることで、日本からジュネーブに出かけることなく同様のセミナを日本で受講できただけでなく、日本人にとって特に関心のある課題を優先したセミナのカスタマイズが出来たことも価値があったと言えると思います。
セミナの内容は、勧告A.1:Work methods for study groups of the ITU Telecommunication Standardization SectorとWTSA-08決議1:Rules of procedure of the ITU Telecommunication Standardization Sectorでのルールを基に、標準化会議で遵守すべき会議規則、会議における役職者の役割と合意形成のためのテクニック、会議の進行方法や会合レポートの作成上のポイントなど、実践的な会議ノウハウの伝授をいただきました。また、勧告の承認手続きについては、実践的な問題演習を含めた規則の解釈の仕方を伝授いただきました。セミナで提供いただいた教材については、セミナ受講者以外の方々にも展開できるように、日本ITU協会とも相談し、情報の展開と共有の仕方を検討する予定です。
セミナに参加した皆さんにはアンケートを通じて高い評価をいただくことができましたが、それらの中から以下のようなコメントもいただき、今後の企画にあたっての参考とさせていただきたいと思っております。
- 標準化ルールを体系的に学ぶ機会が他にないので大変有意義であった。
- 他の標準化関係者にも役立つので、是非進めたい。年に1,2度のセミナ開催をして欲しい。
- 今回のLeadership用に加え、Delegate用のより”Negotiation"にフォーカスしたものがあっても良いのでは。
- ITU-Tのみならず、ITU-Rも同様の研修があれば参加したい。ITU-T、Rに共通する内容も含まれており、内容は非常に充実していたので、有意義だった。
- ITU-Tに特化し、万人向けでないのが残念。標準化の進め方全般と、ITU-Tのルールに特化した部分に分けて欲しい。
- 基本的なプロセスの説明は少なくし、ノウハウに関する紹介を増やして欲しい。最終セッションのTAPとAAPの承認手続きに関するケーススタディが非常に有益だった。
- 今回初参加だったが、標準化に携わって2年半なので、もっと早い段階で受講したかった。年1度くらいは開催して欲しい。内容を絞り込んで1日のみの研修にしてもらえればもっと参加しやすい。
- 一般向けのセッションとするのであれば、情報処理学会や電子情報通信学会の全国大会やソサエティ大会などのイベントとあわせて開催すれば良いのでは。
- ・・・・・などなど。
最後に、今回のセミナは、標準化活動における役職者向けということで実施させていただきましたが、私の本音は、「セミナで紹介した会議ルールや運営ノウハウは、役職者を目指す人にだけ必要なのではなく、標準化活動の実務に関わる全ての人が最低限の知識として身に付けておいて欲しいものであり、今回のようなセミナが、より多くの人に展開されていって欲しい。」と思っております。標準化仕様である勧告に、自分(日本)の提案を反映させるために、標準化会議での合意がどのようなルールで行われ、それを自分に優位にするためには、何に気を付けなければいけないかを知ることは、標準化対処の上で極めて重要な点であるということです。今回セミナを受講された皆さんが、職場に戻り、学んだノウハウを少しでも多くの人に伝えていっていただくことを望んでおります。2012年11月はUAEのドバイでITU-Tの世界電気通信標準化総会WTSA-12(World Telecommunication Standardization Assembly 2012)が開催され、2013年から4年間の研究会期が始まる機会にあたり、新規の役職者候補を送り込むチャンスです。標準化推進の強化を考慮した役職者人材の育成には、実践(On the Job Training)が最も適していると思いますが、今回のようなセミナから得られるノウハウの習得も有益です。これから標準化活動者を目指す若手人材の育成に、少しでも貢献できるセミナを今後とも企画していきたいと考えておりますので、ご要望など、幅広い意見をお聞かせいただければと思います。