インドネシアでの環境リモートモニタリングシステムの引渡式に参加
3月28日の早朝深夜便にて、羽田からシンガポール経由で、ジャカルタを経由して、ボルネオ島の南部にあるインドネシアのPalangka Raya(パランカラヤ)市に出張してきました。
インドネシアには、国土全体で約2250万ヘクタールの泥炭地が存在し、スマトラ、カリマンタン、パプアニューギニアなどに多く存在しています。これらの泥炭地ではパームオイルプランテーションなどの開発が行われると、排水により地下水位が下げられ、表土が乾燥し、泥炭の分解により二酸化炭素が発生するという問題があります。また、一度水位が下がると二酸化炭素は排出し続けます。泥炭地の乾燥により発生する野火が大規模な森林火災につながり二酸化炭素を発生します。二酸化炭素の泥炭からの排出はインドネシアの総排出量の約45%を占め、2030年には年間10億トンに達すると言われ、インドネシアは温室効果ガス排出国の米国、中国に次、世界第三位の温室効果ガス排出国になっています。
参考:2006 年11 月、国際湿地保全連合(Wetland International)報告
TTCでは、アジア各国と連携し、各国の過疎地域でのデジタルデバイド(情報格差解消)に向けICTを利活用したソリューションの普及を推進し、共生・互恵社会の実現を目指した活動を行なっています。この活動の一環として、インドネシアのパランカラヤ市において、地球の気候変動課題として注目を集めている泥炭地保全に向けた環境リモートモニタリングシステムの構築を提案してきました。この提案は、昨年度、ASIA-PACIFIC TELECOMMUNITY (以下APT)の2010年度J2プロジェクト提案として採択され、そのプロジェクトの下で活動を推進してきました。
このプロジェクトでは、TTCと、インドネシアの情報通信技術省、中央カリマンタン州政府、パランカラヤ大学とが協力し、泥炭地の保全に不可欠な泥炭地水位や二酸化炭素等の環境データを連続的に、かつ自動的に収集する遠隔モニタリングシステムを構築してきました。また、このプロジェクト遂行を通して、特にパランカラヤ大学の若手技術者がICT技術を習得することを支援しました。
ICT技術支援により、今後の新規プロジェクトについても、インドネシアの現地の人々の力により遂行する事が可能となると期待されます。
本プロジェクトの完了を記念し、3月28日の午後、環境リモートモニタリングシステムを現地地方政府に引渡しを行う式典、Handover式典が開催されました。式典には、情報通信省、中央カリマンタン州政府、パランカラヤ大学の関係者が集まり、TTCからは普及推進委員会の村上仁委員長をはじめ、プロジェクト関係者が出席しました。私は、TTCを代表して、引渡し調印式の署名と式典での挨拶を行いました。
写真1は、式典でのインドネシア情報通信省局長、中央カリマンタン州知事、パランカラヤ大学学長の代理を含む関連組織代表者との集合写真であり、TTCからは、私のほか、普及推進委員会の村上委員長と岩田担当部長です。写真2はモニタリングシステム引渡しに関する調印式の模様です。
式典の終了後、プロジェクト関係者で現地視察を行いました。写真3は泥炭地の排水のために設けられた水路と水量調整のためのダムです。写真4は遠隔モニタリングデータ送信アンテナのある現地模様、写真5は運用を開始したデータセンターの建物を見学した際の関係者との集合写真です。
現在、パランカラヤ大学の若手技術者が中心となって、今後の新規プロジェクトの計画立案を進めています。具体的には、今回のAPT-J2プロジェクトで構築したシステムをベースにして、環境データ観測点や観測項目の追加、データセンターの延長、泥炭地火災に有効な防火/消火剤の実証、テレセンター構築による地域住民のICT・環境・農業など各種教育機会の提供などを検討しています。本プロジェクトで今後収集されるデータの活用により運河に設置する簡易ダムの設計改良、若手技術者によるシステム拡張、及び同モデルと蓄積される経験の各国への水平展開が期待されます。
今後とも、TTCの普及推進の活動として、情報通信省、パランカラヤ大学、地方政府とTTCとの協力関係を維持強化しながら、パランカラヤにおける泥炭地保全や地域住民の生活向上に貢献していきたいと考えています。