第7回ITU-T SG15会合(ジュネーブ)が終了しました
私が議長を担当するITU-TのSG15(Study Group 15)(光伝達網とアクセス網インフラストラクチャに関する標準化を責任とする研究グループ)会合が、12月5日から16日までジュネーブで開催されました。本SG15会合は、2009年から2012年までの研究会期における第7回会合でした。前回ブログで、プレナリー会合の会場となるITUタワーの新会議室POPOVのご紹介をしましたが、写真1と写真2は最終日の閉会プレナリー会議の様子で、写真1は会議場前面の演壇を見た会議室POPOVの全景、写真2はハイビジョンスクリーンに映し出されたSG15議長団(中央左が私)です。
今会合の参加者数は385名(40ヶ国)、寄書数は402件、会合中に作成された文書(Temporary Document)数は608件と、大変に活発なSG会合でした。また、今会合では、MPLS-TP課題を中心に主官庁(Member State)の代表による採決を予定していたため、参加国数は今までで最大でした。議長として議事運営が難しい場面が幾つかありましたが、最終決議を行う閉会プレナリーでは、77件もの新規及び改訂勧告草案の承認行為(承認規則としては、TAP;Traditional Approval ProcedureにおけるDeterminationと最終SG承認、AAP;Alternate Approval ProcedureにおけるConsentと最終SG承認があり、また、そのSG会合だけで承認できるAgreementがある)を実施し、予定通りの成果を得て終えることができました。
ここでは、前回ブログでホットトピックとして挙げた課題、1)MPLS-TPパケット伝送用のOAM方式、2)ホームネットワーク内の高速伝送網の遠隔制御プロトコル、3)スマートグリッドに用いられるPLC(Power line communication)用の狭帯域伝送仕様、4)10 Gb/s PON方式の光アクセスシステム、について簡単に触れます。
1)のMPLS-TPに関しては、ITU-Tが発行するニュースログ記事が出ましたので、今までの背景や経過説明の記述がありますので、参考にしてください。記事の中で、今会合での決着を図るために、日本は妥協案を模索するための寄書提案を行い、ITU-T事務局長には日本の試みを高く評価いただきました。
このMPLS-TP課題に関連した勧告では、勧告G.8110.1(MPLS-TPレイヤ網のアーキテクチャ)が承認されるとともに、勧告G.8113.1(MPLS-TPのOAM(運用保守)メカニズム)については、IETF派の反対環境を打開するために多数決で決議できるITU-Tの全権会議(WTSA-12: World Telecommunication Standardization Assembly。2012年11月ドバイ開催予定)での承認を目指すことになりました。このMPLS-TPの議論の背景には、標準化組織としてのITUとIETFと連携の仕方に関する問題点と、IETFに影響力のある主要ベンダと従来の伝送技術を得意とするベンダとのビジネス競争という対立があります。今回の会合結果が、IETFとの関係改善に向けた新しい動きのきっかけになることを期待しています。
2)のホームネットワークに関しては、BBF(Broad Band Forum)のTR-069を参照する勧告G.9980(宅内網装置の遠隔管理プロトコル)が承認(ドイツから4週間の保留要求が付いていますが)されました。また、ホームネットワークでの数百メガクラスの伝送を実現する伝送仕様の勧告G.9960の一連の勧告群の進展が図られました。ITU-Tでは、IEEEやIECでの類似仕様との共存を実現できる世界統一仕様の作成を目指しています。
3)のスマートグリッド関連については、低速のPLC(power line communication)送受信器の物理レイヤ仕様を規定した勧告 G.9955が承認されました。また、新しい課題グループとして、SG15の課題番号4のグループが以下の三つに分離した新体制が確立しました。今後、ITUがスマートグリッド課題に取り組む場合、通信の基盤技術に関する標準化については、課題番号Q4c/15のグループが対応する環境が出来たと考えられます。
課題番号Q4a/15: メタル媒体を利用したブロードバンドアクセス
課題番号Q4b/15: ブロードバンド宅内ネットワーク
課題番号Q4c/15: スマートグリッドのための通信
4)の10 Gb/s PON方式の光アクセスシステムについては、伝送速度10ギガビットのPON(Passive Optical Network)方式光アクセスシステムXG-PONの勧告G.987シリーズの仕様化が進展しました。今後は、セキュリティ強化とシステムの切替制御などによる高信頼化、待機モードなどを考慮した低消費電力化などの付加価値を強化したシステムに発展していく予定です。
上記の課題以外も含めたSG15の詳細な会合報告は、TTCにおける情報転送専門委員会、光ファイバー伝送専門委員会、次世代ホームネットワーク専門委員会、DSL専門委員会が課題をそれぞれ分担して行われる予定です。(表1参照)
二週間のSG15会合期間、毎日ホテルと会場だけを往復していましたが、会議を終え帰国前に、ジュネーブの街中を歩いて、年末のジュネーブの写真を撮りましたので最後に紹介します。
写真3はジュネーブの中央駅であるコルナバン駅です。昨年末から大幅改修が行われています。何ヶ月後かは分かりませんが、改修後の写真が撮れた時にはご報告します。
写真4と5はホテル近くの住宅街のアパートで、外壁を登っていくサンタクロース(飾り)をいくつか見つけました。
写真6はレマン湖の大噴水です。今にも雪が降りそうな冬の季節に噴水が出ているのは今までにあまり見た記憶はないです。
写真7はレマン湖畔の橋に飾られた電飾に照らされるレマン湖面です。レマン湖は氷河期に作られた淡水湖で、三日月型をした根元にジュネーブが位置します。ジュラ山脈からの集まった水は豊かで、ローヌ川として地中海に流れていきます。
写真8から10はジュネーブのショッピング通りである旧市街地域の夜景です。ジュネーブ市内はそんなに派手な飾りはないですが、単色のLEDを用いたクリスマス用の電飾が多くあり、プレゼントを買う買い物客で賑わい、年末の雰囲気に包まれています。
今回のブログは、本年の最終号となる予定です。今年の1月から初めて始めた企画で、いつまで続くかと心配でしたが、今回で26号になりました。ブログというより、報告書のような内容で、作家的なセンスは全くありませんが、標準化に関するライブな出来事を、私なりの視点、解説を加え、TTCの活動を理解いただくための一助になればと思っております。今後のブログもご愛読いただければと思います。良い年をお迎えください。
TITLE | TTCの専門委員会及びAG | |
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WP 1/15 | Transport aspects of Access networks and home networking | |
Q1/15 | Coordination of Access Network Transport standards | 情報転送専門委員会 次世代ホームネットワークシステム専門委員会 |
Q2/15 | Optical systems for fibre access networks | 情報転送専門委員会 |
Q4/15 | Transceivers for customer access and in-premises networking systems on metallic conductors | 次世代ホームネットワークシステム専門委員会 DSL専門委員会 |
WP 2/15 | Optical access/transport network technologies and physical infrastructures | |
Q5/15 | Characteristics and test methods of optical fibres and cables | 光ファイバ伝送専門委員会 |
Q6/15 | Characteristics of optical systems for terrestrial transport networks | 情報転送専門委員会 光ファイバ伝送専門委員会 |
Q7/15 | Characteristics of optical components and subsystems | 情報転送専門委員会 光ファイバ伝送専門委員会 |
Q8/15 | Characteristics of optical fibre submarine cable systems | 光ファイバ伝送専門委員会 |
Q16/15 | Optical physical infrastructure and cables | 光ファイバ伝送専門委員会 |
Q17/15 | Maintenance and operation of optical fibre cable networks | 光ファイバ伝送専門委員会 |
Q18/15 | Development of optical networks in the access area | 光ファイバ伝送専門委員会 |
WP 3/15 | Transport network structures | |
Q3/15 | General characteristics of transport networks | 情報転送専門委員会 |
Q9/15 | Transport equipment and network protection/restoration | 情報転送専門委員会 |
Q10/15 | OAM for transport networks | 情報転送専門委員会 |
Q11/15 | Signal structures, interfaces and interworking for transport networks | 情報転送専門委員会 |
Q12/15 | Transport network architectures | 情報転送専門委員会 |
Q13/15 | Network synchronization and time distribution performance | 情報転送専門委員会 |
Q14/15 | Management and control of transport systems and equipment | 情報転送専門委員会 |