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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

第二回ITU-TとISO/IEC JTC1とのリーダーシップ会合に参加して

 11月6日(日)、前回ブログで報告したGSC-16会合に引き続き、米国サンディエゴで開催されたITU-TとISO/IEC JTC1との第二回リーダーシップ合同会合に、ITU-Tのマネジメントメンバーの代表団の一人(SG15議長)として参加しました。

  まずは、JTC1とは何か、なぜ今回の合同会合が開催されたかを解説します。

1 JTC1

 国際標準化機関として、ITU(国際電気通信連合)の他に、ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)があります。ISOは、電気分野を除く、ネジやナットからナノテクノロジーまでの幅広い産業分野の国際的な標準である国際規格を策定しています。IECは、その標準化範囲はIEC憲章で規定されたあらゆる電気/電子工学技術を扱う国際的な標準化団体で、具体的には、発電と送電、エレクトロニクス、磁気学と電磁気学、電気音響学、マルチメディア、遠隔通信などを含みます。ISOの中で、情報分野を扱う技術委員会の標準化範囲がIECと重複するということから、情報技術 (IT) 分野の標準化活動をISOとIECと合同で行うこととし、1987年に改組されISO/IEC JTC1(Joint Technical Committee 1)となりました。

 なお、ITUとISOとIECとの間には、2001年から、それぞれの標準化機関の局長、次長のマネジメントレベルで、国際標準化の強化と促進を図り、3組織間の協調を推進するためのWSC(The World Standards Cooperation)という連携体制が構築されています。さらに、3組織間には、標準化において重要となる特許、著作権、商標などの知的財産権IPRs(Intellectual Property Rights)に関する共通特許ポリシーと共通特許実施ガイドラインを定めており、ITU-TとJTC1との連携においての環境は整っているという強みがあります。

2 ISO/IEC JTC1 とITU

 ISO/IEC JTC1が情報技術を扱うのに対して、ITUは通信技術を扱うと区別されます。別の言い方では、JTC1はコンピュータ処理技術や情報端末技術からサービスを捉えるのに対し、ITUはネットワーク提供者やネットワークインフラの技術からサービスを捉えるというアプローチの方向の違いと言えると思います。しかし、近年のスマートグリッド、e-health、ITS(intelligent transportation systems)などの業際横断的なサービスに代表されるように、ITと通信技術の統合が加速し、ICTを扱う標準化組織はそれぞれの境界がオーバーラップするとともに、相互の連携をより必要とするケースが増えてきています。

3 ITU-TとISO/IEC JTC1とのリーダーシップ会合

 ITUとISO/IEC JTC1との標準化組織間の検討の重複を避けると共に、それぞれの責任分担を明確にするための連携の試みが必要となっており、ITUとISO/IEC JTC1は、それぞれの課題責任者を集め、マネジメントレベルの合同リーダーシップ会合で意見交換を行うことにしました。

(1)第一回ITU-TとISO/IEC JTC1との合同リーダーシップ会合

 第一回会合は2010年2月4日―5日にITU本部(ジュネーブ)で開催しました。この会合では、初めての試みということで、ITU-Tからは各SG議長、JTC1からはSC(Subcommittees)議長が出席し、それぞれの標準化課題を紹介し、共通課題の抽出に努めました。その結果は第一回会合直後の2010年2月8日―11日に開催されたTSAG会合で報告されましたが、マルチメディア、スマートグリッド(気候変動を含む)、ID(Identity)管理、セキュリティ、クラウドコンピューティング、ホームネットワーク、アクセシビリティ等の課題での連携の必要性を確認すると共に、第二回合同リーダーシップ会合の開催を合意しました。

(2)第二回ITU-TとISO/IEC JTC1との合同リーダーシップ会合

 今回の第二回は、ISO/IEC JTC1の総会直前の2011年11月6日に、サンディエゴでの開催となりました。写真1はサンディエゴの会場となったマリオットホテル&マリーナで、写真2は参加者の集合写真です。

写真1 : マリオットホテル&マリーナ
写真1 : マリオットホテル&マリーナ
写真2 : 会合参加者集合写真
写真2 : 会合参加者集合写真

 今回の合同会合で扱った共通課題としては、次世代ネットワーク、セキュリティ、RFIDセンサーネットワークを含むIoT(Internet of Things)、スマートグリッド、ICTと気候変動、データセンターのエネルギー効率化、ホームネットワーキング、クラウドコンピューティング、アクセシビリティなどが関連深い課題として認識されました。

 図1にJTC1 の検討組織にあたるSCの一覧を示します。また、主な共通課題毎に両組織の関連部門を以下の表1にリストしてみました。

図1: JTC1 SC一覧
図1: JTC1 SC一覧
表1:ITU-TとISO/IEC(JTC1)との共通課題
共通課題
ITU-T
ISO/IEC
将来ネットワーク(Future NW)
SG13
JTC1 SC6
セキュリティ
SG17
JTC1 SC27, SC31
IoT(Internet of Things)
IoT-GSI, JCA-IoT, SG16
JTC1 SC31/WG6
スマートグリッド
FG-Smart
IEC TC100, JTC1 SC25
ICTと気候変動(Green ICT)
SG5
JTC1 SG-GICT
ホームネットワーキング
SG15,  SG16
JTC1 SC25
クラウドコンピューティング
FG-Cloud
JTC1 SC38
アクセシビリティ
SG16, JCA-AHF, FG-AVA
JTC1/SWG-Accessibility
e-Health(データ保護セキュリティ)
SG17,  SG16
ISO TC215
データセンター(エネルギー効率)
SG5
JTC1 SG-EEDC

 各課題毎にそれぞれの組織から活動状況を紹介した講演資料については、TTC会員で、希望の方には提供しますので、TTC事務局にお尋ねください。

 今回のブログの最後に、サンディエゴは大リーグ野球のパドレスのホームタウンで、写真3はシーズンオフで開放されたPETCOスタジアムです。写真4はサンディエゴのダウンタウンの中心となるガス灯通りの入口です。サンディエゴは年間の晴天日が300日と言われ、気候も温暖で、とても過ごしやすそうなところでしたが、一日だけの会議の短期滞在で、慌ただしく帰国の途につきました。

写真3 : PETCOスタジアム
写真3 : PETCOスタジアム
写真4 : ガス灯通り入り口
写真4 : ガス灯通り入り口