第16回GSC（Global Standards Collaboration）会合に参加して

　10 月 30 日 （日） から 11 月 3 日 （木）まで、GSC（Global Standards Collaboration）会合に参加のため、カナダ大西洋岸地方最大の文化・経済の中心都市で港湾都市であるハリファックスに出張しました。前回のブログで紹介しましたマニラからの引き続く出張で、気温差-30度、時差-12時間の地への移動は体に堪えました。ハリファックスへの移動日は経由地のニューヨークは吹雪で、フライトの遅延やキャンセルが多く、空港で夜明かしをしなければいけない参加メンバーもいました。（写真１はニューヨーク上空からの雪に覆われた北米東岸。）ハリファックスは1912年のタイタニック号沈没の事故現場に近く、一番に救助に駆けつけた港であることとタイタニック号の数百の犠牲者の共同埋葬地があることで有名です。（写真2はハリファックスのウォーターフロント。）

　GSCは世界の主要な標準化機関 (SDOs : Standards Development Organizations) が一堂に集まり、ICTs (Information and Communication Technologies) に関する
標準化活動について情報と意見を交換し合い、グローバルな標準化活動に資することを目的とした集まりです。 現在は、TTCを含む以下の9標準化組織が正式メンバーです。その第16回GSC会合がカナダのISACC（ICT Standards Advisory Council of Canada）の主催で、メンバー標準化機関のそれぞれの代表を含む約100名の参加者を集め、ハリファックスの世界貿易会議センターで開催されました。（写真3はGSC開会式の模様。中央はISACC代表のJim MacFie氏と来賓挨拶のカナダ工業会会長のMarc Dupuis氏。）

　９標準化組織のGSCメンバー以外に、今回はオブザーバーとして、CDMA Development Group (CDG)、European Patent Office (EPO)、Global ICT Standardization Forum for India (GISFI)、IEC Advisory Committee on Telecommunication (ACTEL)、ISO/IEC JTC1、American National Standards Institute (ANSI)、Open Mobile Alliance (OMA)、Society of Cable Telecommunications Engineers (SCTE)が参加しました。他の標準化組織にとって、グルーバル標準化の重要性は今後の貿易、ビジネス競争、ユーザの取り込み、相互接続の実現などの観点で益々高まっており、GSCに加入することへの関心が高まっています。TTCが今年の７月に国際連携の関係を確立したGISFIのメンバーシップについて、今後議論される予定ですが、GSCメンバーになるためには、標準化仕様を制定し管理できる実績のある組織である必要があり、メンバーシップの扱いは厳しいです。

GSC会合構成は主に３つの部分（全体プレナリー、有線系作業グループのGTSC（Global Telecommunications Standards Collaboration）と無線系作業グループのGRSC（Global Radiocommunications Standards Collaboration）のセッション）で構成され、GSCメンバー報告、技術トピック、特別作業グループトピックに別け議論されました。

私は、TTCを代表（HoD：Head of Delegation）として参加し、前回会合である2010年8月開催のGSC-15以降のTTCの標準化活動について報告しました。

　技術トピックは、重要課題HIS（High Interest Subject）として合意された課題について、課題毎の議論を行います。HISは有線系GTSCセッションと無線系GRSCセッション向けの課題に分類され、有線と無線の双方に関心のあるHIS課題はGSCプレナリーで議論され、議論の結果はResolution（決議）としてまとめらています。

　現状のHIS課題リストを以下に示します。Prime PSO（Participating Standards Organization)とは、HIS課題の取りまとめを担当する組織を示しており、TTCは、「ICT and the environment」と「Interoperability」の担当であり、それぞれ「ICT気候変動専門委員会」と「インターオペラビリティ（AG）アドバイザリーグループ」が関連します。

　TTCからの寄書としては、上記のHIS課題の他、「IPTV」、「Machine-to-machine」、「Home　networking」、「Cloud computing」の各HIS課題についての情報提供と提案を行いました。

表：　HIS（High Interest Subject）リスト

　HIS課題の議論に加え、今回のGSC会合では、日本の東日本大震災を踏まえ、災害防止と災害救援におけるICTシステムの重要性を再認識し、災害を考慮した標準化の推進やネットワークインフラの耐性確保のための検討を行うため「緊急通信タスクフォース」の設立を合意しました。日本は被災体験を発信するとともに、災害に強いICT構築のための検討をリードしていく責任があり、TTCとしても検討に貢献していくべき課題として捉えています。TTCでは5月16日のマエダブログで紹介させていただきましたが、災害に強い通信ネットワークに関する課題に取り組んでおります。「災害に強いICTを考えるワークショップ」も既に３回開催され、幅広い専門家の皆様と意見交換を行ってきており、ITU-Tへの提案を含め、必要な標準化課題の検討に結びつけていく予定です。

　GSC-16会合の報告資料や決議、共同声明などの情報はhttp://gsc16.ca で得られます。ご不明な点についてはTTC事務局にお問い合わせください。

　次回のGSC-17会合は、韓国の済州島で、2013年5月20－23日にTTAの主催で開催される予定です。

　今回のブログの最後に、写真4はGSC会合のTTC参加者、写真5は大西洋海洋博物館での歓迎レセプション模様、写真6は歓迎レセプションでのハリファクス音楽隊。写真7は地元名産のロブスター料理で、重さ１kg以上で７０ドルもしました。