![マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話](/application/files/thumbnails/xsmall/4516/1076/3375/bnr-maedablog2021.png)
韓国済州島でのスマートグリッド実証実験を視察して
6月8日から10日の期間、済州島フェニックスアイランドでのスマートグリッドに関するITU-T Focus Groupの第7回会合(注1)の開催に併せて企画された韓国済州島での韓国スマートグリッド実証実験プロジェクト(注2)を視察する機会を得ました。このプロジェクトの中で、中心的な役割を果たしている通信事業者の韓国通信(KT)と韓国電力(KEPCO)の展示館を視察することができました。
韓国は、電力消費が急増しており、今では世界10位のエネルギー消費国であり一人あたりのエネルギー消費量ではカナダ、米国に次ぎ世界3位と、その急増ぶりはOECD加盟国の中でも大きく、CO2削減や電力消費の効率化は重要な課題となっています。
また、韓国は、スマートグリッドに関するロードマップとして、2030年までに、ピーク電力消費を10%削減し、自然再生可能エネルギーの割合を11%までに増加し、電気自動車を240万台まで広める目標を立てています。その中で、2009年から2012年までにスマートグリッドのテストベッドを済州島(チェジュ島)で構築し実験検証を進め、2020年までに大都市エリアに展開、2030年までに全国に展開する計画です。
済州島実証実験に参加する企業・団体は200社を超え、投資額約200億円とも言われ、大規模なものです。
済州島のスマートグリッド実験では、次の5つを重点分野として、それぞれ企業による複数のコンソーシアムを構築して、実験を推進しています。
5つの重点分野として挙げられている項目は、
1)スマートパワーグリッド(高度電力配信網の構築)、2)スマートプレース(エネルギーの効率的利用のためのホーム家電などのインフラ構築)、3)スマートトランスポーテーション(電気自動車の充電系などの交通インフラ構築)、4)スマートリニューアブル(太陽光や風力発電などのクリーンエネルギーの活用)、5)スマートエレクトロシティサービス(多彩な電気料金設定などの新規電気サービスの提供)です。
最初の視察先は、KTの「Smart Green City」展示館(写真2)。
次の展示館、韓国電力会社KEPCOの「スマートグリッド情報センタ」(写真5)までは、電気自動車に試乗させてもらい移動しました。一回のフル充電は30分間で完了し、100km程度の走行が可能とのこと。現状の走行可能距離は、日本製の電気自動車に比べ短いようではありますが、実証実験には十分な製品であるという印象を強くしました。
KEPCOは、政府が51%の株式を保有する半官半民企業で、韓国で唯一の電力会社であり、日本の環境とは異なります。展示館はスケールも大きく、電力会社らしく、電力送電の効率化技術、自然再生可能エネルギーの安定化技術などの電力系技術の展示が印象に残りました。また、KTと同様に、家庭での電力制御と見える化のためのスマートメータ(写真6)やスマートタグ(写真7)、スマートホーム家電展示(写真8)の規模は大きいものでした。
![写真3:電気自動車の充電システム](https://www.ttc.or.jp/application/files/8215/6101/8140/blog20110615_03.jpg)
![写真4:家庭での電力の見える化](https://www.ttc.or.jp/application/files/5815/6101/8141/blog20110615_04.jpg)
![写真5:KEPCOスマートグリッド情報館](https://www.ttc.or.jp/application/files/1115/6101/8141/blog20110615_05.jpg)
![写真6:KEPCOスマートメーター](https://www.ttc.or.jp/application/files/3315/6101/8141/blog20110615_06.jpg)
![写真7:KEPCOスマートタグ](https://www.ttc.or.jp/application/files/6215/6101/8140/blog20110615_07.jpg)
![写真8:KEPCOスマートホーム家電展示](https://www.ttc.or.jp/application/files/3115/6101/8140/blog20110615_08.jpg)
今回の韓国訪問を通じて、韓国内のスマートグリッドに関する標準化については、KATS(The Korean Agency for Technology and Standards)の幹部の方と知り合いになりましたが、KATSでは、スマートグリッドに関して、約170社が参加して、韓国内の標準化連携の体制を構築しているということでした。
また、韓国、中国、日本の3国間には、CJK-SITE (China, Japan, Korea–Standards cooperation on Information Technology and Electronics)の連携の枠組みがあり、2010年7月に開催されたThe 9th Northeast Asia Standards Cooperation Forumでは、韓国の提案により、スマートグリッドに関する標準化について3国間の連携を図ることが合意されたことが紹介されました。これらはIECでの標準化活動を中心とした連携ということで、今までのTTCはあまり関与してきていませんでしたが、ITUでもスマートグリッドに関しての取り組みが始まり、TTCとしても従来のスマートグリッドAGでの取り組みに加えて、今年4月に設置した「業際イノベーション本部」での新たな取り組みとして、必要に応じた連携を模索していきたいと考えています。
注1)http://www.itu.int/en/ITU-T/focusgroups/smart/Pages/Default.aspx