震災復興に向けたICTの課題
この度の東日本大震災により被害を受けられました皆様に、謹んでお見舞い申し上げます。また、一日も早い復旧復興を心よりお祈り申し上げます。
この未曽有の国難とも言うべき震災から立ち上がっていくためには、国をあげて、緊急の対策、復旧復興に向けて、その資源と英知を結集して取り組んでいかなければなりません。その中で我々TTCは、「今、何ができるか、何をなすべきか」という視点から、これまで培ってきた専門的知見や経験、財産を活かし、被災者支援や震災復興に役立つ形での活動を考えていく必要があると思います。
TTCでは、4月7日に、「FG-FN(Focus Group on Future Networks)成果物紹介ワークショップ」の中で、パネル討論「3/11を経た我々は将来の網のため何をなすべきか」を開催し、今回の震災でのネットワークインフラの被害状況と今後どのような課題を検討すべきであるかについての初めての議論の場を作りました。写真は、NTTアクセスサービスシステム研究所の木村秀明さんの講演からの引用です。
これらのメッセージは、ジュネーブで開催されているITU-TのNGN-GSI会合(2011/5/9-5/20)の中で、5月12日に、“Disaster in Japan: lessons for FNs”という特別セッションが企画され、木村さんより"Technologies for quake- and tsunami-resistant access network infrastructure"の講演が行われました。ITU-Tの国際の場でも、日本発での防災に役立つICT技術の検討が加速されることを期待しています。
東日本大震災では、大地震、大津波、原発損傷による放射能汚染がトリプル・パンチとなっていますが、これらに対して、ICTが考えなければいけないこと、できることは何か? 災害時の通信手段としてインターネットが活躍したとしても、それを支えたバックボーンネットワークが健全でなければならず、よりRobustでFlexibleなインフラの構築技術を考慮するべきでしょう。ただ、耐震や防水に優れた通信インフラの検討というだけでは不十分です。
今まで日本の電力網は世界一安定で信頼性が高いと言われてきましたが、今回の東日本大震災と福島原発事故による、電力の途絶や計画停電を経験し、常時給電の前提は崩れ、蓄電バックアップ機能や徹底的な低消費電力化による節電機能、太陽光や風力等の自然エネルギーの活用、災害からの復旧のしやすさ等を意識した通信インフラの構築が新たなテーマとなるでしょう。
破壊された通信設備や異常な輻輳のためになかなか繋がらなかった携帯電話網に代わり、電気自動車や可搬型ノードを活用した「アドホックネットワーク」的な通信方式の実現も有効になるでしょう。また、電力消費量、放射能、地震・津波・天気などの様々な情報のモニタリングと安心・安全な情報発信の仕組みなどもICTが貢献できる側面と言えるでしょう。
TTCでは、今後「災害に強いICTを考えるワークショップ」をテーマとして継続的な議論の場を提供したいと考えており、7月上旬には、第2回の「災害に強いICTを考えるワークショップ」を開催したいと思います。また、4月から新設した「業際イノベーション本部:I3C」のもとで、スマートグリッドやスマートカーの検討の中で、災害に強い通信ネットワークの課題に積極的に取り組んでいきたいと考えております。
私たちは、この未曽有の危機を乗り越え、新しい日本社会を創造し、世界に対して貢献することができるかどうかが問われています。TTCは、公益を追求する強い意志と新しい社会を創造しようという企業家精神で、尽力していければと考えております。