頭文字SDGシリーズ:タイ国におけるICTを活用した社会課題解決アイデアソンの実施
2024年11月23日(土)、24日(日)に、タイ国バンコクのカセサート(農業)大学において、TTCのBSG専門委員会とカセサート大学、タマサート大学との共催のアイデアソン、“The Climate-Resilient Agri Tech Innovation Challenge: Adapting Agriculture for a Sustainable Future(気候変動に強い農業技術革新への挑戦: 持続可能な未来に向けた農業の適応」”を開催しましたので報告します。
背景
TTCのBSG専門委員会は、2023年9月にカセサート大学との共催のワークショップ“IoT human resources development~ Bridging the gender gap ~”をバンコクで開催しました。このワークショップでは、IoTを活用した社会課題を解決する取り組みの共有、IoT女性専門家の育成、若手IoT人材育成のためのアイデアソンのテーマ設定を目的として実施しました。また、ワークショップ開催にあわせて、タイ国の社会課題解決に取り組む女性専門家の活動を視察させて頂きました。そこでは、図1にあるように、稲作におけるメタンガス発生を抑制するため、田んぼの水位をパイプで測定し、その状態を旗の色で示し、周辺の稲作農家の方々が現地に出向いて旗の色で対応するという話をお聞きしました。紹介して頂いた環境配慮の取り組みは、アナログ的な取り組みが多かったのですが、普段から利用している携帯電話を活用して、画像で一斉に配信する等、アナログとデジタルの技術を融合し、より温室効果ガス抑制効果の高い取り組みにできると当時感じたところです。
今回のアイデアソンは、このような農業に関する社会課題の取り組みと、農業やコンピュータ科学を学ぶ学生さんのアイデアを融合したデジタルトランスフォーメーションを推進し、社会課題解決に寄与することを期待して実施されました。

アイデアソン概要
1.目的
本アイデアソンでは、参加者が創造力を発揮してデジタル技術を活用し、問題を解決したり、制約を減らしたり、気候変動の影響を軽減したりすることを奨励することに焦点を当てています。特に、タイの主食であり、世界の主要な食糧の一つである米の栽培に重点を置くことを目的としました。
2.選考過程
本アイデアソンにはカセサート大学から17チーム、タマサート大学から4チームが参加しました。参加チームには、タイ国内において、農業分野の気候変動トピックとIoT、センサー、情報プラットフォームの技術を紹介するワークショップを受講してもらい、提案書を作成してもらいました。これら提案書を事前に審査した結果、9チームが選抜され、アイデアソン本選に臨みました。
表1 スケジュール

3.アイデアソン本選
アイデアソン本選では、2024年11月23日(土)に選抜された9チームとメンターによるディスカッションが実施されました。翌11月24日(日)には、各チームによりプレゼンテーションが行われ、その内容を審査した結果、上位3チームに賞状と賞金が送られました。
参加者:メンター・事務局:14名(日本4名、フィリピン1名、マレーシア2名、タイ7名)、学生:9チーム 33名
日本からの参加者(敬称略):参加4名:山本秀樹(OKI)BSG専門委員会委員長、山田徹(NEC)BSG専門委員会副委員長、 岩田・角方(TTC事務局)
今回のアイデアソンは、マレーシアのサラワク大学とフィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学のSHAREメンバーにもメンターとして協力いただき実施されました。
海外からの参加者:Prof. Dr. Gregory Ligot Tangonan (フィリピン)
Prof. Dr. Tan Chong Eng (マレーシア)
Dr Jaya Laxshmi (マレーシア)
表2 アイデアソン1日目(11月23日)

表3 アイデアソン2日目(11月24日)


4.優勝チームの報告内容
提案名:
気候変動に強い農業技術
目的:
・ デジタル技術を活用して農業の効率と持続可能性を向上させる。
・ 特に米の栽培に焦点を当て、コスト削減、効率向上、環境負荷の軽減を目指す。
提案システムの主要機能:
1. 農場データ管理:
・農場の位置情報、天候、災害警報、IoTデバイスのデータを管理。
・ 簡単な操作で農地の面積を計算。
2. 気候スマート米栽培技術:
・レーザー土地整備 (LLL):土地の平坦化で作物の質向上、コスト削減、害虫問題の軽減。
・ 交互湿潤乾燥 (AWD):水管理技術で資源を節約し、温室効果ガスの排出を削減。
・土壌分析に基づく肥料適用:土壌分析を通じて肥料の使用を最適化し、コスト削減と環境負荷の軽減。
・藁と株の管理:焼却せずに藁を土壌に還元し、土壌の健康を改善し、追加収入を提供。
3. カーボンクレジット:
・複数のプロジェクトからデータを自動収集し、カーボンクレジット申請を支援。
4. チャットボット:
・農業に関するアドバイスを提供するAIチャットボット。
・テキストと音声での対話が可能。
5. LINE通知:
・天気予報、災害警報、IoTセンサーのデータ通知。

6. システム導入効果:
・農業の効率化と持続可能性の向上。
・簡単な操作で利用可能。
・環境負荷の軽減とカーボンクレジットの取得支援。
今後の予定
アイデアソンは、今回のタイで行われたものの他、マレーシア、フィリピン、インドネシアの連携大学と実施してきました。次年度以降、ベトナムの連携大学との間で実施する予定です。
