WTSA-24
2024年10月15日(火)から10月24日(木)まで、インド共和国ニューデリーのPragati Maidanにて、WTSA-24(世界電気通信標準化総会:4年に1回開催されるITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)の総会)会合が開催されました。会合には164ヵ国の主管庁から約3,700名(オンライン参加を含む)が参加しました。日本からは、総務省国際戦略局 野村 栄悟次長を団長(HoD)とし、総務省7(1)名、外務省2名、KDDI6(2)名、NICT5名、NEC2名、NTT5名、NTTドコモ1名、OKI1名、楽天モバイル1名、ワシントンコア2(1)名、日本ITU協会5(1)名、東京大学1名、EduHub1名、TTC1名の総数40(5)名が参加しました(( )内はオンライン参加者数)。女性参加率は、NoW(Network of Women)で目標としていた35%に対して26%でした。
初日のオープニングプレナリ は、インドのモバイルコングレス24(IMC24)と併せて開催され、モディ首相が参加し、厳戒体制の中で実施されました。その模様は、国内のテレビ放送が生放送で配信していました。
本ブログでは、WTSA-24会合の全体概要を紹介しますが、WTSA関連の結果については、TTC国際連携アドバイザリーグループのTSAG対応タスクフォース会合で報告・審議しますので、ご関心のある方はTTCにお尋ねください。
1. プレナリ概要
1.1 会議の構成
会議は、全体会議(プレナリ)配下に、COM1(運営)、COM2(予算)、COM3(作業方法)、WG3A(他国連組織との協調等)、WG3B(連携強化等)、COM4(作業計画、組織)、WG4A(インターネット関連決議等)、WG4B(標準化格差是正)、COM5(編集)で構成されます。全体会合の議長は、ホスト国のインドのRitu Ranjan Mittar氏(SG11議長)が務められました。日本からは、KDDIの宮地 悟史氏(SG9議長)がCOM3議長、NECの永沼 美保氏(TSAG副議長)がCOM4の副議長を務められました。
1.2 次期研究会期におけるSG体制・課題の承認
次期研究会期(2025-2028年)におけるSG(研究委員会)の体制については、 日本が提案したSG9(音声映像コンテンツ伝送及び統合型広帯域ケーブル網)とSG16(マルチメディア及び関連デジタル技術)の統合がオープニングプレナリで合意され、クロージングプレナリにて尾上 誠蔵TSB局長から、統合後のSGの名称をSG21とすることが発表されました。また、決議2として、各SGの次期研究会期での課題が承認されました。
表1 次会期SGの新体制
SG等 | 活動内容 |
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SG2
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電気通信及びICTの運用側面
サービス規程・定義、ナンバーリング、アドレシング、ルーティング関連
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SG3
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料金会計原則並びに国際電気通信・ICTの経済及び政策課題
計算料金制度改革、精算原則関連
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SG5
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環境、気候変動、循環経済及び電磁界(BMF)
網及び装置保護、電磁環境の影響に対する防護、ICT気候変動関連
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SG11
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信号要求、プロトコル、試験仕様及び偽造ICTデバイス対策
IP網、NGN等の信号及びプロトコル並びにNGN等の試験仕様関連
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SG12
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性能、サービス品質(QoS)及びユーザー体感品質(QoE)
全ての端末、ネットワーク及びサービスのQoS及びQoE関連
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SG13
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将来網及び進行ネットワーク技術
移動及びNGNを含む将来網の要求条件、アーキテクチャ、評価、融合関連
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SG15
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伝送、アクセスおよびホーム網のためのネットワーク技術と基板設備
伝送網及びアクセス網基盤、システム、装置、光ファイバー及びケーブル関連
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SG17
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セキュリティ
サイバーセキュリティ、スパム対策及びID管理等IoT
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SG20
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IoT、デジタルツイン並びに持続可能なスマートシティ及びコミュニティ
IoTとスマートシティ、スマートコミュニティを含むアプリケーション
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SG21
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マルチメディア、コンテンツ配信及びケーブルテレビの技術
マルチメディア関連及び統合型広域帯ケーブルネットワーク、映像・音声伝送
(IP TVサービス、車載マルチメディア通信、映像・音声符号化等)
WTSA-24にて新設(旧SG9、SG16)
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TSAG
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電気通信標準化諮問委員会
ITU-Tの活動の作業方法、優先事項、計画
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1.3 決議(Resolution)案の審議
総会の成果は、主に決議(Resolution)という形で、会議の意思を反映した文章でまとめられ、今後の政策推進や変更などに影響を与えます。今回のWTSA-24においては、469件の決議案が審議され、WTSA-20から引き続き変更がないものが10件、改定決議が45件、新規決議が8件採択されました。また1件の決議が目的達成で廃止となりました。
8件の新規決議の内容は、以下のとおりです。
- ITU-T 次世代専門家の参加促進、プログラム開発
- メタバース標準化の推進と強化
- 電気通信/ICT を支援する AI 技術に関する ITU T の標準化活動
- 持続可能なデジタルトランスフォーメーションに関する標準化活動の強化
- 車載通信のための標準化活動の推進と強化
- デジタル公共インフラに関する標準化活動の強化
- ITU電気通信標準化部門における戦略立案
- 緊急通信のための端末由来の発信者位置情報の提供
1.4 SG議長・副議長指名
日本から選出されたSG議長・副議長を表2にまとめました。皆様方の今後のご活躍をお祈り申し上げます。SG9議長の宮地 悟史様 (KDDI)、SG5副議長の高谷 和宏様(NTT)、SG16副議長の山本 秀樹様(OKI)、SG17副議長の三宅 優様(KDDI)は、議長又は副議長として2期を務められ、任期満了となりました。長い間ご苦労様でした。
このほか、ロシア及び欧米等からのSG議長、副議長候補者に対して信任投票が行われ、候補者の承認又は否認がなされました。
表2 日本のTSAGおよびSGの議長・副議長
SG等 | 活動内容 | 役職 | 氏名(所属) | 備考 |
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SG13
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将来網及び新興ネットワーク技術
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議長
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谷川 和法(NICT)
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再任
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TSAG
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ITU-Tの活動の作業方法、優先事項、計画
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副議長
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永沼 美保(NEC)
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再任
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SG3
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料金及び会計原則並びに国際電気通信・ICTの経済及び政策課題
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副議長
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本堂 恵利子(KDDI)
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再任
|
SG11
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信号要求、プロトコル、試験仕様及び偽造ICTデバイス対策
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副議長
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釼吉 薫(NICT)
|
新任
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SG12
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性能、サービス品質及びユーザー体感品質
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副議長
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山岸 和久(NTT)
|
再任
|
SG17
|
セキュリティ
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副議長
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磯原 隆将(KDDI)
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新任
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SG20
|
IoT、デジタルツイン並びに持続可能なスマートシティ及びコミュニティ
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副議長
|
山田 徹(NEC)
|
再任
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SG21
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マルチメディア、コンテンツ配信及びケーブルテレビの技術
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副議長
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河村 圭(KDDI)
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新任
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これらの結果の詳細については、WTSA-24の公式の成果である決議文書と修正勧告、議長と副議長の指名結果、SGの課題(Question)構成をまとめたITU-T事務局からの会議報告(Draft Proceeding)をご参考にいただければと思います。
2.サイドイベント
今回のWTSA-24においては、多くのサイドイベントが開催されました。WTSA開幕前日の10月14日(月)に第5回Global Standards Symposium(GSS)が昨年G20サミットが開催された会議室で実施され、また、終了後には日本レセプションが開催されました。
10月15日(火)から18日(金)までは、インドモバイルコングレス(IMC)、10月17日(木)には、Network of Women(NoW)、10月21日(月)から23日(水)までITU Kaleidoscope、10月14日(月)から24日(木)までITU EXPO、10月17日(木)に、ITU-WHO Safe ListeningおよびITU-UN Disaster Risk Reduction、そして10月23日(水)にInnovation Xchangeが開催されました。Innovation XchangeのNextGen Networks(5G/6G)セッションのモデレータとして西尾 美哉氏(EduHub)が務められました。
3.所感
現地で会合参加対応頂きました参加者の皆さまには、食事や大気汚染の問題があるなか、大変ご苦労様でした。多くのサイドイベントが開催され、ITUのイベント祭りの中でWTSAの会合が朝から夜まで粛々と開催された印象でしたが、同時にインド政府の支援の大きさを感じました。
次会期に向けて新たな決議が承認されました。TTCとしては、新決議に関する課題についての国内対応を会員企業の皆さまと進めさせて頂ければと思っておりますので、宜しくお願いします。