第4回APT WTSA-24準備会合
1.はじめに
2024年6月24日(月)から6月28日(金)までオーストラリアのアデレードにおいて、オーストラリア政府主催により、第4回APT WTSA-24準備グループ会合がハイブリッド形式で開催されました。24ヵ国の主管庁、15の賛助会員、4つの関連国際機関から対面での参加者125名も含め244名が参加しました。主管庁の上位国参加者数は、中国43名、インド24名、オーストラリア23名、韓国18名、タイ18名、カンボジア12名、マレーシア12名、日本12名(2名)*でした。日本からの賛助会員の参加者は、KDDI 4名(1名)、NEC 2名(1名)、NTT 2名(1名)、NTTドコモ(1名)、OKI(1名)、NICT(3名)、TTC4名(3名)でした。
*(現地参加者数)
4年に一度開催されるITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)の総会であるWTSA-24(世界電気通信標準化総会)が、2024年10月15日から24日まで、インドのニューデリーで開催される予定です。WTSA-24は2025~2028年のITU-Tにおける研究体制及びその議長・副議長職のポスト、新技術の研究課題等を決定する重要な会合です。APT WTSA-24準備会合は、WTSA-24に向けたAPT(アジア・太平洋電気通信共同体)加盟国(38ヵ国)における準備会合として開催されるものです。
2.プレナリ概要
APTの近藤勝則事務総局長、ITUの尾上誠蔵TSB局長、ヒョンジュンキムASTAP議長、主催者のオーストラリア政府より、ブレンダン・ダウリングソク サイバー担当大臣、サミュエル・グルンハート インフラ運輸地域開発通信芸術省第一次官補より挨拶がありました。またITUおよび他の国際・地域機関(RCC(Regional Commonwealth in the Field of Communications:電気通信地域連邦(旧ソ連地域))、CEPT(European Conference of Postal and Telecommunications Administrations: 欧州郵便電気通信主管庁会議)、CITEL(Inter-American Telecommunications Commission:インターアメリカ電気通信委員会)からWTSA-24の準備状況報告がなされました。APT事務局より、WTSA-24に向けたAPTの準備状況の報告、WG3のバーチャル中間会合の報告、インド政府より準備会合の副議長およびWG1の副議長の変更の提案がありました。
3.各WGでの主な議論
WG1(作業方法:議長 山本浩司氏(日本:NTT))、WG2(組織構成:議長 Kangchan Lee氏(韓国)、WG3(規制/政策と標準化関連事項:議長 Li Cheng氏(中国))の3つのWGで議論しました。前回同様 WG3への提案文書が多く、予定の時間割り当てを変更して対応しました。54件の入力文書のうち、45件が新規および更新の文書で、内13件がAPT WTSA-24-3およびAPT WTSA-24-WG3の中間会合からの文書でした。
3.1 WG1
7件の入力文書および前回6件の文書を審議、WTSA決議1(ITU-T手続き規則)、22(WTSA間のTSAG権限)、44(発展途上国と先進国との間での標準化格差の是正)、55(ITU-T活動におけるジェンダー平等の促進)、67(連合の公用語のITU-Tでの平等な使用)、80(ITU-T出版物作成へのメンバの積極的参加の推奨)をPACP草案、決議40(ITU-T作業の規制的側面)をPACP草案候補として承認しました。決議80をPACP文書(SUP)として発出しました。
3.2 WG2
決議78(e-healthサービスへのアクセスを向上するためのICT活用と標準)をPACP草案として承認しました。決議99(ITU電気通信標準化部門SGの組織改革の検討)をPACP草案候補として残しました。決議2(ITU-T SGの責任及び担務)の文書はありませんでした。
3.3 WG3
36件の入力文書と7件の前回の仮文書を審議しました。また、3つのアドホックグループ(AI、重要インフラ、ITS)で新決議を議論しました。決議47(国別コードトップレベルドメイン)、50(サイバーセキュリティ)、52(スパムへの対策/対抗)、58(発展途上国向けのCIRT機能設備の促進)、60(識別/番号システムの進化とIPベースのシステム・ネット枠との統合に向けた検討)、61(国際電気通信番号資源の悪用及び誤用への対策/対抗)、64(IPアドレスの割当及びIPv6への意向と普及の促進)、65(発信番号の送出、発信回線特定と発信者情報特定)、70(障がいや特別ニーズを持つ人々のための電気通信/ICTのアクセシビリティ)、72(電磁界への人体ばく露の測定及び評価に関する研究)、73(ICT、環境及び気候変動)、76(適合性及び相互接続性試験、発展途上国支援、将来的なITUマークプログラムの実現に関する研究)、84(電気通信/ICTサービス利用者の保護に関する研究)、88(国際モバイルローミング)、90(ITU-Tにおけるオープンソース)、93(4GとIMT-2020及び後継網と相互接続)、94(クラウドベースのイベントデータ技術のためのITU-Tの標準化作業)、95(サービス品質に関するベストプラクティス及び政策への意識を向上させるためのITU-Tイニシアティブ)、96(電気通信/ICT装置の偽造対策の ためのITU-Tの研究)、97(移動体通信端末の盗難対策)、98(世界的な発展のためのIoTとスマートシティ・コミュニティの標準化の強化)および新決議(デジタルID、メタバース、QKD)の24件のPACP草案を議論しました。また、決議20(国際電気通信番号、ネーミング、アドレス付与及び識別資源の割当と管理手順)、29(国際電気通信番号ネットワークにおける代替通信手段)、77(ITU-TにおけるSDNの標準化活動)、79(電気通信/ICT機器から生じるe-wasteの扱いと管理における電気通信/ICTの役割及びその手法)、84(電気通信/ICTサービス利用者の保護に関する研究)、92(IMTの非無線分野に関するITU-T標準化活動の強化)、新決議(DX、AI)の8件のPACP草案候補を議論しました。決議44(発展途上国と先進国との間での標準化格差の是正)修正入力文書については議論がありませんでした。
AIに関する新決議については、PACP草案候補として、韓国、中国、インド、マレーシア、ベトナム、イラン、タイが支持、日本とオーストラリアは、AIの安全性と信頼性の範囲と定義についての懸念を表明しました。草案グループを設置して継続議論します。
4.WTSAに向けた準備研修ワークショップ
準備会合前日の24日(月)、オーストラリア政府、APT主催でWTSAに向けた準備研修ワークショップが開催され、47名が参加し対面形式で実施されました(TTCからは吉野絵美企画部長と岩田が参加)。日本からは、APT WTSA-24準備会合WG2副議長の永沼美保氏(NEC)が、モジュール4のセッションでAPT WTSAの提案書の作成方法と文書の有効期間について講義を行いました。
本ワークショップの目的は、国際会議の一般的な構造を理解すること、APTとITU(WTSA)の意思決定プロセスに関する洞察を深めること、電気通信/ICT標準の知識を広げること、プレゼンテーションおよび交渉スキルの向上となっています。本ワークショップは、WTSAのAPT準備活動に参加するのは初めての方、WTSAのAPT準備と準備会議への提案の意思決定プロセスを理解したい方、標準化活動と関連する政策決定の担当者を対象に実施されました。
表1 WTSAに向けた準備研修ワークショップスケジュール
時間 | 研修項目 |
---|---|
08:50-09:30
|
モジュール1:電気通信/ICT標準の概要(オーストラリア政府)
|
09:30-10:30
|
モジュール2:国際会議の概要(オーストラリア政府)
|
11:00-12:30
|
モジュール3:ITU-TとWTSAの概要(ITU-T)
|
13:30-15:00
|
モジュール4:WTSAのためのAPT準備会議の概要(APT)
|
15:30-16:30
|
モジュール5:WTSAを最大限に活用する-総会中と総会後(ITU-T)
|
16:30-17:00
|
まとめ、次のステップ、受講者からのフィードバック
|
5.今後の予定
第5回APT WTSA準備会合は2024年8月19日(月)から23日(金)までタイ政府主催によりバンコクで開催予定です。