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第3回APT WTSA-24準備会合

1.はじめに

 2024年4月30日から5月2日まで、カンボジアのシェムリアップにおいて、カンボジア郵電省主催による第3回APT WTSA-24準備グループ会合がハイブリッド形式で開催されました。この会合には、22ヵ国の主管庁、20の準メンバ、5つの関連国際機関から対面での参加者117名も含め260名が参加しました。主管庁の上位国参加者数は、中国28名、インド27名、カンボジア20名、韓国19名、タイ18名、日本11名(2名)でした。日本からの賛助会員の参加者は、KDDI 5名(1名)、NEC 2名、NTT 3名(2名)、NTTドコモ 1名(1名)、OKI 1名、NICT 2名(1名)、TTC 3名(2名)でした。
(現地参加者数)

  4年に一度開催されるITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)の総会であるWTSA-24(世界電気通信標準化総会)は、2024年10月15日から24日までインドのニューデリーで開かれる予定です。WTSA-24は2025~2028年のITU-Tにおける研究体制及びその議長・副議長職のポスト、新技術の研究課題等を決定する重要な会合です。APT WTSA-24準備会合は、WTSA-24に向けたAPT(アジア・太平洋電気通信共同体)加盟国(38ヵ国)における準備会合として開催されるものです。

2.プレナリ概要

  プレナリでは、APTの近藤勝則事務総局長、ITUの尾上誠蔵TSB局長、ヒョンジュン・キムASTAP議長、主催者のカンボジア郵電省のソク・プティブース郵電大臣より挨拶がありました。また、ITUおよび他の国際・地域機関(RCC(Regional Commonwealth in the Field of Communications:旧ロシア地域)、ATU(African Telecommunications Union:アフリカ電気通信連合)、CITEL(Inter-American Telecommunications Commission:米州電気通信会議))からWTSA-24の準備状況報告がありました。APT事務局より、WTSA-24に向けたAPT文書(ACP:APT Common Proposal:APT共同提案)、APTポジション、APT見解の承認手続きについて説明がありました。

3.各WGでの主な議論

  WG1作業方法:議長 山本浩司氏(日本:NTT))、WG2組織構成:議長 Kangchan Lee氏(韓国)、副議長:永沼美保氏(日本:NEC)他)、WG3規制/政策と標準化関連事項:議長 Li Cheng氏(中国)、副議長:本堂恵利子氏(日本:KDDI)他)の3つのWGで議論を行いました。前回同様WG3への提案文書が多く、予定の時間割り当てを変更して対応しました。前回決議関連寄書45件、今回決議関連寄書64件を含む計119件の寄書を審議しました。

3.1 WG1(作業方法)

  WG1では、15件の寄書を審議、8件のPACPs候補を決定しました。WTSA決議1(ITU-Tの手続き規則)、7(国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)との協調)、22(WTSA間のTSAG権限)、44(発展途上国と先進国との間での標準化格差の是正)、55(ITU-T活動におけるジェンダー平等の促進)、67(連合の公用語のITU-Tでの平等な使用)、80(ITU-T出版物作成へのメンバの積極的参加の推奨)の修正案7件と新決議1件をPACPs候補として作成中です。

3.2 WG2(組織構成)

  WG2では、9件の寄書を審議しました。WTSA決議78(e-healthサービスへのアクセスを向上するためのICT活用と標準)を修正した1件のPACPs候補を決定しました。また、決議2(ITU-T SGの責任及び担務)の付属書AからCの改訂を含むSG9およびSG16統合の問題に関する議論を次回TSAG会合まで中断するよう提案しています。

3.3 WG3(規制/政策と標準化関連事項)

  WG3では、83件の寄書のレビューと議論に基づき、27の起草グループと6つの特別グループを設置しました。

  WG3は27件のPACPs草案候補を特定しました。このうち23件はWTSA決議70(障がいや特別ニーズを持つ人々のための電気通信/ICTのアクセシビリティ)、88(国際モバイルローミング)、65(発信番号の送出、発信回線特定と発信者情報特定)、73(ICT、環境及び気候変動)、61(国際電気通信番号資源の悪用及び誤用への対策/対抗)、90(ITU-Tにおけるオープンソース)、58(発展途上国向けのCIRT機能整備の促進)、92(IMTの非無線分野に関するITU-T標準化活動の強化)、89(金融包摂ギャップを埋めるためのICT利用の促進)、97(移動体通信端末の盗難対策)、77(ITU-TにおけるSDNの標準化活動)、20(国際電気通信番号、ネーミング、アドレス付与及び識別資源の割当と管理手順)、50(サイバーセキュリティ)、52(スパムへの対策/対抗)、64(IPアドレスの割当及びIPv6への意向と普及の促進)、93(4GとIMT-2020及び後継網との相互接続)、84(電気通信/ICTサービス利用者の保護に関する研究)、98(世界的な的発展のためのIoTとスマートシティ・コミュニティの標準化の強化)、76(適合性及び相互接続性試験、発展途上国支援、将来的なITUマークプログラムの実現に関する研究)、29(国際電気通信番号ネットワークにおける代替通話手段)、95(サービス品質に関するベストプラクティス及び政策への意識を向上させるためのITU-Tイニシアチブ)、72(電磁界への人体ばく露の測定及び評価に関する研究)、79(電気通信/ICT機器から生じるe-wasteの扱いと管理における電気通信/ICTの役割及びその手法)の修正案です。また、1件はWTSA決議47(国別コードトップレベルドメイン)の抑制案、3件はPACPs草案候補として作成中です。

  特別グループでは、3件の新決議、WTSA決議48(国際化(多言語)ドメインネーム)、60(識別/番号システムの進化とIPベースのシステム・ネット枠との統合に向けた検討)、94(クラウドベースのイベントデータ技術のためのITU-Tの標準化作業)に関する6つの暫定文書を作成しました。次回会合でさらに議論を行う予定です。

4.その他

  APT地域のNetwork of Women (NOW)の代表であるNECの永沼美保氏から、WTSA-24の会期中の2024年10月17日にNOW4WTSA24のイベントを開催するとの案内がありました。NOWは、標準化とICT分野の女性のエンパワーメントを目的としています。尾上TSB局長はWTSA-24への女性の参加者比率35%を目標にしていますが、今回のAPT WTSA-24準備会合への日本からの女性の現地参加者は5名で、日本からの現地参加者の55%を占めました。近藤APT事務総局長は、APTとGSMA共催で開催される“APT Web Dialogue on Addressing the Mobile Gender Gap in the APAC Region”を紹介し、参加を呼びかけました。

5.今後の予定

  第4回APT WTSA-24準備会合は2024年6月25日から28日までオーストラリアのアデレードで開催される予定です。開催前日の6月24日には、WTSA-24会合の準備に向けたトレーニングワークショップがオーストラリア政府とAPTの共催で行われる予定です。

  なお、WG3の中間会合が5月27日から29日までオンラインで実施されました。

早朝のアンコールワット
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