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QKD(量子鍵配送)・ネットワークの標準化の取り組み

1.はじめに

  2023年11月9日(木)、TTCは量子ICTフォーラムとの共催で「ネットワークアーキテクチャ、高性能コンピューティング、情報セキュリティの融合に向けて」と題するオンラインセミナーを開催しました。また、2023年8月22日(火)~25日(金)にITU-T SG13のQKDのネットワーク課題を扱っているラポータ会合、2023年11月22日(水)~24日(金)にはITU-T SG17のQKDのセキュリティ課題を扱っているラポータ会合を日本(TTC会議室)で実施しました。  

2.TTC・量子ICTフォーラム共催オンラインセミナー「ネットワークアーキテクチャ、高性能コンピューティング、情報セキュリティの融合に向けて」

  TTCと量子ICTフォーラムは、2020年4月に覚書を調印し、標準化に関わる連携活動を行っています。これまで、2021年1月に「量子暗号の最前線と今後のビジネス化に向けて」2021年10月に「量子時代のセキュリティ最前線」2022年10月に「量子が拓く未来の産業」をそれぞれテーマとする共催イベントを実施してきました。

  今回開催したオンラインセミナーでは、QKDに関するTTCの標準化メンバー(Network Vison専門委員会 後藤良則委員長、NGNアップストリームサブワーキンググループ 谷川和法リーダ、セキュリティ専門委員会 三宅優委員長)を含めた専門家から、「ネットワークアーキテクチャ」、「高性能コンピューティング」、「情報セキュリティ」の3つの技術領域のホットトピックについてご紹介頂きました。今回235名の方々に参加頂きましたが、理解が難しい技術を、講師の方々が分かりやすく丁寧に説明して頂いたので、参加された方々にはQKD関連技術に対する理解度が高まった方々が多いと思います。パネルディスカッションでは、これらの技術の融合によってもたらせるサービス基盤の現状の取り組み、今後の研究開発の戦略、実証テストベッドの在り方、人材育成や標準化も含めた今後の課題について議論を行いました。ご多忙の中、ご講演頂きました講師の方々に御礼申し上げます。

3. ITU-T Q16/13ラポータ会合

  2023年8月22日(火)~25日(金)、ITU-T Q16/13(Future Networks: Trustworthy and Quantum Enhanced Networking and Services)及びQ6/13 Networks beyond IMT2020: Quality of service(QoS)mechanisms)ラポータ会合を、日本の関連企業のホストにより、約30名の参加者を得てTTC会議室にてハイブリッド開催しました。SG13の課題16では、日本関連企業がTokyo QKDNの実証実験でのSSN(Secure Storage Network)の要求条件とアーキテクチャの標準化を推進しています。今回のラポータ会合では22件の寄書を審議しましたが、NICT、NEC、東芝からSSN要求条件規定(Y.QKDN_SSNreq)とSSNアーキテクチャ規定(Y.QKDN_SSNarch)の改版が提案され、審議の結果、合意が得られました。

ITU-T Q16/13ラポータ会合の様子
ITU-T Q16/13ラポータ会合の様子

4. ITU-T Q15/17ラポータ会合

  2023年11月22日(水)~24日(金)、ITU-T Q15/17(Security for/by emerging technologies including quantum-based security)ラポータ会合を、日本の関連企業がホストして、TTC会議室で開催しました。約20名が参加したこの会合では、寄書8件を審議しました。このうち、NICT、NEC、東芝からは今回の会合における全寄書の半分に当たる4件の寄書が提案され、審議の結果、以下のとおり、各々ドラフトが改版されました。

  • X.sec_QKDN_profr: QKDネットワークにおける量子鍵分散(QKD)プロトコルのフレームワークの修正提案
  • X.sec_QKDN_tn: コンセントのための量子鍵配布ノードの保護のためのセキュリティ要件と設計の修正提案
  • X.sec_QKDN_CM: 量子鍵配布ネットワークのセキュリティ要件と対策–制御と管理の修正提案
  • X.sec_QKDN_AA: QKDNにおける認証と認可の修正提案

  来年1月末にジュネーブで開催される次回ITU-T SG17会合においてX.sec_QKDN_tnがコンセントとなる予定です。

5.おわりに

  今回のブログでは、量子ICTフォーラムとの共催イベントと、TTCが会合開催を支援したQKDN関連のITU-T SG13及びSG17のラポータ会合について紹介しました。QKDN関連のTTC標準は以下のとおりです。

標準番号 タイトル
JT-3800 量子鍵配送ネットワークの概要
JT-3801 量子鍵配送ネットワークの機能要求条件
JT-3802 量子鍵配送ネットワークの機能アーキテクチャ
JT-3803 量子鍵配送ネットワーク‐鍵管理
JT-3804 量子鍵配送ネットワーク-制御と管理
JT-3808 量子鍵配送ネットワークとセキュアストレージネットワーク統合フレームワーク
JT-X1710 量子鍵配送ネットワークのセキュリティフレームワーク
JT-X1712 量子鍵配送ネットワークのセキュリティ要求条件と対策‐鍵管理

  今回の2つのラポータ会合での寄書の数からもITU-TにおけるQKD関連の標準化の活発さを感じます。将来を支える新技術において日本が先導している事例として他技術においても参考になると思います。関係者の尽力に感謝するとともに、国内標準化組織として引き続き貢献させて頂きたいと思っております。