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頭文字SDGシリーズ: 第19回SHARE会合の開催

    2023年10月16日(月)~19日(木)、東南アジア5ヵ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)からの行政担当および学界のステークホルダを招聘し、東京と北九州市で第19回SHARE会合を開催しました。

背景

  TTCは、2007年に普及推進委員会を設置し、”SHARE”(Success & Happiness by Activating Regional Economy)をスローガンに、共生・互恵社会の実現を目指し、アジア各国と連携し各国遠隔地域での情報格差解消に向けICTを利活用したソリューションの普及を推進してきました。2013年から本活動を、BSG(標準化格差解消)専門委員会において継承し、継続しております。APT(Asia-Pacific Telecommunity)へのプロジェクト提案、パイロットモデルの構築を通して、ルーラルエリアでの社会課題解決ソリューションへのニーズ・有用性の把握し、その成果をASTAP(APT Standardization Program Forum)のBSGエキスパートグループでケーススタディのハンドブックを作成しています。それらのICTソリューションをアジアの他地域にも展開可能となるよう、ルーラルエリア共通の要求条件や導入ガイドライン等を「ソリューション利用標準」として標準化し普及させています。

参加者

  今回の会合に招聘した方々は以下のとおりです。

インドネシア
 
 
Kitso Kusin主任研究員
パランカラヤ大学
Tutun Juhana教授
バンドン工科大学
フィリピン
Gregory Tangonan教授
アテネオ大学 アテネオイノベーションセンタ
マレーシア
 
Khairuddin Ab. Hamid副学長
サラワク工科大学
Fitri Suraya Mohamad教授
サラワク大学
タイ
 
Anan Pusittigul先生
カセサート大学 アドバイザ
Asannee Kawtrakul教授
カセサート大学
ベトナム
 
 
Tuyen Dao Ngoc氏
ベトナム情報通信省
Binh Tran Quoc氏
ベトナム情報通信省
Thinh Tran Ngoc氏
ホーチミン工科大学

    今回、BSG専門委員会メンバー、SHARE活動の発起者である井上友二TTC顧問に参加頂きました。

会合模様

  東京での会合(TTC会議室)では、招聘者から前回会合以降の各国のICTによる社会課題解決への取り組みについて報告がありました。また、BSGメンバーのOKIから、インフラモニタリングソリューション技術をメンバー各国に展開する可能性について提案がありました。今後BSG専門委員会として支援していく予定です。

  北九州市では、九州工業大学の石井和男教授のご厚意により響灘菜園を視察させて頂きました。響灘菜園は2005年にJ-POWERとカゴメ株式会社が設立した、栽培面積8.5ヘクタールの日本最大規模のトマト栽培施設です。温室の暖房にLPG(液化石油ガス)を使用して、大気汚染の防止に寄与するとともに、燃焼時のCO2を回収しハウス内に循環させてトマトの光合成に利用しています。九州工業大学が開発中のトマト収穫ロボットを紹介頂きました。

  続いて訪問した九州工業大学では、響灘菜園で拝見した収穫ロボットの研究開発のお話を伺いました。九州工業大学では、このほかにも携帯のLiDAR(ライダー)機能を活用して視覚障がい者のプラットフォームからの転落を防止するアプリケーションやシステムによるみかんの選別など、学術研究の成果を様々な社会課題解決のために取り組まれており、その姿勢に参加者一同感銘を受けました。今後、プロジェクトでの連携ができればと思います。

  今回の北九州市への訪問は、フィリピンのアテネオ大学で、以前APTのプロジェクトのメンバーで現在ポスドクのDominic B. Solpicoさんからの紹介で実現しました。他のケースでも共通しますが、人的ネットワークの重要性を改めて認識しました。

トマト収穫ロボット
トマト収穫ロボット
九州工業大学、第19回SHARE会合メンバー
九州工業大学、第19回SHARE会合メンバー

第19回SHARE会合の宣言文

 Communique

  会議の重要なテーマの1つは、社会的回復力の促進におけるICTの役割です。参加者は、ICTがどのように災害対応を支援し、医療や教育へのアクセスを改善し、地域社会が気候変動に対して行動できるよう力を与えることができるかについて議論しました。

  会議のもう1つの重要なテーマは、コラボレーションとパートナーシップの重要性です。参加者は、今日の世界の課題は複雑で相互に関連しており、単一の組織だけでは解決できないことを認識しました。これらの課題に対処し、すべての人にとってより持続可能で公平な未来を創造するために、政府、産業界、学界、市民社会間の協力を強化し、ICTソリューションを開発および導入するよう求めました。

  SHARE メンバーは、「グリーン気候変動への適応」というテーマの下で革新と協力を続けることを目指しています。新型コロナウイルスのパンデミック後のアジア地域社会への影響と食料安全保障の極めて重要性を考慮し、SHAREのメンバーは、社会の回復力を高めるための農業と食料サプライチェーンの変革に焦点を当てた取り組みを実証するための包括的な研究計画を提案しました。SHAREパートナー国の学際的な研究チームは、気候変動、異常気象、およびそれらが食料システムに及ぼす影響という重大な問題に対処するために、セクターを超えた協力を基盤とするイノベーションを設計および展開します。集団的な取り組みでは、リソースの共有、相互学習、および必要な研究プロセスを知らせるための集団的な対応が追求されます。

  会議は、参加者が協力してICTの力を活用してすべての人にとってより良い世界を築くよう行動を呼びかけて終了しました。参加者は知識とリソースを共有し、社会の課題に対する革新的なICTソリューションを開発および実装するプロジェクトで協力することに取り組んでいます。並行して進められる推進力は、持続可能性のためにパートナー国が行った適応、異常気象に対する回復力の設計、そして各国の農家が抱える長期的な問題の連鎖に焦点を当てます。

  会議の終わりに、SHAREは次のようなフォローアップ活動を確認しました。

(1)ワークショップ:イノベーションとコラボレーションを通じてグリーン気候変動への適応に取り組むための重要なアプローチとして社会的回復力を利用する包括的な研究計画を作成します。

(2)アイデアソン: グリーン気候変動への適応のための革新的な解決策を考えるアジアの若者の関心と動機を高めるために、2024 年の第1四半期に開催予定です。

今後の予定

  SHAREの活動開始から、約17年が経ちました。以前ブログでADF会合の報告をしましたが、SHAREの活動と類似した活動がAPT地域で行われています。SHARE招聘メンバーが固定化されており、会合形態の見直しの時期に来ていると感じています。この種の活動は持続することが重要です。次回以降は、温室効果ガス抑制やSDGsなどテーマを決め、ワークショップ形式で新たなメンバーを加えるような企画にしていきたいと思います。