頭文字SDGシリーズ:ジェンダーギャップ解消の取り組み
2023年11月13日(月)から11月17日(金)まで、日本政府拠出によるAPT研修で“ジェンダーギャップ解消と地域課題解決のためのモバイルソリューションアーキテクト育成研修”を、東京と長崎で実施しました。研修には、APT地域の8ヵ国(フィリピン、タイ、マレーシア、ネパール、ラオス、スリランカ、ブータン、ツバル)の情報通信行政の女性担当者が参加しました。
背景と実施概要
デジタルジェンダーギャップは多くの先進国では縮小していますが、多くの新興国では拡大しています。新興国においては、女性が第一次産業を担う場合も多く、現場の課題に直面した視点でソリューションを開発に貢献することは重要です。今回の研修では、地方の課題を解決するICTアプリケーションの提供を橋渡しする女性のアーキテクトを育成することを目的としました。
研修プログラム
研修プログラムは3つの構成で実施しました。
1.専門家による講義と実例研究
地域課題解決ワークショップの企画を担って頂いた株式会社aglink.labの加納佳代様、川野千鶴子様、中嶋雅子様から、日本の地方で実施したICTを利活用した課題解決のモバイルソリューション開発の橋渡し的な役割経験の共有や同社のミッションについてご講義頂きました。
NTTグリーン&フード株式会社社長の久住嘉和様からは、ゲノム編集技術を用いた洋上養殖によるエコシステムについてご紹介頂きました。熱心な研修生からは、将来の食糧自給は世界各国の共通課題であり、当該技術が自国の魚にも提供できるかといった質問やコスト等についての質問がありました。
モバイル牛温恵という畜産農家用のソリューションを提供する株式会社リモート社長の宇都宮茂夫様、その導入支援を行った大分県農林水産部の武石秀一様からご講義を頂きました。牛温恵はモバイル端末でのデータモニタリングにより牛の体温でお産時期を正確に確定できるため、胎児の安全性の確保や従事者の稼働負担の削減に貢献でき、多くの農場で導入されています。研修生からは牛以外の動物への適用や価格等について質問があり、自国でも有用であると感じていました。
2. 地域課題解決ワークショップ
株式会社aglink.labの企画で、ワークショップを2つのグループに分けて実施し、自組織で新しい提案を行う際の障害等、課題を解決するための施策等について議論を行いました。1つめのグループは、ICTを用いた社会課題解決事例についてディスカッションを行い、以下のテーマでワークショップを実施しました。
➀講演や現地視察から気付いた課題の抽出
➁課題を解決するために必要なもの
➂解決した先で世間に受け入れるためにどうすべきか
2つめのグループは、つなげる人材事例についてディスカッションを行い、以下のテーマでワークショップを実施をしました。
3. 国内事例視察と事例の自国への展開の課題
株式会社NTTアグリテクノロジーの施設(東京都調布市)を視察させて頂きました。ローカル5GやAI、4K伝送等の最先端技術を用いたトマト農場には、多くの研修生が興味を示しておりました。食べ残し食材から発生するメタンガスを利用した再生エネルギー転換プラント等、多くの情報通信技術の一次産業への活用について紹介して頂きました。視察後にNTTアグリテクノロジーの女性社員と研修生を交えての意見交換会を行いました。
長崎県では新松浦漁協福島のくるまえび養殖場を訪問し、ICTブイや酸素ファイター導入による稼働軽減や収穫量の改善について徳田場長より説明を頂きました。研修生からは、海外に出荷しているかといった質問や収穫高や生活の軽減効果等についての質問がありました。
今後の課題
今回の研修に参加したのは各国の行政機関から選抜された研修生であり、研修への意識が高いように感じました。毎日研修場所が変わるとともに、東京から長崎への移動など研修日程がタイトであったため、買い物時間が無いとクレームはありましたが、研修生から非常に有益の評価を受けました。研修の最後に各国の感謝の言葉を白板に書いて頂きましたが、言語、文化が異なる各国が互いに理解し、共通の課題を目指す意義を再認識しました。
今回の企画は4年越しの提案で採択されましたが、日本においてもよりジェンダーギャップ解消の意識が向上されることを期待しています。本年度の反省点を反映して、来年度以降も継続してAPTに提案していきたいと思っております。欧州の6GのHexa-Xプロジェクトでは“Women in Telecommunication and Research”(WiTaR)ワーキングループ(https://hexa-x.eu/witar/)が活動しています。TTCにおいても女性視点での標準化の検討を進めて参ります。ご理解とご支援を宜しくお願い致します。