GSC-23会合報告
2023年4月26日から27日に、ロンドンのクイーンエリザベスⅡセンタで、ETSIの主催で第23回GSC(Global Standards Collaboration:GSC-23)会合が開催されました。パンデミックの影響により、前回会合(GSC-22)が2019年3月26日から27日に開催されて以来、4年ぶりの開催となりました。本ブログでは、GSC-23会合結果について報告致します。会場のクイーンズエリザベスⅡセンタは、ウェストミンスター寺院の隣に位置しており、次の週に行われるチャールズ国王の戴冠式に向けた準備が周辺で行われていました。
1. GSCとは
1990年に設立されたGSCの目的は、今日の統合されたICTエコシステムのための通信標準と関連する標準開発環境に関するグローバルな協力と連携を強化することです。GSC会合は、相乗効果の特定と活用のため、GSC参加者が互いに関心を持つ優先度の高い標準化の取り組みへの協力を強化するプラットフォームを提供します。
GSCは、以下の12の標準化団体で構成されます。今回のGSC-23会合にはTIAを除く各標準化団体より62名が参加しました。TTCからは、HoD(Head of Delegation)として岩田の他、GSC前に開催された3GPP PCG/OP会合に出席した田尻事務局長、中村担当部長が参加しました。
- ARIB(Association of Radio Industries and Businesses):日本
- ATIS(Alliance for Telecommunications Industry Solutions):米国
- CCSA(The China Communications Standards Association):中国
- ETSI(European Telecommunications Standards Institute):欧州
- IEC(International Electrotechnical Commission)
- IEEE-SA(The IEEE Standards Association)
- ISO(International Standard Organization)
- ITU(International Telecommunication Union)
- TIA(Telecommunications Industry Association):米国
- TSDSI(Telecommunications Standards Development Society, India):インド
- TTA(Telecommunications Technology Association):韓国
- TTC(The Telecommunications Technology Committee):日本
2. 会合概要
今回の会合は、本会合前に3回実施した準備会合での合意により、従来実施していた各SDOからの活動報告が無くなり、3つのトピックスのセッションに各SDOからのエキスパートが参加するパネルディスカッション形式で実施されました。TTCからは、セッション2の持続可能な開発目標へのICT標準の貢献について、岩田が参加し、TTCのBSG専門委員会におけるICTを利活用した社会課題解決の事例と利用標準について紹介するとともにその重要性を参加者に訴えました。
- Session 1A: Value of Global Standards in the environment of global geopolitical fragmentation
Session 1B: Digital Transformation - Session 2:ICT Standards Enabling Global Sustainability Goals
- Session 3:Technical Standards to Support Metaverse/XR
ICT Standards Enabling Global Sustainability Goals
3. GSC-23共同宣言
3つのセッションでの議論をコミニュケ(ETSI プレスリリース記事)としてまとめました。
最初のセッションでは、地政学的な分断環境下における世界標準の価値が取り上げられました。すべての参加者は、世界的な技術標準の意義を支持し、特に政府や社会の利害関係者の間で、その認識と評価を高めることの重要性を強調しました。また、このセッションでは、参加標準化機関(PSO:Participating Standards Organizations)の運用面についても取り上げられました。これには、デジタルトランスフォーメーションや、ICT標準をデジタル化して作成・提供することの利点、バーチャル会議でのデジタルツールの使用の改善、標準作成プロセスの持続可能性への貢献などが含まれます。
2つ目のセッションでは、グローバル標準がICTと産業の融合の鍵であり、国連の17の持続可能な開発目標(SDGs) の達成に貢献できることが示されました。パネルでは、SDGsの実現に向けたICT標準の成果と課題、そしてPSOがICTと産業の融合のためにどのように緊密に協力するかに焦点が当てられました。
最後のセッションでは、ICT標準がどのようにメタバースと拡張現実をサポートし、ヒューマンエクスペリエンス(体験価値)と産業応用を改善するかが取り上げられました。
参加組織は、すべての人に最適な標準を開発するために、標準化ライフサイクル全体にわたるグローバルな協力の重要性を強調し、ICT標準は世界中の約80億人に影響を与えていると指摘しました。そして、可能な限り、現在および新たな課題にグローバルコミュニティとして効果的に対処することの価値について合意することができました。