第35回ASTAP会合報告:ASTAP副議長に再選
第35回ASTAP(Asia-Pacific Telecommunity Standardization Program)総会がタイ王国の首都バンコクのチャオプラヤー川沿いに建つロイヤルオーキッド・シェラトン・ホテル&タワーズで、4月17日~20日の期間に開催されました。また、翌日の21日には、第1回APT WTSA準備会合が開催されました。本ブログでは、第35回ASTAP会合の主要結果概要について報告します。
今回のASTAP総会には、APT(Asia-Pacific Telecommunity:アジア・太平洋電気通信共同体)加盟国24ヶ国の主管庁、27名の賛助会員と7名の他の国際機関からの参加者を含め、現地での参加者123名 オンラインでの参加者を含め、計179名が参加しました。
1.ASTAP議長・副議長選出
今回のASTAP総会では、議長と2名の副議長の選出が行われました。議長・副議長の任期は3年間で、最大二期となっています。一期目は、2023年8月までの任期満了ですが、次回会合は、翌年の開催予定のため、役職選挙が行われました。議長には、現職の韓国のHyoung Jun Kim氏(ETRI)が、副議長には中国のXiaoyu YOU氏(CAICT)と日本から岩田秀行(TTC)それぞれ現職の立候補があり、対立候補は無く、いずれも二期目役職者として総会での指名承認が得られました。
2.ASTAP役職者構成
ASTAPを構成するWG(作業グループ)およびWG配下のEG(専門家グループ)の役職者の最新情報を表1に示します。
ASTAPは、プレナリー、WG、EGの3階層で構成されます。標準化課題を11の専門家グループ(EG)で分担し、EGの複数グループを束ねて、「ネットワークとシステム」、「サービスとアプリケーション」、組織横断的課題である「政策と戦略的調整」の三つのWGを構成します。WGが配下のEGの成果の取りまとめとEG相互間の調整機能を持ちます。また、ASTAPの運営について助言をするアドバイザリーボードを有するとともに、ASTAP全体のプロモーションや作業方法などの運営管理はASTAP議長の判断でアドホックグループを構成することができます。
表1 ASTAP組織構成(役職者名の敬称略)
Group | Chairs | Vice Chairs |
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Plenary
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Dr. Hyoung Jun Kim
(韓国)
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岩田秀行
(日本・TTC)
Mr. Xiaoyu You
(中国)
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WG Policy and Strategic
Co-ordination (WG PSC) |
Mr. Dao Ngoc Tuyen
(ベトナム) |
釼吉薫
(日本・NICT)
Mr. Tong Wu
(中国) |
Expert Group Bridging the Standardization Gap (EG BSG)
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Mr. Dao Ngoc Tuyen
(ベトナム) |
Mr. Ki-Hun Kim
(韓国)
眞野正捻
(日本・TTC)
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Expert Group Green ICT and EMF Exposure (EG GICT&EMF)
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Dr. Sam Young Chung(韓国)
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Mr. Min Prasad Aryal
(ネパール)
Mr. Nur Akbar Said
(インドネシア)
Mr. Uttachai Mannontri
(タイ)
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Expert Group ITU-T Issues
(EG ITU-T) |
釼吉薫
(日本・NICT)
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Mr. Quoc Binh Tran
(ベトナム)
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Expert Group Policies, Regulatory and Strategies
(EG PRS) |
立候補者なし
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WG Network and System
(WG NS) |
Dr. Joon-Won Lee
(韓国) |
小川博世
(日本・NICT)
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Expert Group Future Network and Next Generation Networks (EG FN&NGN)
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Dr. Joon-Won Lee
( 韓国) |
谷川和法
(日本・NICT)
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Expert Group Seamless Access Communication Systems
(EG SACS)
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小川博世
(日本・NICT)
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Expert Group Disaster Risk Management and Relief System (EG DRMRS)
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今中秀郎
(日本・NICT)
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WG Service and Application (WG SA)
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永沼美保
(日本・NEC)
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Dr. Jee-In Kim
(韓国) |
Expert Group Internet of Things Application/ Services (EG IOT)
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山田徹
(日本・NEC)
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Dr. Seung-yun Lee
(韓国)
Ms. Li Haihua
(中国) |
Expert Group Security (EG IS)
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武智洋
(日本・NEC)
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Dr. Heuisu Ryu
(韓国)
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Expert Group Multimedia Application (EG MA)
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山本秀樹
(日本・OKI)
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Dr. Dong il Seo
(韓国)
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Expert Group Accessibility and Usability (EG AU)
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Dr. Jee-In Kim
(韓国)
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Ms. Wantanee Phantachat
(タイ)
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赤字:新任 青字:再任
今回、日本からEG DRMRSの議長として荒木則幸氏(NTT)から今中秀郎氏(NICT)への交代とEG ISの議長として永沼美保氏(NEC)から武智洋氏(NEC)への交代が承認されました。荒木さん、永沼さんご苦労様でした。
3.インダストリー・ワークショップ
ASTAP総会の、初日の4月17日に、「AI、Metaverse、Open Source」をテーマとして、APT地域における専門家からの関連技術の講演を通じて、今後の標準化課題を議論するためのインダストリー・ワークショップを開催しました。現地での参加者90名とオンランイン参加者75名で実施されました。
セッションモデレータとして、日本からはAIセッションでは永沼美保氏(NEC)に、Metaverseセッションでは、山田徹氏(NEC)にご貢献いただきました。日本からはAIセッションには、ITU-T FG-AN議長を務める楽天モバイルのLeon Wong 氏、MetaverseのセッションにはITU-T FG-metaverseの副議長を務めるNICTの今中秀郎氏、OSSのセッションにはNTTの川島正久氏からご講演いただきました。お忙しい中、対応いただき誠にありがとうございました。ワークショップ後のアンケート結果では、AI、IoTのトピックの提案もありました。次回のワークショップ(ASTAP-36)の企画については、副議長岩田をリーダーとするアドホックグループを構成して検討することとなりました。産業界にASTAP活動に対する関心を持っていただくことがインダストリー・ワークショップ開催の一つの目的であると思っておりますが、今回、残念ながら産業界からの参加者は多くありませんでした。次回の企画では、より多くの産業界からの参加者を頂くようにしたいと考えておりますので、皆様のご支援、ご協力をお願い申し上げます。
表2にプログラム構成を示します。下線が日本からの講演者です。
表2 ASTAP-35 Industry Workshop Program
Program of ASTAP Industry Workshop |
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10:00 – 10:05
Introductory Remarks
by Mr. Xiaoyu You
ASTAP Vice-Chair/Industry Workshop Committee Member |
10:05 – 12:00
Session 1: AI technology and standardization
Chair: Ms. Miho Naganuma
NEC Corporation, Japan
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14:00 – 15:30
Session 2: Metaverse
Chair: Dr. Toru Yamada
NEC Corporation, Japan
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15:45 – 17:10
Session 3: Open-Source
Chair: Dr. Seungyun Lee
ETRI, Rep. of Korea
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17:10 – 17:15
Conclusion of Industry Workshop
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* Physical attendee
4.標準化ワークショップ(EG BSG)
前回総会での合意により、標準化ワークショップはEG BSGが担当し、今回はキャパシティデベロップメントをテーマで実施されました。標準化団体からは、TTC(日本)、TTA(韓国)、CCSA(中国)から、また政府からはベトナムから「標準化の人材開発」に関する紹介がなされました。次回までに、APTの人材育成プログラムを活用した標準化人材育成研修や、ASTAPにおける研修の実施を検討することになりました。
5.ASTAPでの主要な審議結果
プレナリー会合では、11のEGによる16のセッションで作成され、その後WGで合意された成果物の最終承認が行われました。ASTAPの成果文書としては、勧告、APTガイドライン、APTレポート、リエゾン文書などが分類としてありますが、今回は17件の文書が承認されました。TTCとして、EG BSGにおいてTTCのBSG専門委員会が提案したマレーシアで実施したRFIDを活用した病院の診察のスムーズ化に向けたケーススタディ事例を追加したハンドブック改訂が承認されました。
また、ASTAP議長から、ASTAPの将来に向けた検討TFについての設置提案がされ、承認されました。
6.今後の課題と予定
ほぼ3年ぶりの対面での会合となりました。それまでASTAP副議長として対面での挨拶ができませんでしたが、今回再任のタイミングで実現することができました。また、オンラインだけでは議論も一方的になる傾向がありましたが、今回、直接議論行うことや会場での振る舞いを通じての解決力の重要さを認識しました。一方今回、EG会合は、現地会場のみの開催で、一部EG会合では、参加者が用意したオンラインツールで参加しているケースもありました。コロナ禍以降、オンライン会合が定着して、ハイブリッドでの会合が定着する中で、オンラインツールの活用は参加者を増やすためにも当たり前の流れと思います。アドバイサリーグループでAPT事務局に対して、オンラインツールの貸し出しをお願いして了解を得られましたので、改善されていくことを期待しております。TTCの専門委員会等の会合は、ハイブリッドでの実施可能な準備は整えておりますので、活用頂ければと思います。
次回ASTAP-36は2024年4月下旬から5月中旬の予定です。開催地についてはホスト国を募集中のことでした。