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ITU-T CxO会合報告

1.  はじめに

  ITU-TのTSB局長(Chaesub LEE氏)が主催するCxO会合が、12月6日、UAE(アラブ首長国連邦)のインターコンチネンタル・フェスティバル・シティ(ドバイ)で、Telecom Review出版社とUAEの規制庁であるTelecommunications and Digital Government Regulatory Authority (TDRA)、UAEの通信オペレータであるDU、カナダの通信オペレータのTELUS、IBM、HUAWEIの共同ホストにより開催されました。

  COVID-19の影響を考慮し、現地参加とリモート参加のハイブリッド形式での開催となりました。今会合は、2021年と同様に、Telecom Review出版社が企画するTelecom Review Leaders Summit(12月7日、8日開催)との併催で実施されました。

  CxO会合は、2016年のWTSA(世界電気通信標準化総会)決議68に基づき、TSB局長が主催する産業界の上級幹部(CxO)との会議で、標準化の展望、標準化の優先課題及び民間企業のニーズや標準化状況について議論するための会議として位置づけられます。

  CxOとは、CTO(Chief Technology Officer)やCEO(Chief Executive Officer)などを含む上級幹部のことで、技術のみならず経営、情報管理などの幅広い視点で、産業界の優先課題と関連標準化について意見交換を行うことが期待されています。

2.議論テーマ

  今会合の主要テーマは、各CxOからの提案をもとに、これらのテーマを議論するために、今回のCxO会合は、表1のセッションテーマと講演者により構成され、CxO間で共有された今後の課題について、共同声明(コミュニケ)としてまとめました。以下に議論概要を報告します。

1 セッションテーマ構成 

  セッションテーマ 発表者
1
Opening remarks and Welcome
1.     Dr Chaesub Lee, ITU TSB Director
2.     H.E. Eng. Mohammed Yousef Al Ramsi, Deputy Director General, Telecommunications and Digital Government Regulatory Authority (TDRA), UAE
3.     Mr Toni Eid, CEO, Trace Media, UAE
4.     Dr Saleem Alblooshi, CTO, Du, UAE
CTO Perspective: Areas of Focus & Target End-State in the era of 5G
 
2
Theme: Metaverse
1. Laying the foundations for Metaverse study in multimedia aspects
2. An outlook on needed infrastructures to support the Metaverse
3. Meta-worlds
 
Huawei
China Telecom
Nokia
3
Theme: Sustainability
1. AI-assisted low-carbon practice for ICT infrastructure
2. Green networks and networks for green
3. Sustainability & SDGs mapping
4. ITU AI-based SDG Mapping tool - to be noted 
 
ZTE
Orange
Telus/IBM
TSB
4
Theme: AI & ML developments
1.     AI & ML in MENA: follow-up on developments 
Update on Machine Learning in 5G in ITU-T - to be noted
 
Du
TSB
Theme: Quantum networks
1.     Post-COVID and quantum roadmap
2.     Update on Quantum work in ITU-T - to be noted
 
Senko
TSB
Theme: 5G & beyond
1. Network evolution towards Network 2030
2. Open RAN – Interoperability and Performance Challenge
3. Open RAN adoption in MENA
4. The performance evaluation of 5G at 6GHz
 
ZTE
Rohde & Schwarz
Du
Du
Adoption of Communiqué
TSB

3.  主な議論コミュニケ) 

  CxOは、人工知能と機械学習 (AI/ML) 、環境の持続可能性、SDGsの取り組み報告、メタバース、量子情報技術、Beyond IMT-2020/5 Gの分野における業界の優先事項について議論しました。CxOは、特にAI/MLの分野における情報通信技術 (ICT) の開発と応用において増大する産学間の相乗効果を支援し、活用する手段について意見を共有しました。CxOはまた、これまでのCxO会議の成果、量子情報技術に関するITUの標準化作業、ITU電気通信標準化局が策定したAIを活用した、国連の持続可能な開発目標 (SDGs) へのITUの活動のマッピングツールに関する説明を受けました。

3.1  AI/MLとデータ

  ネットワークが複雑化し、益々多様化するICTアプリケーションやサービスの共存をサポートするネットワークの複雑化に対して、その最適化は、ますます困難になっていますが不可欠です。CxOは、AI/MLがこの最適化において重要な役割を果たしていると指摘し、ITU AI/ML 5G Challengeなどの主導によって示されたAI/MLに関する産学連携の拡大の価値を強調しました。CxOは、AI/MLをサポートするメタデータ管理の新しい標準に向けたITUの研究を奨励しました。CxOは、AI/MLのトレーニングと評価のためのコンピューティングリソースと高品質データへの広範なアクセスをサポートするために必要なコラボレーションを促進するようITUに求めました。CxOはまた、MENA(中東・北アフリカ地域)とITU のAI/MLサンドボックス(仮想環境)の相互作用の増加に対する支持を表明しました。

3.2  環境の持続可能性

  産業界は、ネット・ゼロ・エミッションを達成するためにネットワークのエネルギー効率を改善し、電子廃棄物を排除するために循環型経済の原則を守ることを目指しています。 CxOは、モニタリング、エネルギーの効率と循環性、機器製造を含むICT製品、ネットワーク、サービスの環境負荷を最小化する分野における持続可能なデジタルトランスフォーメーションの標準を開発するために、関連するITU標準の価値と関連する他機関との連携を言及しました。CxOは、エネルギー効率を改善し、ICTインフラの再生可能エネルギーと低炭素エネルギーの利用を最適化する上で、革新的なデータセンター冷却ソリューションとAI/MLの重要性を強調し、関連するITU標準の価値に再び言及しました。

3.3  SDGsへの取り組みの報告

 様々な企業がSDGsへのコミットメントを強調しているが、これらの世界的な目標に向けた進捗状況を評価するための共通の報告フレームワークと指標に関しては、まだまとまっていません。CxOは、これらの企業と業界アナリストが、このような共通の報告フレームワーク、特に関連する指標と主要な関連するガイダンス、各目標に向けた進捗を評価する成果指標は、恩恵を受けることに同意しました。CxOはITUに対し、ICT分野のためのこのフレームワークを開発し、それによってICT企業のSDGs報告の調和を支援するよう要請しました。

3.4  メタバース

  メタバースを可能にするイノベーションは、ICT企業の事業戦略において重要な位置を占めており、実現技術への多大な投資の動機となっています。CxOは、メタバースの世界とエンターテインメント、都市、産業活動との関連性について議論し、AI/ML、没入型マルチメディア、IoT、デジタルツイン、環境の持続可能性と5 GおよびBeyond-5 Gのネットワークの設備、機能、パフォーマンス、および統合などの分野で標準をサポートする必要性が高まっていることを強調しました。CxOは、そのような標準の開発において新興国の意見を適切に考慮を強調しました。CxOは、このような標準に対する需要の高まりと、この需要を満たすための標準化プロジェクトの設立が加速していることから、関連する標準化活動の調整に課題が生じる可能性があると警告しました。この認識は、2022年12月から16日にジュネーブで開催されるITU電気通信標準化諮問グループ (TSAG) の次回会合で検討される、メタバースに関する新しいITUフォーカスグループを作成する提案に注目して、CxOがITUが協調的な標準開発を促進する主導的役割を担うよう奨励する動機となりました。

3.5 Beyond 5 G

  ネットワークは、正確なパフォーマンス保証とコンピューティング、ストレージ、およびネットワークリソースの調整された利用のサポートにより、あらゆる種類の物理または仮想エンティティの相互接続を可能にするように進化しています。CxOは、ネットワーク管理と制御のためのインテリジェントなシステムは、高度なサービス指向ネットワークの開発の鍵であるという認識です。CxOは、相互運用可能な標準化されたソリューションや、オープンな分離ネットワーク技術全体にわたるセキュリティとネットワークの複雑さの課題などの問題について、さらに議論する必要性を含め、Open RANによって提示される課題と機会について議論しました。RAN Quality of Service(QoS)テスト技術は、すべてのRANアーキテクチャとその持続可能性への影響の評価に適用されるべきである、とCxOは強調しました。CxOは、6 GHzでの5 GのQoS評価について議論し、6 GHzのスペクトルがITU無線通信部門およびITU世界無線通信会議2023の議題で研究中であることに言及し、5 Gの高度化およびそれ以降のための6 GHzでのさらなる研究およびフィールドテストを奨励しました。

参加組織は次のとおりです。

  • 現地ドバイ参加:PTelecom【米国】,Arab ICT Organization【チュニジア】,Emirates Integrated Telecommunications Company (EITC) (du)【UAE】, Huawei Technologies Co., Ltd.【中国】, IBM【米国】,Medeverse【米国】 Nokia Corporation【フィンランド】, Rohde & Schwarz GmbH & Co. KG【ドイツ】,SENKO Advanced Components【マレーシア】, Sofrecom【UAE】,Telecommunications and Digital Government Regulatory Authority (TDRA)【UAE】,Telecom Review Group【UAE】, TELUS Communications Inc.【カナダ】,TTC【日本】,ZTE Corporation【中国】
  • オンライン:
    Alliance for Telecommunications Industry Solutions (ATIS)【米国】,AT&T【米国】,British Telecom Plc【英国】, Catronic【カナダ】 China Telecommunications Corporation【中国】,Cisco Systems【米国】, Telefon AB - LM Ericsson【スウェーデン】,Etisalat Egypt【エジプト】富士通【日本】,Orange【フランス】,pureLiFi【英国】,Telkom SA Ltd【南アフリカ】

4.おわりに

  今回のCxO会合では、前回に引き続いて環境への配慮、SDGsの取り組み発信について議論しました。カナダのTELUSとIBMからの報告では、世界のICT企業の17のSDGs対する報道発表をまとめた報告があった。各企業の各ゴールへの関与の解釈には濃淡があり、各企業の指標でSDGsの貢献を公表しているため、共通の指標でSDGsのICTセクタの寄与を明確するのは、SDOの立場としても非常に有意義と考えます。また、SDGsや環境問題への対応はICTセクタだけで達成できない事であり、SDOも含めた他セクタとの連携の上で、共通の指標で、目標達成に向けた取り組みが必要と感じるとともにTTCとして貢献して行きたいと思います。