第18回SHARE会合報告
BSG(標準化格差解消)専門委員会は、第18回のSHARE会合を2022年11月28日(月)から30日(水)にタイで開催しました。“SHARE” (Success & Happiness by Activating Regional Economy) の活動は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムを連携国として2008年より開始し、本年で15年目になります。アジア連携国の遠隔地域で、ICTを利活用した農業、水産業、環境、医療、教育、災害対応、スマートシティ等のパイロットプロジェクトを総務省・APTの支援で実施してきました。各国で実施したケーススタディは、ASTAPのEG BSGが発行するAPTレポート“Handbook to Introduce ICT Solutions for the Community in Rural Area” (https://www.apt.int/APTASTAP-OUTCOMES, APT/ASTAP/REPT-13(Rev.4))において、周辺国で同様な社会課題へ対応する際の参考として掲載されています。
1.概要
第18回の会合は、TTCとタイの農業大学のKU (Kasetsart University)・ETO (Extension and Training Office)の共同で開催されました。
マレーシア、フィリピンから4名、ホスト国のタイの関係者19名、BSG専門委員会委員3名、TTC事務局から2名が現地で、インドネシアからオンラインで2名の計30名が参加しました。初日の28日午前には、参加者から各国や企業の社会課題を解決するICT利活用の活動の報告や、午後には、今後開催を計画するアイデアソンの運営が検討された他、タイ側で進められている農村部活性化のためのツーリズム支援ツール開発プロジェクトに関してタイのTourism Authority of Thailandでの討議に参加しました。
29日はタイ北部のピチット県で地域の農業関係者を集めたワークショップを開催、日本から本年10月に設立されたICTで社会課題を解決する女性エキスパート集団であるaglink.labの方々がリモートでの参加し意見交換を行いました。
株式会社aglink.lab ホームページ:https://aglinklab.com/
30日はバンコク近郊の農地改革のケーススタディであるマンゴ農園を視察後、ラップアップミーティングにてこのミーティングでの成果をまとめたコミュニケを策定しました。
2.共同宣言概要
最近のCOVID-19のパンデミックでは、社会的および経済的な課題がより深刻になっています。アジア主要国とのSHAREの取り組みはさらに重要になっており、加盟国間での知識の共有を促進する必要があります。
SHAREは、 「エネルギー消費の削減とICTへの再生可能エネルギーの活用」 「食料の安定供給と安全な流通の確保」 「自然災害に対するレジリエンス」 「COVID-19のパンデミックと共に健康的に生きる」 などのSDGsの重要性を共有しました。
SHARE加盟国は、コミュニティにおける開発課題をはじめとする社会問題の解決にICTを活用する若者と女性の人材の統合的な共同開発に協力しています。
SHAREは、加盟国におけるイノベーションの枠組みを再考する必要性を認識しています。COVID-19のパンデミックの最近の余波では、イノベーションを共創する新しい方法を必要とする新たな課題や課題が現れています。これは単独では達成できなく共同で実行すれば、より大きく、より意味のある目標に役立つことでしょう。
ラウンドテーブルに基づいて、ソリューションの共同開発を推進するスタートアップインキュベーターを設立する機会があります。過去15年間にSHAREを通じて構築されてきたネットワークを基礎として、加盟国間のスタートアップインキュベーターのネットワークを構築することを提案します。
本会合では、実施されたケーススタディや、養殖や自然災害対策に関するトピックについて、全加盟国からの説明を聞きました。3日間のミーティングで、SHAREのメンバーは地方での農業活動を体験する機会を得ました。米作でICTがどのように使われているか、そして今では、若い起業家によって運営されている伝統的な農業から新しいビジネスがどのように生まれたかを見ました。
3.今後の予定
次回会合までに、以下のイベントを実施することを確認しました。
3.1 ワークショップ
現地の人々と現地のICTエキスパートとの間の知識の橋渡しに焦点を当てたケーススタディの研究を共有します。ケーススタディは女性ICTエキスパートが主導し、地域の課題解決を検討します。現地の農家やステークスホルダにインタビューを行い、現地で直面している問題を明らかにします。
3.2 アイデアソン
現地の人々、女性ICTエキスパートやアーキテクタ、若者のICTエキスパートからなる3者間のコラボレーションによる農業、観光、健康など地域の課題を解決するICTソリューションを提案することを目的とするアイデアソンを実施します。
4.おわりに
コロナ禍で約3年ぶりでの対面の会合になりましたが、共同宣言に記述のとおり、コロナ禍および後において、連携国はイノベーションを共創する新しい方法を必要とする新たな課題を認識し、連携して検討することを確認しました。今回現地タイの農場において、コロナ禍になり都市部で働いていた若者が、農場に戻り、ICTを利活用して作業の効率化やオンライン販売、収穫物を加工した商品開発ビジネス等に取り組み、新たな市場開拓を進めているケーススタディを実感することができました。その中心となっているのが女性で、ICTにおける地域やジェンダーによる普及格差の解消が、コロナ禍で新たな日常を生む取り組みで進んでいることは、日本も含め参考になると思いました。今回、日本のaglink.labの活動を連携国に紹介して頂きましたが、多くの国での同様なケーススタディをSHAREし、地域の活性化やICT利活用の格差を解消する取り組みを持続する重要性を再認識しました。これらの活動は普及推進委員会から活動を引き継いだBSG専門委員会で持続していますが、15年が経ちました。SDGsに向けた具体的な活動が可能です。より会員各社の参画をお願いします。
参加団体は以下の通りです。
- タイ現地参加:
Kasetsart University、 National Telecom Public Company Limited (タイ)、Ateneo de Manila University(フィリピン)、University of Technology Sarawak、University Malaysia Sarawak、Malaysian Technical Standards Forum Bhd (マレーシア)、 NTT、 NEC、OKI、 TTC - オンライン参加:Bandung
Institute of Technology、 Palangka Raya University (インドネシア)