第8回TSAG会合速報
ITU-Tの最高運営方針決定会議で4年に一度開催のWTSA(世界電気通信標準化総会)-20は、2020年11月インドのハイデラバードで開催予定が2022年の3月に延期され、ジュネーブでのハイブリッド形式で実施することになりました。来年1月に開催されるWTSA-20 に向けたTSAG最終会合の前の会合となる第8回TSAG(Telecommunication Standardization Advisory Group : 電気通信標準化諮問会議)が10月25日(月)~29日(金)にバーチャル会議で開催されました。また、世界6つの地域機関(APT, ARAB, ATU, CEPT, CITEL, RCC)の代表によるWTSAに向けた準備に関する第3回の地域相互間連携会議(IRM : Inter-regional meeting)がTSAG会合の前週の10月21日(木)に開催されました。
日本の参加者は、総務省国際戦略局通信規格課の重野分析官を日本団団長(HoD)として、総務省から4名、国内企業・団体(KDDI, 富士通, 日立, NICT, NEC, NTT, 日本ITU協会, TTC)から14名の計18名で対応しました。
本報告は、TSAGの審議概要を速報します。なお、本ブログで紹介したTSAG会合報告の詳細結果と今後の対処方針については、TTCの国際連携アドバイザリーグループのTSAG対応タスクフォース会合で報告・審議しますので、関心のある方はTTCにお尋ねください。
1.TSAGプレナリ概要
1.1 TSAG会合構成
今回のTSAG会合の構成は、全体審議を行うプレナリ(25日(月)と29日(金)の2日間)と、4日間で課題毎に詳細検討を行うRG(ラポータグループ)会合で、バーチャル会議で構成されました。TSAGの役職者による運営調整を行うマネジメント会合は24日(日)、28日(木)に開催されました
プレナリはTSAG議長(Bruce Gracie氏(カナダ、エリクソン)が、RG会合はRG-WP(Work Programme)、RG-WM(Working Methods)、RG-SC(Strengthening Collaboration)、RG-RR(Review of Resolutions)の4つの課題ラポータがそれぞれ議事運営を行いました。
バーチャル会議の開催時間は、事務局のあるジュネーブ時間を基準とし、参加者間の時差を考慮し、90分を1セッションで、一日2セッションを基本に、ジュネーブ時間で13:00~16:00(日本時間で20:00~23:00)をコア時間として開催されました。コア時間の前後で会合中追加された3つの(FG-DCC(Digital COVID-19 Certificate), e-meeting, IPR matter)AHG(アドホック)会合を実施しました。
バーチャル会議ツールとして前回の会合では、ITU独自のツールであるMyMeetingを使用しましたが、参加できる人数の問題から、Zoomを用いて開催されました。またExtra会合を除いて、英語のCaptioningが提供されました。
表1.TSAGのRG会合の時間割
Session #
(ジュネーブ
時間)
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10月25日
(月)
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10月26日
(火)
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10月27日
(水)
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10月28日
(木)
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10月29日
(金)
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Extra 1
11:00~12:30 |
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AHG on
FG-DCC |
AHG on
FG-DCC |
AHG on
e-meetings |
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Session 1
13:00~14:25
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Plenary
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RG-WP
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RG-SC
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RG-WP
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Plenary
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Break
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Session 2
14:30~16:00
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Plenary
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RG-WM
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RG-RR
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RG-WM
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Plenary
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Extra 2
16:30~17:30
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AHG on
IPR matters |
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1.2 地域機関相互間連携会合(IRM: Inter-regional meeting)
TSAG会合の前週の10月21日(火)に、世界6つの地域電気通信機関(APT、ARAB、ATU、CEPT、CITEL、RCC)の代表によるWTSAに向けた準備に関する第3回地域相互間連携会議が行われ、各地域機関がWTSAのどの決議と勧告に、どのような提案を行っているかについて情報交換を図りました。今会合では6つの地域機関から、WTSA-20に向けた準備状況の報告が行われました。APTからはTTC前田参与がAPT WTSA準備会議議長として報告を行いました。
各地域の提案状況をRG-ResReviewラポータ(Vladimir Minkin氏(ロシア、国立無線通信研究所))と事務局がまとめ、今後、WTSAでの統一化に向けた意見調整を行う予定です。
第4回の地域相互間連携会議は次回TSAG最終会合の前週の2022年1月6日(木)にバーチャル形式で行われる予定です。
1.3 FG(Focus Group)活動報告
ITU-Tが扱う新規課題に関連するFG(Focus Group)の活動報告が行われました。FGの検討成果は関連SGへの移行新規課題としてWTSAでの検討が重要となり、今後の審議動向を把握することが重要となります。
1.3.1 Quantum Information Technology for Networks (FG-QIT4N)
TSAGが親となるFGで、2019年9月に開設され、2021年12月までの延長が合意されています。ロシア、米国、中国からの3名の共同議長で運営され、今回はZhang Qiang氏(中国、University of Science and Technology of China)より1月から9月までの進捗報告がありました。日本からは副議長として釼吉薫氏(日本、NICT)が貢献されています。
1.3.2 Autonomous Networks (FG-AN)
FG-ANの設立は2020年12月のSG13会合の決定で、日本の楽天モバイルからの新規提案によるものです。今回の会合では、Autonomous NetworkのPoC(Proof of Concept)への参加募集が案内されました。議長はLeon Wong氏(日本、楽天モバイル)です。
1.3.3 Artificial Intelligence and Internet of Things for Digital Agriculture (FG-AI4A)
FG-AI4Aは2021年10月のITU-T SG20会合でアフリカ地域の複数国からFocus Group設置提案され承認されました。議長はDr Ramy Ahmed Fathy氏(エジプト) and Dr Sebastien Bosse氏(ドイツ、フラウンホーファー研究所)。
1.4 アクセシビリティに関するJCA-AHF活動報告
ITU-Tにおけるアクセシビリティに関する共同調整活動 (JCA-AHF: Joint Coordination Activity on Accessibility and Human factors) グループ議長のアンドレア・サックス氏(米国)による活動報告がありました。前回会合でアクセシビリティ課題をITUにおける優先課題として、セクター間調整タスクフォース (ISC-TF) を通じて活動推進を奨励することが提言され、今回The Inter-Sector Coordination Group (ISCG)の議長であるFabio Bigi氏(イタリア)からITU内での連携状況の報告がされました。ITU-Tでは特にSG16の課題26(Accessibility)が主管であり、ラポータは川森雅仁氏(日本、慶應義塾大学)が取り組んでいる課題です。
2.ラポータグループ(RG)会合
RG-SC、RG-WM、RG-WP、RG-RRの4つのラポータグループにおいて議論された主要事項について以下にまとめます。各RGの報告書はTSAGのクロージングプレナリーで承認されました。
2.1 作業計画・体制RG-WP(Work Programme and structure)
RG-WPは、SG再編の課題を扱うグループであり、2セッションの時間枠が与えられ、ラポータの永沼美保氏(日本、NEC)が担当しました。このRGは、全てのSG の活動報告を検証し、プレナリにおいてSGが提案する課題構成案に対して是認(endorse)を求めるとともに、WTSAに向けたSG再編議論の取りまとめを行います。
前回の会合で今回のWTSA-20ではSG再編は見送り、WTSA-24で再議論する意向が示され、RG-WPの配下にSG構成の最適配分を中心に分析検討を進めるCG(Correspondence Group)の設置が承認されました。CG活動報告が議長のPhilip Rushton氏(英国、DCMC省)からCGのアクションプランが報告されました。議長から、SG再編のアクションプランの中のSG活動の評価指標と評価を外部コンサルタントへの委託の是非が議論されましたが、合意に至らず、11月22日(月)~23日(火)にe-meetingで開催予定のRG-WP中間会合でアクションプランも含め継続議論することになりました。
2.2 作業方法RG-WM(Working Methods)
RG-WMでは、ITU-Tにおける様々な作業手順やルールを規定するWTSA決議1やAシリーズ勧告(決議32、勧告A.1、勧告A.7、勧告A.8など)の改訂検討を行っています。このRGのラポータはSteve Trowbridge氏(米国、ノキア)です。
今回の会合でも多くの審議課題が継続審議となり、TSAGレポートに審議時間不足の課題を検討する記載が求められました。最終会合に向けて11月30日(火)と12月1日(水)にe-meetingでのRG中間会合を設けて継続議論することになりました。
2.3 標準化協調強化RG-SC(Strengthening Cooperation/Collaboration)
RG‐SCは、ラポータはGlenn Parsons 氏(カナダ、エリクソン)で、他の標準化機関との協調の在り方や強化策について検討を行っています。今会合では、ITU内のセクター間、他の標準化機関であるISO/IEC JTC1、oneM2Mなどとの連携強化のためのリエゾン活動を継続しています。
本会合では、A .5「ITU-T勧告に他の組織の文書への参照を含めるための一般的な手順」の改訂を開始することになりました。またA .23「情報技術に関する国際標準化機構 (ISO) および国際電気標準会議 (IEC) との協力-付録II:ベスト・プラクティス」の作業項目を開始し、2022年1月の最終会合で議論することとなりました。
IEC/ISO/ITUの3組織相互間の標準化計画の調整機能を提供する IEC SMBとISO TMBとITU-T TSAGの代表から構成される Standardization Programme Coordination Group (SPCG)の報告があり、2年任期である議長のアマンダ・リチャードソン氏の再任に向けた付託事項の修正を検討することとなりました。
oneM2M仕様の扱いと運用についてはSG20検討の3つの選択案については、関係者のオフラインの会合、RG-RC中間会合で議論し、TSAG最終会合で再度議論することとなりました。RG-RC中間会合はe-meetingで11月24日(水)に本会合できなかった議題を議論する予定です。
2.4 WTSA決議レビューRG-RR (WTSA Review of Resolutions)
RG‐RRのラポータはVladimir Minkin氏(ロシア、国立無線通信研究所)で、WTSAの決議の統合化や簡易・合理化を図り、WTSAの決議文書のスリム化の推進が課題です。
第3回IRM会議の報告を反映し、各地域組織のWTSA決議に関するITU-T Aシリーズ勧告への提案をTSAG報告者グループにTSBのプロポーザル管理システムを用いたRGとの相互マッピングを作成して提供することとしました。「プロポーザル管理システムを用いたWTSA決議67の並べて表示し、統合されたテキストのサンプル」(TD1166)より作成されたTD 1124 R 2を用いてWTSA決議67について議論するためのe-meetingでの中間会合を予定しています。
地域電気通信機関のフォーカルポイントが決議に関する議論及び協議に参加する必要性を認め、地域電気通信機関に対し、全ての提案のフォーカルポイントを議論に参加させるよう要請しました。
3. 本会合で開催されたAHG報告
本会合では、デジタルワクチン接種証明書(DCC:Digital COVID-19 Certificate)のFG設置提案、バーチャル会議の会合運営ルールを策定するe-meeting、IPR事項に関する3つのAHGが開催されました。
3.1 FG-DCC設置提案に対するアドホックグループ
10月26日(火)および27日(木)の2回、Extra時間帯で会合が開催されました。議長は提案元のSG17議長のHeung-Y Youm氏(韓国)が務めました。AHG会合では結論が出ず、以下の4つの選択肢をTSAGに提示することになりました。
- オプション1: ToRとギャップ分析に重点を置き、TSAG配下にFG設立
- オプション2: TSAG配下にJCA(Joint Coordination Activity)を設立
- オプション3: CITS(Collaboration on ITS)と類似なToRでデジタルCOVID-19認証に関する連携を実施
- オプション4: 関連するSGの権限内で可能な限り早く関連する標準化作業を開始
TSAGプレナリでJCA設立が暫定的に合意され11月24日(水)にe-meetingで開催されるRG-SC中間会合でToRを議論することとなりました。
3.2 バーチャル会議の運営ルールに関するアドホックグループ
本会合において、e-meeting の運営ルールを検討するアドホックグループ(AHG-GME)の設立とToRを合意しました。AHG-GMEは、興味のあるITUメンバーが参加可能でMLに登録で議論に参加可能です。AHG-GMEの第1回会合は12月13日(月)にバーチャル会合を予定しています。
3.3 IPR事項によるアドホックグループ
ITU-T IPRアドホックグループの特許問題担当報告者であるSerge Raes氏 (Orange) がAシリーズ勧告の最初のページの下にある知的財産権に関する定型文を削除する提案についての議長を務めました。以下の2つの選択肢が議論されました。
オプション1: 現状維持–現在のテキストに変更なし。
オプション2: IPRボイラープレート全体の削除、またはAシリーズ用の改訂テンプレートの採用。Aシリーズ勧告のカバーからIPRセクションを削除することは、他のシリーズにも波及し、予期せぬ困難を引き起こす可能性があることが懸念されました。
ロシアから提案されたITUマークについての課題の議長は、マーク問題担当報告者であるHung Ling氏 (Nokia) が務めました。多数の標章指針文書の変更禁止 (文書に埋め込まれたリンクの軽微な修正を除く) が支持されました。理由として、ITUに柔軟性を与え、 「ライセンス不要」 の交渉を行う可能性が与えられる事、変更によって意図しない結果の懸念があることが述べられました。IPR AHGは、標章ガイドラインの担務であるので、TSAGでの議論をIPR AHGでメーリングリスト上または電子会議で報告し、議論の継続の判断を行う予定です。
4.今後の主な会合予定
2022年3月のWTSA-20に向け、最終会合である第9回TSAGが2022年1月10日(月)から14日(金)にバーチャル会議での開催予定です。また第4回地域機関相互間連携会合は2022年1月6日(木)に開催予定です。各RGの中間会合の開催日時は本文各章で記載したとおりです。WTSA-20会合は2022年3月1日(火)(から9日(水)のジュネーブの国際会議場(CICG:International Conference Center Geneva)での物理的参加とリモート参加のハイブリット形式で開催されます。会場での参加者は500人制限で予定でしたが700人まで可能な状況です。また、開催時間帯ジュネーブ時間で7時から19時までの予定です。また、2月28日に第4回のGlobal Standards Symposiumが開催されます。