ASTAP-33会合速報: 5GとEmergency-Communicationsに関するインダストリワークショップ
6月7日~11日に第33回ASTAP(Asia-Pacific Telecommunity Standardization Program)会合が新型コロナウイルス感染症拡大の影響のためオンライン形式で開催されました。今回の会合には17ヵ国の加盟国から約190名が参加しました。本会合の初日(6月7日)には、5GとEmergency-communicationsに関するインダストリワークショップが開催され、142名が参加しました。写真1はオンライン参加者のスクリーンショットの一部です。
1.5GとEmergency-Communicationsに関するインダストリワークショップ
前回ASTAP-32会合での合意に基づき、ワークショップのプログラムを企画するCorrespondence Groupを設置しASTAPの副議長である中国のXiaoya You氏(CAICT)と小生を中心にメールリフレクターを利用して準備を進めました。
今回選択したのは、5GとEmergency-communicationsの二つのトピックスで、APT加盟国へのアンケートの結果としてASTAPでの検討を期待される分野です。5Gは、昨年度からAPT域内の一部の国で商用サービスが開始しており、これから商用化を開始する国々にとって関心のあるトピックであることから選択しました。また、Emergency-communicationsについては、日本での東日本大震災から10年目、APT地域内で自然災害が毎年起きる状況、そしてコロナ禍ということで、関心あるトピックとして選択しました。また、運営にあたってはオンライン形式での開催のため、従来の対面式の会合よりも時間を短縮する形で効率的に行いました。
表1にプログラム構成を示します。青字が日本からの講演者です。
表1.ASTAP-33 インダストリワークショップのプログラム
10:30 – 12:30
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Industry Workshop on “5G & Emergency-communications”
Introductory Remarks
Part I: 5G
Chair: Dr. Seungyun Lee, ETRI, Republic of Korea
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12:30 - 13:00
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Lunch Break
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13:00 - 15:00 |
Industry Workshop on “5G & Emergency-communications”
Part II: Emergency-communications
Chair: Mr. Noriyuki Araki, NTT, Japan
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15:00 - 15:15
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Conclusion of Industry Workshop
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プログラムは、日本、韓国、中国、タイからのトピック毎に5つの講演で構成されました。日本からは5Gについて楽天モバイル、Emergency-CommunicationsについてはNICTの2件のご講演頂きました。また、Emergency- Communicationsのセッション議長はNTTの荒木則幸氏に務めて頂きました。お忙しい中、貴重な講演、柔軟な進行を頂き誠にありがとうございました。
課題であるインダストリワークショップと各Working Group(WG)、Expert Group(EG)活動とのリンケージについては、5Gセッションで講演頂いたAutonomous NetworksについてEG FN&NGN会合で紹介し、Emergency- Communicationsでは、EG DRMRSやEG IOTにおいて、講演頂いた関連技術の新規作業計画の提案がなされました。開催後のアンケートでは、一部の講演で発生したネットワーク接続のトラブルなどの改善要望が上がりました。事前接続試験を実施する等、今後より良いオンライン会合開催に向けて反映して行く予定です。
2.ASTAP強化検討のアドホックグループ
ASTAP-31 会合で日本から提案された「APT会員に対するICT標準化活動への要望に関するアンケート調査」に対する13ヵ国からの回答から、要望された課題を検討するアドホックグループの設置が本会合のオープニングプレナリで承認され、小生が議長を務めることとなりました。事前準備に要する時間が無かったため、会合での要点が定まりませんでしたが、ASTAP強化に向けた議論を始めることができました。
今回の会合では、次回のASTAP-34 会合でSDO(Standards Developing Organization)を招聘したStandardizationワークショップとインダストリワークショップを併せて開催することが合意され、ワークショップの企画は、Correspondence Groupを設置し計画することになりました。EG BSGで議論されている国際標準の国内標準へ反映のためのガイドライン、SDOの立ち上げノウハウ、人材育成などの施策等について、直接SDOから情報共有頂ける機会となることが期待されます。
3.ASTAP組織構成と役職者の更改
本会合では、役職者が表2の通り承認されました。WG PSCの副議長に釼吉薫氏(NICT、日本)、EG DRMRSの議長に荒木則幸氏(NTT、日本)にご就任頂きました。
表2. ASTAP組織構成(役職者名の敬称略)
グループ | 議長 | 副議長 |
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ASTAP
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Dr. Hyoung Jun Kim(韓国)
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岩田秀行(日本・TTC)
Mr. Xiaoya You(中国)
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WG Policy and Strategic
Co-ordination (WG PSC) |
Mrs. Nguyen Thi Khanh Thuan
(ベトナム)
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釼吉薫(日本・NICT)
Mr. Wu Tong(中国)
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Expert Group Bridging the Standardization Gap (EG BSG)
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Mrs. Nguyen Thi Khanh Thuan
(ベトナム)
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Mr. Ki-Hun Kim (韓国)
岩田秀行(日本・TTC)
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Expert Group Green ICT and EMF Exposure (EG GICT&EMF)
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Dr. Sam Young Chung(韓国)
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Mr. Min Prasad Aryal (ネパール)
Mr. Nur Akbar Said(インドネシア)
Mr. Uttachai Mannontri(タイ)
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Expert Group ITU-T Issues
(EG ITU-T) |
釼吉薫(日本・NICT)
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Mr. Nguyen Van Khoa(ベトナム)
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Expert Group Policies, Regulatory and Strategies
(EG PRS) |
Ms. Nadia Hazwani Yaakob
(マレーシア) |
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WG Network and System
(WG NS) |
Dr. Joon-Won Leen (韓国)
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小川 博世(日本・NICT)
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Expert Group Future Network and Next Generation Networks (EG FN&NGN)
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Dr. Joon-Won Lee (韓国)
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谷川和法(日本・NICT)
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Expert Group Seamless Access Communication Systems (EG SACS)
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小川 博世(日本・NICT)
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Expert Group Disaster Risk Management and Relief System (EG DRMRS)
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荒木則幸(日本・NTT)
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WG Service and Application (WG SA)
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永沼美保(日本・NEC)
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Dr. Jee-In Kim (韓国)
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Expert Group Internet of Things Application/ Services (EG IOT)
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山田徹(日本・NEC)
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Dr. Seung-yun Lee (韓国)
Ms. Li Haihua (中国)
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Expert Group Security (EG IS)
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永沼美保(日本・NEC)
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Dr. Heuisu Ryu (韓国)
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Expert Group Multimedia Application (EG MA)
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山本秀樹(日本・OKI)
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Dr. Dong il Seo (韓国)
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Expert Group Accessibility and Usability (EG AU)
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Dr. Jee-In Kim (韓国)
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Ms. Wantanee Phantachat (タイ)
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4. ASTAP-33での主な成果文書
本会合のプレナリーで、10件の新規レポート文書、2件の他標準化団体へのリエゾン文書が承認されました。そのうち、TTC関連の文書は2件です。
1件目は、BSG専門委員会から提案された “APT Report on Handbook to introduce ICT solutions for the community in rural areas (REV.4)” です。これはアジア各国のパートナーと共に、APTプロジェクト等のスキームを活用して実施したルーラルエリアでのICTソリューション実証実験の事例をまとめたもので、今回はミャンマーでの結核病に対する医療ソリューションを事例として追加し、第4版として改版しました。本レポートの作成には小林真弓 氏(富士通)にご貢献頂きました。
2件目は、コネクテッド・カー専門委員会から提案された “APT Report on Traffic accident record and its analysis method’s guideline in ASIA”です。交通事故を減らすために、それらの事故を記録し、分析して対応策を立案することの重要性を示したもので、今回はアジア各国での事故記録収集・分析状況を調査し、記録項目・分析方法をガイドライン化しました。本レポートの作成には羅章奕氏(トヨタ)にご貢献頂きました。
5. 次回ASTAP会合
APT 近藤勝則 事務総局長から、次回ASTAP-34会合は、COVID-19禍の状況、ITU関連のWTSA、WTDC等のイベントもあり、日時、開催場所は現時点では未定の報告がありました。