活動内容

多様な人材の参画を通じた標準化活動の更なる活性化に向けて
~標準化会議副議長就任にあたって~

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日本電信電話(株)
古川 聖

  標準化会議副議長を拝命しましたNTT*の古川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 *就任当時(2023年6月)の所属はNTT東日本

 昨期の標準化会議議長を務めるなかで企画戦略委員会や専門委員会、また標準化関連組織の関係各位より標準化活動の国内外の状況について様々なご意見を賜る機会に恵まれました。そのなかで印象に残るのが情報通信・情報処理分野の新興技術を中心とした標準化テーマの拡大と、持続的な標準化活動に不可欠な人材確保の難しさです。後者についてはベテランの経験者が活動を牽引するなかで中堅・若手層の参画が拡がりづらい状況が続いており、人材の固定化に対する危機感の高まりを感じています。

 人材育成の重要性は改めて指摘するまでもなく、過去より例えば総務省や経済産業省の国際標準化戦略で人材育成が論じられ産学官連携の取り組みが展開されてきたところです。TTC会員各社におかれても開発・研究の現場を中心に人材育成の試行錯誤に取り組まれているものと想像します。ジョブローテーションや短期スパンの業績評価等、組織内の人事制度との整合をとりながら標準化活動上のノウハウや関係者との信頼関係を積み上げていく、長期の目線に立ったキャリア形成の難しさについては、企画戦略委員会においても議論がありました。当事者がやりがいを感じながら成長する機会を創出すべく、それぞれの現場で悩みながら工夫を凝らし対応している実態があるように思います。

 こうした状況が長期的に見た標準化活動の先細りを意味するものとは個人的に感じられません。現在はステークホルダの集う場がデジュール標準の国際標準化機関に加えてフォーラムやオープンコミュニティ等へ拡大し、技術仕様の策定のみならず課題探索、コンセプト実証、インターオペラビリティ検証など取り組みも多岐にわたります。上述の標準化テーマの拡大と相まって、求められる活動や人材の裾野はむしろ拡がっています。現状を踏まえるに、従前の活動を継続・強化することに加えて、事業や研究の各フェーズで上記の場を活用するメリットを捉え直し、様々なニーズや意欲を持つ人材の参画を新たに促していく、そうした点検の機会が改めて訪れているものと考えています。

 オープンコミュニティのOSS開発に従事する中堅から若手の人材と会話をする機会がありますが、高いモチベーションで尽力されており、めきめきと成長される姿には驚きを覚えます。IPRポリシーの存在が前提ではありますが、所属元の表面的な利害や思惑を越えた人と人のコラボレーションには元来、大きなやりがいと推進力があると感じさせられます。新たな領域で活動を立ち上げ活性化させていく原動力として、活動の場や参画するベテラン・若手の世代を問わず大事にしていきたい要素のひとつと考えます。

 ここまで述べました人材育成のテーマ以外にも、企画戦略委員会では中期標準化戦略の推進や専門委員会の運営上の課題に関してTTC内外の意見交換や各種機会の設定を通じた対応を図ってまいりました。引き続きこれからの2年間、大谷議長のもとTTCの更なる活性化に向けて活動していければと考えます。ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。