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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

第10回CTOグループ会合速報 (南アフリカ共和国ダーバン開催) 第二弾

 マエダブログ9月14日号に引き続き、南アフリカ共和国のダーバンで開催されたCTOグループ会合(以下CTO会合)の模様を、ITU-Tで優先的に検討すべき今後の標準化課題を中心にお伝えする第二弾です。

 なお、9月14日号の第一弾のブログ記事につきまして、SG17会合に参加された読者の方からコメントをいただき、4.4項の量子通信に関する記述について修正を行いましたので、改めてご確認いただければと思います。

目次

1.IMT-2020(5G)への政策と規制の支援

1.1     2020年以降のICTユースケース
 5Gシステムが大規模な展開を開始するにつれて、2020年以降に登場すると予想される新しいICTユースケースについて議論しました。5Gシステムのインフラストラクチャーにおける持続可能な投資を実現可能にする環境の構築には、各国の政策立案者と規制当局がどのような支援が可能かを検討しました。特に、開発途上国の規制当局との関係性の高い問題である、スモールセル展開への障害などを取り除く必要性が認識されました。
 ITUが5Gユースケースに対応し、市場の成長、革新、協調、およびICTインフラストラクチャー投資を支援することを奨励するとともに、OTTサービスの重要性を認識するための政策的および規制的問題を研究することが求められました。
1.2     SG3のOTT課題の取り組み
 ITU-Tで料金・会計原則と経済・規制課題を扱うSG3において、2017年に完成した「OTTの経済的インパクト」に関するITUテクニカルレポートと、ネットワークオペレータとOTTサービスのプロバイダとの関係を解説した「勧告草案D.262:OTTのためのコラボレーティブフレームワーク(Collaborative Framework for OTTs)」が勧告承認手続き中であるという情報が共有されました。
 これらのSG3の検討において、5Gシステムの導入に伴って生じると予想される新しい技術的およびビジネス的動向についても調査することが期待され、この問題をITU全権会議2018(2018年11月、ドバイ開催)で議論させる手段を検討することがITU-T局長に要望されました。

2Network 2030:イノベーションのうねり

2.1     将来の新通信体験実現への課題

 ICTは将来、真に没入感を深めたライブ体験を伝送する超高臨場感ライブ体験(ILE:Immersive Live Experience)、5つのすべての人間の感覚を魅了する通信体験を提供できるようになることが期待されます。しかし、これらの高度にインタラクティブな高精度アプリケーションでは、極端な低遅延と高スループットが要求され、プロトコル、ネットワークアーキテクチャー、パフォーマンス監視、QoSとQoEにおける大きな技術革新が必要と考えられます。

2.2     FG-NET2030の狙いと期待

 CTO会合では、2018年7月に設立された新しいITU-TフォーカスグループFG-NET2030の狙いについて議論し、ITU標準化の今後10年間で、ICT業界や垂直産業が「Network 2030」の夢をどのように達成できるかについて調査を行いました。

 このFGは、ホログラムなどの新しいメディアにまたがるユースケース、拡張されたバーチャルリアリティのアプリケーションの新世代、「感覚」や「触覚」アプリケーション向けの高精度通信を提案し、Network 2030の性能ビジョンを提唱することを目指します。このFGの成果は、将来のネットワークやクラウドに加えて、ITU標準化作業の多くの分野に影響を及ぼすことが期待されています。その分野としては、プロトコルやテスト仕様、パフォーマンスとQoSおよびQoE、基幹網とアクセス網およびホームネットワーク、マルチメディアとセキュリティを含みます。

 CTO会合では、ITUにおいて、次世代プロトコルを含む検討中のコンセプトについて意見交換を行う必要があると考え、ワークショップの開催が要請されました。

3.IoTとスマートシティ

3.1     スマートシティ実現に向けた課題

 将来の都市は、スマートで持続可能、安全であることを目指しており、5GとIoTは、これらの目標の実現に重要な貢献をするでしょう。このスマートシティへの移行には、データアクセスが特に重要になります。

 スマートアプリケーションは、都市が社会的、環境的に持続可能になることをサポートする必要がありますが、これを実現するには、まず、スマートアプリケーションのビジネスモデルの持続可能性を達成する必要があります。 CTOは、広範な商業化に移行できるスマートシティの実証実験の数を増やすために、ステークホルダーのコラボレーションが重要であることを指摘しました。

3.2     スマートシティ開発に向けた技術的優先事項

 関連するステークホルダーの効果的なコラボレーションによってサポートされるスマートシティ開発のための3つの技術的優先事項をまとめました。

  1. IoT対応のスマートシティの持続可能な発展には、商業的に実行可能なクロスアプリケーションのユースケースが不可欠。
  2. 業界は、IoTプラットフォーム間のデータ交換、プライバシー保護、関連規制の遵守を可能にする必要がある。
  3. IoTプラットフォームは、高性能コンピューティング能力を備えたエッジクラウドおよびセントラルクラウド処理を具備することにより、オーディオおよびビデオストリームを処理できるようにする必要性がますます高まる。
3.3     IoT共通プラットフォームの必要性

 都市は異なる開発課題に直面しており、スマートシティ戦略の優先順位は、その状況に応じて異なります。すべてのアプリケーションやサービスに不可欠な要素を提供し、多様なイノベーションのための共通プラットフォームを提供することが必要であり、これらが標準化開発者が直面する課題であると認識しました。

 共通プラットフォームの開発において、ITUとoneM2Mのコラボレーション関係の拡大を例に、この課題に対応する際の標準化コラボレーションの価値を認識しました。

3.4     U4SSCの活動

 CTOは、スマート・サステイナブル・シティ連合(U4SSC)イニシアチブが主催するコラボレーションのサポートを表明しました。U4SSCによって促進されるトップレベルの設計ガイドラインとフレームワークは都市開発にとって有益であり、例えば、ITU標準に基づくスマートな持続可能な都市のためのU4SSCのKPI(キーパフォーマンス指標)は、国際標準化をサポートするするとともに、スマートな都市戦略の基本要素を整合させる上で有効と考えます。

4.ITU-T 標準化戦略

4.1     5Gの標準化戦略

 ITU-Tや3GPPに代表される他の5G関連の標準化団体が、補完的な標準の相互承認を促進するためのコラボレーションの方法をいかに強化できるかについて議論しました。また、TSAGの標準化戦略ラポータグループ(RG-StdsStrat)の代表から、今までのCTO会合で議論された標準化トピックを文書化するための最新のRG-StdsStratでの検討状況を共有しました。

4.2     標準化トピックの文書化

 CTO会合で議論されたトピックを文書化することは、業界幹部、RG-StdsStratグループ、ITU-Tの各SGで活躍する標準化の専門家の間の対話を促進する検討の一部であり、この対話により、ITUメンバーにより関心の高い戦略的な標準化検討に優先順位をつけることで、ITU-Tの各SGの取り組みを支援することになります。

4.3     TSAG検討

過去のCTO会合で議論された標準化トピックは、既に以下の課題が含まれています。これらの課題に今回のCTO会合の結果を反映し、2018年12月開催のTSAGでの標準化戦略に関する検討を加速化させる予定です。

  • IMT-2020(5G)ビジョンの実現
  • OTTサービスと関連する業界横断的な協調の経済的影響
  • VoLTE / ViLTE相互接続とIMS相互接続用ENUMの採用
  • ネットワークオートメーション、拡張と増幅のインテリジェンス
  • 革新的で再利用可能なサービスを開発するために、第三者がネットワーク機能にアクセスして構築するオープンAPI
  • ギガビット速度のブロードバンドアクセスサービスとネットワーク
  • OTTおよび垂直型業界向けのデータセンター相互接続
  • ビデオサービス、拡張現実と仮想現実
  • 障害者に対するICTのアクセシビリティ
  • セキュリティ、プライバシー、信頼
  • 証拠ベースでデータ駆動型サービスの開発を支援するための分析

5.ITU-T 活動の最新動向

5.1     新規FG(Focus Group)の設立

 ITU-Tの将来課題の指針となるFGについて、2017年以降に設立された6つのFGの活動概要が紹介されました。FGが扱う課題としては、金融、自動車、健康への応用、ML(機械学習)やAI(人工知能)の活用、スマートシティにおけるデータ処理管理など、ICTを活用した新規分野への取り組みが求められます。

 TTCではこれらのITU-Tの新規動向に対応する検討体制を整え、対処方針を検討していく予定です。

5.2     ITU-Tメンバーシップの増加

 ITU-Tメンバーの加入状況は急上昇しており、2018年1月から8月末までで11組織がセクターメンバーとして、24組織がアソシエートメンバーとして加わりました。新メンバーには、MVNO(移動仮想通信事業者)やMVNE(移動仮想通信サービス提供者)、UAV(無人航空機)製造者、テレマティクスおよび自動車メーカー、OTTサービスプロバイダー、エネルギー会社、量子暗号および量子通信を専門とする企業などが含まれ、ITU-Tの扱う課題が拡大しつつあることを示していると言えます。

 ITU-Tの扱う課題とそれらを議論するメンバーの範囲が拡大しつつある中で、これらの動向に対応していくために、TTCにおける標準化課題の拡大の在り方についても検討していく必要があります。

 

6.まとめ

6.1     CTOコミュニケ

 CTO会合での議論概要はCOMMUNIQUÉ(コミュニケ)として公開されていますので、より詳細な内容に関心のある方はご覧下さい。

6.2     今後の予定

 来年のテレコムワールド2019の機会に開催される予定ですが、場所と時期は未定です。CTOコミュニケの内容は今後、全てのSGとTSAG会合に展開され、私がラポータを務める標準化戦略に関するラポータグループで更なる分析を行い、今後のITU-Tでの標準化戦略の検討に反映していく予定です。また、これらの課題に対する日本としての対処や提案については、TTCの関連委員会で検討を行う予定です。

 

終わりに

 宿泊ホテルからのダーバンICC会場周辺の風景をお届けします。雨上がりの午後、会場には虹がかかっていました。この虹がアフリカと日本のマーケットをつなぐ橋となることを祈ります。