国際標準化連携GSC-20会合速報
平成28年4月14日夜と16日未明に最大震度7を観測した「平成28年(2016年)熊本地震」は、大きな被害をもたらしました。いまだに活発な地震活動が続く心配な状況ではありますが、震災により亡くなられた方々に、謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された地域の皆さま、そのご家族の方々に心よりお見舞い申し上げます。皆さまの安全と一日も早い復興をお祈り申しあげます。
本ブログでは、今週、インドのニューデリーで開催された第20回GSC(Global Standards Collaboration)会合(GSC-20)の結果中心に5月の連休の前に速報させていただきます。
GSCは世界の主要な標準化機関 (SDOs : Standards Development Organizations) の代表者(HoD(Head of Delegation))が一堂に集まる「Networkingの場」であると位置づけられており、ICTに関する標準化活動についての情報交換を行うとともに、各SDOでの検討の重複を避け、グローバルな標準化を促進するためのSDO間の協調と連携の戦略を検討するための集まりです。「Networking」とは、各SDOのHoDが直接顔を合わせ、いつでも情報交換できる関係を構築することを意味しています。
今回のGSC-20会合は、IoT(Internet of Things)、5G、セキュリティとプライバシーの3課題とSMEs(Small and Medium-sized Enterprise:中小企業)の役割について、を主要テーマとして、それぞれテーマごとに各標準化機関の代表によるプレゼンテーションとパネルディスカッションによるセッションで構成されました。
会合のホストは、インド政府公認の初めての国内標準化組織であるTSDSI (Telecommunications Standards Development Society, India) により、ニューデリーのIndia Habitat Centerにて、2016年4月26日-27日に開催されました。また、M2Mと移動体通信システムのグローバル標準化パートナーシッププロジェクトであるoneM2Mと3GPPの管理会合となるoneM2Mの運営委員会(第21回SC会合)が4月25日に、3GPPのProject Co-ordination Group (PCG)会合とOrganizational Partners' (OP)会合が4月28日-29日にそれぞれ開催されました。
GSCのメンバーは表1の12団体で構成されますが、前回のGSC-19会合でTSDSIとIEEE-SAが加盟し、今回のGSC-20会合からISOとIECが加盟しました。GSC-20会合には、ゲスト機関の代表を含め約100名が参加しました。TTCからはHoDとしての前田の他、国際連携アドバイザリーグループリーダーの岩田秀行様(NTT)、セキュリティ・プライバシーのセッションで「IoTとITS関連のセキュリティ標準化動向」の講演を行っていただいた衛藤将史様(NICT)、また事務局からはそれぞれのテーマへの対応として、濱野宏業際イノベーション本部長(IoTセッションのパネリスト)、住田正臣担当部長(5Gセッションのパネリスト)、松尾一紀担当部長(SMEsセッションのパネリスト)の総計6名が参加しました。
今会合の結果報告は、テーマごとにTTCの関連するoneM2M専門委員会、3GPP専門委員会、また国際連携アドバイザリーグループで行う予定ですが、以下に私なりに感じた点を簡単に述べます。
IoTに関する議論では、IoTの標準化は各産業界での細分化、分断化していく心配があり、エンドユーザーとなる様々な業界関係者に対して、GSCメンバーが協調してアプローチし標準化をプロモートしていくことが重要であるという認識が得られました。これはTTCも関わっているoneM2Mの活動がまだ産業界全体に十分に認識されていないという問題認識でもあります。IoT通信標準として様々な業界でのoneM2M標準の適用を加速させるために、色々な標準化機関の連携が必要であり、GSCは正にその協調の場であることが認識されました。
5Gに関する議論では、規制当局と産業界との連携と、関連する標準化機関相互の協調が必要であることが認識されました。5Gにおける課題としては、無線領域としては少ない周波数資源の管理が大きな課題であるとともに、ネットワークアーキテクチャ、統合化制御管理、エンドツーエンド品質管理、フロント・バックホールなどのTTCに関連の深い非無線領域の課題の重要性がGSCメンバーで認識されました。ただ、5Gの標準化時期に関しては、日中韓が2018年から2020年の早期導入開始を目指した積極的な開発方針を持っているのに対して、欧米は時期については慎重な姿勢であり、GSCメンバーの各国の標準化機関相互でのさらなる連携議論が必要であると感じました。
セキュリティとプライバシーに関する議論では、IoT、M2M、クラウド、ビッグデータ、スマート社会の出現に対し、セキュリティとプライバシーを考慮することが必要であり、その適用原則、特に識別(Identityが例として挙げられますが)に関して、技術革新の早い段階から、原則からその実現技術までの共通理解を得ることが重要であるという認識です。GSCメンバーでは、Verticals相互や標準化機関相互の横断的なセキュリティとプライバシーに関する標準化を実現するように今後も連携を推進していきます。
SMEsに関する議論では、グローバル経済の発展のためにSMEsは極めて重要な役割を持っており、SMEsが標準化に関わることの重要性はGSCメンバーでの共通認識です。しかし、SMEsが標準化活動に参加するうえでの動機付けや、活動に必要な教育支援をどのように実行するかの課題や、SMEsの参加について障壁が存在していることについても共有することができました。TTCでは中小企業やアカデミアを対象とした新たな会員種別「協力会員」を新設しましたが、SMEsの参加拡大や運営についてはいくつかの課題があり、GSCメンバーとの課題の共有によってさらに改善を図っていきたいと思います。
今回のGSC‐20会合への参加を通じて、世界各国の標準化機関が我々と同様な方向感で取り組んでいることを再認識するとともに、これらの標準化における課題はより業界横断的な取り組みが重要であり、GSCメンバーとして今後もグローバルな標準化活動での連携を強化していくことが必要であると考えています。
GSC会合での講演資料や討論文書については、過去の会合資料を含め、URL:http://www.itu.int/en/ITU-T/gscでアクセス可能であり、不明な点があればTTCまでお問い合わせください。
次回のGSC-21 会合は、IEEE-SAのホストにより、ウィーン(オーストリア)で、2017年9月20日-21日(暫定)に開催する予定です。
表1.GSCメンバー組織一覧(2016年4月時点)
組織名
|
URL
|
ARIB (Association of Radio Industries and Businesses)
|
|
ATIS (Alliance for Telecommunications Industry Solutions)
|
|
CCSA (The China Communications Standards Association)
|
|
ETSI (European Telecommunications Standards Institute)
|
|
IEEE-SA (IEEE Standards Association)
|
|
IEC (International Electrotechnical Commission)
|
|
ISO(International Organization for Standardization)
|
|
ITU (International Telecommunication Union)
|
|
TIA (Telecommunications Industry Association)
|
|
TSDSI (Telecommunications Standards Development Society, India)
|
|
TTA (Telecommunications Technology Association)
|
|
TTC (The Telecommunications Technology Committee)
|